「循環する」村づくり
概要 | 木々が減り土壌が流れ出し、荒廃していく森林。現金収入のために都市へ出稼ぎに行く村人たち。農業に必要な水と豊かな土を甦らせ、「出稼ぎに行くことなく、孫や子の代までもここに暮らしていけるように」という村人たちの強い思いと共に始まった「循環する」村づくりプロジェクト。 |
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期間 | 2007年~2015年 |
場所 | インド アーンドラ プラデシュ州スリカクラム県 |
協働者 | SOMNEED India |
協力者 | JICA「草の根技術協力事業パートナー型」 |
活動内容
ムラのミライは「流域」という単位で、村と周辺の山々、農地を総合的に捉え、自然資源を利用し、管理していくための考え方やスキルについて村人たちに研修を行ってきました。
2007 年~2010 年にかけて村では、水資源の涵養と土壌の保全、森の再生に取り組み、今後の維持活動の土台となる住民組織が誕生しました。
2011年からは、第2 フェーズとして回復させた自然資源を農業で有効的に使うために、農法の改善に取り組みました。また同時に、近隣農村でも流域管理に取り組めるよう、フェーズ1参加者(村人)から誕生した指導員が、流域管理コンセプトの技術移転を行ってきました。
事業の総まとめとして、村人たちの経験と結果に基づいた自然資源管理および、農法改善についてのマニュアル(テルグ語、英語)を事業にかかわった全戸に配布しました。また、農法改善に関するビデオ(DVD)教材(テルグ語、英語:村人が主演)を作成し、流域管理委員会に1枚ずつ配布しました。
成果(何が起こった/変わったか)
事業終了後も、流域管理に必要な中期活動計画(流域ごとに土砂流出防止や植林計画などのデザイン)を住民自身が策定できるようになっています。また、2016年1月から3月にかけて行ったインパクト調査の結果、以下の成果が明らかになりました。
- 土壌流出等への対策活動により、100 ㎥から150㎥の土壌流出を防ぐことができました。
- 雨裂によってできた山を流れる川に石組みを設置した2~3年後から、その周辺の畑地での作物の大きさの変化や、平地にある井戸の水位の継続的な上昇が起き始めました。
- 山に施していた保水土対策を農地でも応用したり、稲作方法を改善することで、水を効率的に利用したり土壌を肥やしたりすることができ、年間を通して様々な作物を栽培できるようになりました。
- 山の保水土対策を農地での自然資源活用にリンクさせ、そこから「自分たちの村はどうあるべきか」という総合的な村づくりへと発展させ、グランドデザインを完成させた村もありました。
- 出稼ぎ人数および期間が2007年から年々減少しました。
- 事業を通して醸成されたリーダーシップと村での合意形成のプロセスは、各個人に「やればできる」「私もできる」という自信を持たせ、村全体での様々なアクションを引き起こしました。
- お米の収穫量が倍になったり、酷暑の期間でも井戸で十分な飲料水が確保できるようになったため、初めて他所の村人をお祭りに招待するなど、催事でも各村で規模やスタイルに変化が生じました。
研修生の声
S・モハーンさん/S・ドゥルガラオさん(男性:20代:ブータラグダ集落)
今、日雇労働で道路工事に出ているけれど、何立方メートル盛るのか、立方メートル当たりいくらなのか、責任者に聞くことができる。こんな質問ができるようになったのも、ソムニードの研修を受けてからだ。
U・クリシュナさん(男性:50代:タラパドゥ集落)
以前にも、ワシらは他の事業で委員会が作られてきた。だけど、組織の規定を作ったことは一度もない。今、ワシらは自分たちの組織を作り、ワシらの言葉サワラ語で規定を作成した。こんなに嬉しいことはないし、規定があるからこそ、組織の活動は続けていく。
J・パドマさん(女性:30代:ポガダヴァリ村)
この事業が始まる前は、出稼ぎに出てしまう人がたくさんいました。日雇い労働でもらう労賃が多少の足しにはなっていましたが、私たちは農民です。農業で生計を立てています。だから、今までは雨期ごとに雨水と一緒に肥沃な土壌が流れ出し続け、不作になれば出稼ぎに行かざるをえませんでした。だけど、この事業で行った作業の全ては、私たちの田畑にも水と肥沃な土壌をもたらし、結果的に豊作になることを願っています。きちんと収穫できれば、出稼ぎにいく必要はないのです。そうなるために、私たちが主体となって作業を行ってきました。私たちは何をしたのか、何故それをしてきたのか、今は誇りを持って伝えられます。
受賞
2010年:第22回毎日国際交流賞
2011年:第7回JICA理事長表彰
2014年:第16回日本水大賞国際貢献賞