第20号「これがオラたちのウォーターシェッド」 (2010年4月29日発行)

In 803プロジェクト通信 インド「水・森・土・人 よもやま通信」 by master


目次

1. オラ達のウォーターシェッド
2. 理想の森のその先の為に
3. リーダーの成長

今年の気温の上昇は凄まじい。
3月下旬で、すでに40度に達した日があり、4月に入って少しは下がったものの、それでも平年より4~5度高いという報道が連日流れている。

マーミディジョーラ村(以下、マ村)、ポガダヴァリ村(以下、ポ村)、ゴットゥパリ村 (以下、ゴ村)では、4月に入ってカシューナッツの実が収穫期を迎え、山の中は熟したカシューの果実で甘い匂いが充満している。マンゴーも実がだいぶ大きくなってきた。

去年、初めて活動計画なるものを作ったオジサンたち。今年はさすがに何を書けばいいのかは分かっているが、重要なのは、何をしなければいけないのか。それが分からなければ計画も作れない。

1. オラ達のウォーターシェッド

前号でお伝えした「理想の森」を描いたあと、ラマラジュが、村のオジサンやオバチャンたちに聞いた。
「これからこの理想の森をつくるだけで十分ですか?他にする作業はありますか?」

「土が流れていくのを止める石垣や、雨期の川の水流を弱める石堤もまだ作らないと」
鼻息荒く答えるオジサンたち。

「どこに?どれだけ?」畳み掛けるように尋ねるラマラジュ。
「去年はどこに作ったっけ?」

村の中でも、全員がすぐに答えられるわけではない。
そこで、自分たちの流域、すなわち山の頂上から田んぼまでを、粘土を使って再現することにした。
山のでこぼこ、川の走り方、集落がどこにあって、井戸や池はどこにいくつあるのか・・・

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去年設置した石垣を山の斜面に、石堤を小川の中に、小石や実で粘土の山に載せていった。生まれてからずっと暮らしている村だからこそ、意識しないことが多く、意外に難しい村の再現作業。

「この川は、この山からこう流れてきて、この溜め池に入って、そしてまたこっちに流れていく・・・」
「キノシン山は、もっとなだらかだよ」
と、オジサンやオバチャンたちが口に出して確かめながら、自分たちの村を、縦30センチ横50センチの板の上に作っていく。

ほぼ出来上がったときに、聞いてみた。
「今までも、何度か”ウォーターシェッド”とみなさんも何気なく言ってましたけど、皆さんの”ウォーターシェッド”って、どこですか?」

一瞬の沈黙の後、あるオジサンが我が意を得たりとばかりに言った。
「そうか、これがオラたちのウォーターシェッドか」。

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2. 理想の森のその先の為に

「何ナニ?どういうこと?」
せっつくように尋ねるオバチャンたちに、できたばかりの村の模型で説明するオジサン。

「ほら、雨の中に立った時、雨水は頭の上から伝って足まで流れてくるって、黄門様やチャタジーさんがいつか話してた、アレだよ(よもやま通信第9号を参照)。
村をぐるりと囲むこの山のてっぺんが頭で、ここから、去年作ったこの溜め池の水路や田んぼを通って、村の外にこうやって水が流れていく。これが、そうなんだよ。」
「おぉ、なるほど。」
「じゃぁ、こっちに流れてる小川は、皆さんのウォーターシェッドですか?」
「いやいや、キョーコさん、これは隣村になりますよ。アレ?じゃぁワシらは隣村のためにこの石堤を作ってしまってたのか?」

なんとも親切な村の人たちだが、自分たちの村、すなわち自分たちの生きる場所である山から田んぼまでの全てを、前回と同じ様に、自分たちで視覚化することで、自ら再確認し落とし込むことができるようになった。

この模型に全ての要素、たとえば岩だらけの山肌だとか田んぼの位置の高低などを表すことはできないけれど、それでも、自分たちの村を山がどのように取り囲み、どの田んぼに水が引きにくくなっているか、そして、なによりも自分たちが去年成し遂げたことを、一目で多くの人たちと共有する事ができるようになった。

「オラたちは去年色々やったけど、まだまだ一部だけだったんだなぁ」
「では、これからあなた達のウォーターシェッドで、何をしていかなければならないのですか?」

模型を前に、アレコレと話し合うオジサン、オバチャンたち。今回は、1年間だけでなく、3年間という長期間の計画を考える。
そして前回で作った理想の森を、この模型に移し変えた。

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「薪に使う木は、集落の裏側の山にたくさんあった方がいいわ」
「ちょっとアンタ、山のてっぺんに家畜の餌を植えてどうするの!」
ツッコミも入りながら、赤や黄や緑と、前回の5色のピンが粘土の山にカラフルに突き刺さっていく。

そうして今までに作ったもの、これからしなければいけない3年間の計画を、自分たちで考えて描いていった。

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3. リーダーの成長

そして、3年間でする計画の内、2010年度でやるべきことを活動計画として書き出し、黄門様にとうとう発表。

先行はポ村のソメーシュ。
去年できなかった場所での石垣作りの提案を始め、新たに溜め池をつくったりチェックダムの建設を言ってきた。

「一つ、聞いてもええかの?」
「ナンでしょう?黄門様」
「この場所には、すでに何年か前にチェックダムを作っていなかったかの?」
すると、研修に来ていた年長のオジサンが口を開いた。
「はぁ、だけどいろいろあって役に立たないし、新しいのをと思って・・・」
「お前さんたちは、また『役人の言いなりになって』と言い訳を言うつもりか?それでも役人の言うことに『はい、はい』と言ってきたのはお前さんたちじゃろ?」
「でも、埋まったりしてもう使えないし・・・」

去年、どこかの村で聞いた事があるような会話がまた繰り返されるかと思ったとき、ソメーシュがきっぱりと言った。
「わかりました、黄門様」

村の人たちの意見をひとつにまとめるというのは、生半可なことではない。
ソメーシュなりに、年長者の意見にも耳を傾けつつ、そしてソムニード(現ムラのミライ)から考える力という技術を身につけながら、村の目指す方向へまい進している。

他の村も同じである。

そして考えるだけでなく、模型を作るだけでなく、これからすべき活動をきちんと実行していくために、各村で村の組織の総会を行なうことになった。初代代表を選出し、執行委員会を形成し、基金の運用を開始していく。

果たして、どんな総会になるのか?

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続きは次号で。

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注意書き

ラマラジュ=ソムニード・インディアの名ファシリテーター。
黄門様=和田信明、(特活)ソムニード(現ムラのミライ)の代表理事
キョーコ=前川香子。本通信の筆者。