メタファシリテーション(対話型ファシリテーション) 実践者の声

In 1 研修・イベント・講師派遣, 6 参加者の声 by master


梅野明恵さん  JICA 専門家
小出一博さん (特活)ADRA Japan
吉田佐内さん 日本語教師
土居誠さん 大学生
対談「相手の立場になって考え、対話する」 和田美穂さん 河合将生さん

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JICA 専門家(Project Coordinator)

梅野明恵さん

対話型ファシリテーション研修参加者の表情が真剣そのもの

対話型ファシリテーションとのきっかけは、「2013年 JICA-NGO連携による実践的参加型コミュニティ開発研修[1]」という国内研修でした。当時私は、タジキスタンの北東部ゴルノバダフシャン自治州に、農村開発プロジェクト[2]の専門家として駐在していました。この国内研修のことを知った私は、プロジェクトの現地パートナー団体[3]のリーダー候補スタッフ2名を、研修生としてタジキスタンから派遣することにしました。この研修の講師を務められたのが、「対話型ファシリテーション」手法の構築者の一人、中田さんだったのです。7週間後に、日本国内研修を終えてタジキスタンに戻って来た研修生二人。大変な衝撃を受けた様子で「非常に素晴らしい研修に参加することができた!」と興奮して語ってくれました。そしてアガハーン財団(所属団体)や、タジキスタン国内に紹介し、浸透させたい手法だと強く薦めてきたんです。一度、中田さんにタジキスタンで研修を行ってもらいたいので、JICAから援助はしてもらえないだろうか? もし無理であれば、どうにかして自分たちの組織内でも予算が取れるように動いてみたいと、中田さんのタジキスタン国内研修実現への強い要請を受けました。この時、対話型ファシリテーション研修を受けた参加者への効果を感じました

翌年(2014年)、中田さんのタジキスタン訪問と研修が無事、実現しました。その時私はオブザーバーとして実際の研修の様子を見ることができました。中田さんによる研修現場において「事実質問」の考え方と手法そのものに触れ、多くのことを学ぶことができましたが、とりわけ印象的だったのは参加者の表情です。参加者の表情が、研修初日と3日目で全く異なっていたという点でした。とても生き生きとした表情で、初日よりも二日目、二日目よりも三日目と、参加者の表情が真剣そのもの。「事実質問」を習った参加者は、「なぜ?」や「どうして?どのように?」を使った質問を意識的に封印しようと試みるのですが、つい使ってしまう。使わないように意識するあまり、うまく質問を繰り出せない研修参加者。気がつけば彼らの話題は「事実質問」のことばかり。参加者が、見事に「巻き込まれて」いて、そして巻き込まれた参加者は「巻き込まれた」と思わず、且つ、自発的になる、そのような研修でした。気づかぬうちに皆がやる気になっていたというか、それはまるで中田さんの手品を見ているようでしたね。これがプロの仕事なのだなぁと思いました。

[1] JICA-NGO連携による実践的参加型コミュニティ開発研修:持続的で効果的な参加型地域開発のためのアイディアやファシリテーション手法を獲得し、参加者が自国の社会発展に貢献していくことを目的とした国内研修 (JICA関西と関西NGO協議会協働)
http://kansaingo.net/4088/
[2]アフガニスタン・タジキスタン国境バダフシャーン地域における農村開発プロジェクトhttp://www.jica.go.jp/project/tajikistan/003/index.html
[3]現地パートナー団体:アガハーン財団(国際NGO)

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 Cover_フィールド研修2016

2015Mr.koide
特定非営利活動法人ADRA Japan

プログラム・オフィサー 小出一博さん

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事実質問に助けられたことは、一度ならず二度三度。その効果を実感しました。

一番初めは、ラオス北部で農業プロジェクトを実施している時でした。2011年の冬、ラオスのA村の村長さんが「村の給水システムが壊れたので、修理のお金を援助してもらいたい」と、私を訪問してくれました。この村長さん、実はプロジェクトの関係でお付き合いがあったのですが、非常にマイペース。コミュニケーションに苦労していた難しい相手だったのです。その村長さんが言うには、前年の8月に村を襲った洪水の被害で、給水システムが壊れてしまい、生活用水に村全体がとても苦労しているということでした。でも、この村で壊れた箇所はすでに修理されていたはずなので、村長さんの言い分に私は困惑しました。ここで、「対話型ファシリテーション」の提唱者、中田さんの言葉を思い出し、じっくり「事実質問」をしてみようと試みました。
「そもそも、この村の給水システムは、「いつ」「誰が」作ったものですか」という質問からです。そうすると、2002年に設置されてから3年後にはすでに水の出が悪くなっていたという事が見えてきました。事実質問で、相手に「過去に立ち返って」もらったのです事実質問を通じて、自分たちでは管理について特に何もしていなかったということや、村でお金を積み立てて修理費を賄うとこともしていなかったという、「言いたくない事実」を、村長が頭を掻き、苦笑いをしながら教えてくれたんです。村長さんとの対話から見えてきた、村と給水システムに関する事実を基に調査を行った結果、村の給水システムの補修作業を支援することになりました。セメントや給水パイプはADRAが提供して、数キロ先の水源からパイプを引いたり、貯水タンクを作ったりする作業は村の人たちがすべて自分たちで行いました。今までいろいろとプロジェクトで一緒にやろうとしても、あまり興味を示さなかったこの村長さん。驚くことに、この給水システムの補修工事に関しては、村長さんを筆頭にA村全体が動き始め、あっという間に工事を終えてしまいました。

