第21号「オラ達の村の進む道」(2010年5月24日発行)

In 803プロジェクト通信 インド「水・森・土・人 よもやま通信」 by master


 

目次

1. 総会が始まる
2. ポガダヴァリ村の場合
3. ゴトッゥパリ村の場合
4. マーミディジョーラ村の場合
5. 促すことと待つこと

 

1. 総会が始まる

マンゴーの実が大きくなり、そろそろ熟し始めるかという4月終わり頃から、マーミディジョーラ村(以下、マ村)、ポガダヴァリ村(ポ村)、ゴトッゥパリ村(以下、ゴ村)の各地では、村の総会が続々と開かれた。

去年までの構造物の建設作業や植林作業の労賃から一定額を貯めて、村の共同資金を作ってきたことは、これまで何度か通信でもお伝えしてきた。そしてそれら資金を運用し、オラたちの村を描いた「理想の村」に近付けるための活動を行う母体となる組織も、村のオジサン・オバチャンたちが立ち上げた。

研修を受けてきた村のオジサン・オバチャンたちが中心になって、組織形態や意思決定の方法、資金集めやその運用など規則案を作ってきたが、それらを村全体で承認して正式に活動を開始しようというのが、第一回目の総会目的。
気温が40度近くになり熱風が吹く昼日中は、とてもじゃないが座っていることもできないので、夕方か朝に設定された総会。

目次へ

 

2. ポガダヴァリ村の場合

21-1

第一陣はポ村。

畑仕事にも賃労働にも行かず村にいるように、ソメーシュやパドマが5日前から村の人たちに言っていたこともあり、各世帯からほぼ2人ずつ集まったポ村の総会第一回目。議長も選び、研修中に考えた組織名や規則を順々に披露するソメーシュ。
「これまで、石垣やため池を作ったり植林をしてきましたが、これらを放っておかず僕たちでメンテナンスしながら、村を良くしていくために、組織を立ち上げましょう。名前は、グラマ・チャイタニヤ・サンガム!他に何か良い名前はありますか?」
「さんせーい!」
そして、グラマ・チャイタニヤ・サンガムが目指すポガダヴァリ村の姿として、「都会に出稼ぎにいかなくても暮らしていける」「すべての子どもたちが読み書きできる」「役人や外部組織などに依存しない」などが、村の人たちの間で共有された。続けて、メンバーは各世帯から男女1名ずつ、18歳から60歳までと決め、年会費や入会費なども設定。
活動を実際に動かしていく執行委員会には男女合わせて15名が選ばれ、その中から代表を選出する事に。

「代表は誰が良いですか?立候補は?」という議長の問いかけに、
「ソメーシュだ」という声があちこちから挙がる。

残念ながらパドマは事情があって今回の総会に出席できなかったが、オバチャンたちからは「パドマよ」という声も出てくる。この3年間、村を引っ張ってきた2人。黄門様から突っ込まれるたびに成長してきた。
最終的に初代代表にはソメーシュが選ばれ、パドマは代表委員会のメンバーの一人になり、共同資金の収入源や活動内容など、次々と自分たちの規則が決まっていく。

こうして、ポ村の理想の村へ向けての第一歩が、踏み出された。

目次へ

 

3. ゴトッゥパリ村の場合

21-2

所変わってゴ村。

ゴ村では夕方に時間設定がされ、三々五々山や畑から戻ってきた村人たちが集会場所にそろったのは、日が暮れきってから。ようやく第一回目の総会が始まった。

「え~っと、では僕たちの村の組織の名前は・・・・・・・」
議長をするモハーンがもったいぶっているのかと思いきや、すっかり忘れてしまった様子。あたふたと研修記録を読み返し、「グラマ・アビブルディ・サンガム」と発表する。

「え~っと、メンバーは各世帯から1名ずつ」
「違うよ、モハーン。2名ずつだよ」

初めての総会ですっかり記憶が白紙状態になってしまったモハーン。
メンバー構成、年会費、総会や定期集会の開催月、そしてため池の底の定期的な泥の除去作業の活動など、研修記録を淡々と読み上げていく。
最後に規則案作りの研修をしたのが1月だったこともあり、研修に参加したオジサンたちですら「ほほぉ~」と、初めて聞くような顔をしている。

「ちょっと一言いいですか?」
「どうぞどうぞ、ラマラジュさん」
「そもそもなぜこのような組織を立ち上げて、規則を作るのですか?」

『研修記録があるから』総会で諸々を承認するではなく、このような村の組織が必要なのかどうか、組織を作って何をしていくのか、村の人たちに考えを促す。
「え~っと、今まで作って来た石垣とか、メンテナンスするため?」
「メンテナンスするだけですか?」

すると、「それだけじゃありません、キョーコさん」と、モハーンの片腕的存在の青年が、突如勢いよくしゃべりだした。
「みんなも知ってるよね?近くに村があるじゃないか。もう誰も寄り付かない村が。政府の援助で学校を建てたものの、そこの村の人たちが建物のメンテナンスはおろか、子ども達のための活動に無関心で教師にも協力しないから、もう教師も来ないし、自分たちで何もしようとしない。政府やNGOどころか他の村の人たちも、そこの人たちと一緒に何かしようとは思ってないんだよね。ただ学校の建物があるばかり。そんな村には、僕はしたくないよ。」

すると、モハーンがつぶやいた。
「僕たちも、石垣作って、木を植えて、ため池掘って、その後何もしないままなら、全てがダメになって組織の預金通帳が残るだけ。」
「やっぱり、メンテはしていかないと」
「資金も、この事業の労賃から集めるだけなら、8月からはどこからもお金が入らない!」
「そうすると、通帳が残るだけ」
(どうやら、モハーンはこのフレーズが気に入った様子)
「じゃぁ、どうすればいい?」
「誰も村に寄り付かないんじゃなくて、自分たちで石垣づくりや植林作業を続けて、周りの村の人たちから『教えて』と言われるような、そんな村になる!」
「収入には、年会費、村の木のタマリンドの売上と、各自が持つカシューナッツの収穫から1キロ分の売上、労賃の一部」
「さんせーい!」

そして、代表委員会には、他の村に行って流域管理の方法など教えることができるオジサン・オバチャンたちが、村の人たちによって選ばれ、その中から改めてモハーンが代表になった。

目次へ

 

4. マーミディジョーラ村の場合

そしてマ村では・・・

長年の夢を自ら叶えて作った村の集会場で、初めての総会。ダンダシを筆頭に70人近い村のオジサン・オバチャンたちが集まったが、結局、「誰それさんが協力しない」だの「アンタが悪いのよ」と、オバチャンたちの喧嘩も始まり、かろうじて代表委員会など役員が決定したのみで、肝心の中身は後日に延期。ダンダシは代表には就かず、新しく代表になったオジサンを支え、組織を見守っていくことになったが、果たしてどのようになるか。

21-3

同じマ村の流域で、山頂付近にあるガンガイヤ率いる集落には、ビシャカパトナム市内にある女性自助グループ(SHG)の連合体、VVKからも3人のメンバーがオブザーバーとしてやってきた。この集落の集会のスタイルを踏襲し、年長者たちが他の村人たちと向き合うようにして会場の最前列に座り、その横でガンガイヤともう一人の青年が総会を取り仕切る。
ここでも同様に、今までの研修で考えてきた案を他の村の人たちと共有し、決定していくのだが、一人がテルグ語で読み上げそれをガンガイヤがサワラ語に訳していった。

ビジョンの一つに、「今後3年間で、全ての田んぼにいつも灌漑できるようにする」ということを掲げていたが、それを聞いてオバチャンの一人がするどい質問をした。
「今までずっとできなかったことが、なんで3年間でできるようになるのよ?」

すると、ガンガイヤが即答する。
「これまで僕たちがしてきた作業は、水資源を守り、地下に深く広く浸透させ、そしてみんなの田んぼのエリアまで保湿できるようにするためなんだよ。だからそれを実現するためにも、これからメンテナンスしていかなくちゃいけないし、去年までにできなかった残りの場所にも同じように作っていかないといけないんだ。そうすれば、僕たちの田んぼは全て、水に困らなくなる」

3年間でできるかどうかはともかくも、ガンガイヤは今まで自分たちでしてきたことに自信を持っており、誰よりも堂々として見えた。

VVKの新代表は、ガンガイヤ達の第一回目総会を見て、こんな感想を伝えた。
「みなさんは何よりも、この組織の目的や将来図をみんなで描き、共有しているから、初めての総会でも、このように真剣に活発に話し合うことができるのだと感じました。素晴らしい総会でした。」

別の山の頂上付近にある集落でも、同じように総会が開かれたが、そこでは集落の年長リーダー的存在のオジサンから総会の最初にあいさつがあった。
「この事業が始まってから今までにワシたちがしてきたことは、これからもずっと続けていかなければならない。これからこの集落を率いていくのは、新しい知識も得た若者たちである。ワシは、この若者たちに堂々とこの集落を引っ張っていってほしい」

目次へ

 

5. 促すことと待つこと

どの村でも、まだまだ詰めが必要なのは、ラマラジュも筆者も承知している。

だが、村のオジサン、オバチャンたちは、今までにないくらいに堂々と、そして誇らしげに自分たちで話し合って考案して決めている。
この事業が始まる前にも、村では同じように石垣やらため池やらチェックダムやらと、色々と援助を受けて作ってきた。しかしそれらはお金を出す側が「ここに作れ」「○○を作れ」と指示を出し、「委員会を作りなさい。代表は○さんが良いだろう。資金は・・・」と、組織の立ち上げもほんの数人の村人と話すくらいだった。

この3年間、特に最初のころ、村の人たちは研修への参加者や作業の内容や進め方についても、何度となくソムニード(現ムラのミライ)からの指示を求めた。
「どうすればいいでしょう?」

その度にソムニードはこのように答えてきた。
「どうしたい?」

そしてオジサンやオバチャンたちがその答えを見つけられるように、自ら動き出せるように促し、時にはじれったくなるくらい待った。この総会で、その成果が現れていると、筆者たちは感じた。

しかしこれは決してゴールではない。

これから、村のオジサン・オバチャンたちが、本当の意味で、自ら動き出して実行していかなければならないのだ。だから、まずは今回決めた規則でやってみる。自分たちでやってみて、不十分なところを自ら発見し、そして改良していけばいい。

21-4

「オラ達の村の進む道」
今回決まった村のビジョンと、それに向けての活動や組織体制について記した各村オリジナルのいわば村の憲章。その初版を、テルグ語そしてサワラ語で来月には発行する。
そして、雨期が来れば、まず最初に「理想の森」づくりに向けて植林が始まる。

そう、オジサン・オバチャンたちの進む道は、果てしないのだ。

まだまだ続く。

目次へ

インド地域づくり募金1

注意書き

黄門様=和田信明、ソムニードの代表理事
ラマラジュ=ソムニード・インディアの名ファシリテーター。
キョーコ=前川香子。本通信の筆者。
VVK=2004年~07年のJICA草の根技術協力事業を実施する中で、ビシャカパトナム市内・郊外のオバチャンたちが結成したSHG(女性自助グループ)連合体で、銀行業を実施している。日本で使用する「クラフト素材」として、村のオバチャンたちと連携してマンゴーやカシューの葉、ターメリックのヒゲ根などを集めて売るクラフトビジネスも、細々と展開中。詳しくは、「PCUR-LINK便り」「その後のVVKオバチャン便り」バックナンバーをご覧ください。