ここで感じたことは二つです。一つは、もし私がこの「対話型ファシリテーション」の根幹をなす「事実質問」を知らなければ、あの時、「支援して欲しい」と言われ「それは本当に必要なのか?」という問いかけしかできず、いわゆる「空中戦」で終わってしまっていただろうということ。そして二つめに、村の人たちが本当に必要なことをしようとする時こそ、村が動き出すということです。たまたま自分は「風邪薬」しかもっていないからといって、下痢の症状を持つ人に「風邪薬」を与えるような、そんなことを自分はやっていたのかなぁと、今回の村長さんとのやりとり、そして動き始めた村を見て、感じました。
その他の調査や家族に実践してみたところ効果てきめん。対話型ファシリテーションの事実質問」、オススメです。

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Cover_基礎22016


写真吉田さん
ムラのミライ ボランティア / 日本語教師

吉田佐内さん

教育現場や家庭、場所を選ばず大活躍。さらには雑談力までアップしました。

私は外国人留学生に日本語を教えています。学生から「どうしたらいいですか?」と聞かれることがよくあります。親切な先生ほど「こうしてみれば?」と提案してしまいます。しかし、先生の提案だけに頼っていては、卒業した後困るのは学生自身。自分から気づいてもらうにはどうすれば良いのかと模索しているときに知人から対話型ファシリテーションを紹介されました。

日本語能力試験に臨む学生に「勉強、どうですか?」と声をかけると、「難しいです。どうしたらいいですか」とアドバイスを求められます。そこで対話型ファシリテーションの事実質問を使い「どうですか?」の代わりに「試験開始時間は何時から?」「どこで受けるの?」「問題はどの科目から?何問あるの?何分で解くの?」と答えやすい質問を時系列で聞いていきます。すると学生も「9時」「大阪大学の豊中キャンパス」・・・と話し始めます。最後には「あ、時間配分が悪いから点数が伸びないのか」など私のアドバイスなしに自分の弱点を自覚します

最近ではエレベーターの中のちょっとした会話にも対話型ファシリテーションを使っています。身に着けているものから話題を作るというのを思い出して早速実践しました。身に着けているストラップを指して「これ何?」を筆頭に事実質問を重ねると普段はあまり話さない学生が恥ずかしそうにキャラクターの説明をしてくれました。対話型ファシリテーションが雑談力アップにも繋がるのだと実感した時間でした。

実はこの手法は職場以外にも家庭でも大活躍しています。受験生の娘にはテストの振り返りに、ゲーム盛りの息子にはゲーム時間の自主的な短縮に繋がりました。(詳細は対話型ファシリテーション自主学習ブログをご覧ください。)最近は子どもたちも私が事実質問を始めると「お、来たな」とおとなしく座って話してくれます。

私自身、途上国支援とは畑が違いますが職場でも日常生活でも対話型ファシリテーションを活用できる場面は沢山あります。迷っている方はまず基礎講座に来て下さい。得られるものが必ずあります。

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ムラのミライ インターン / 大学生

土居誠さん(写真右)

対話型ファシリテーションを使うと活動の問題点が明らかになり、それに直面するのが怖かったんです。ですが本質を理解すれば、対話型ファシリテーションを使ってより意味のある活動を継続できると気づきました。

学生団体を通じてインドに教育支援を行っています。休みがちな生徒の家を訪れて「お子さんは、なぜ学校を休んでいるのですか?」と聞くのですが、まともな答えは返ってきません。そういったことから、私の質問や、現地で聞いたり見たりする基準、やり方は問題の核心に近づいていないと常に感じていました。そんな時、団体の先輩から「途上国の人々との話し方」を薦められ、対話型ファシリテーションを知りました。

次の訪問で独学した対話型ファシリテーションの事実質問を使ってみました。同じく学校を休みがちな生徒の家を訪れて「お子さんは、どこにいますか?」とお母さんに尋ねると「今ねぇ、外で遊んでるわ。」との答えが返ってきました。え!遊んでるの?元気じゃないか!と疑問に思い事実質問を重ねていくと病気になったものの貧しくて病院に行けず、1週間ずっと寝込んでいたということがわかりました。「なぜ?」では引き出せなかった具体的な答えが聞け、手応えを感じました。

一方で、帰国し振り返ってみると、それはあくまでも「すぐに使えるやり方」を真似しただけで、対話型ファシリテーションの「根本的な部分」を理解できていないと感じました。例えばつい誘導質問をしてしまうとか。そのため今は基礎講座などのセミナーやインターンシップを通して「根本的な部分」を勉強しています。対話型ファシリテーションの本質を理解した上での質問は、団体の存在意義すら問う大きなインパクトを持つと感じています。例えば支援している学校が本当に活用されているのかとか。

初めてインドで対話型ファシリテーションを実践した頃はそれが怖くて躊躇していましたが、今では継続的な活動をするために必要なステップになると思っています。また、それに気づいてからはメンバーとも対話型ファシリテーションを共有しています。
社会人だけなく、学生団体の運営などで悩んでいる学生にもぜひ体験してほしい手法です。

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対談「相手の立場になって考え、対話する」(2015年10月)

2015年5月よりムラのミライの新役員に就任した和田美穂(理事)と河合将生(監事)が、ムラのミライの魅力、対話型ファシリテーションの実践例やその難しさなどを語り合いました。

和田美穂

NGO職員として、ネパール、フィリピン、ミャンマー、アフガニスタンにて駐在員を経験。その後もJICAを通して国際協力事業に携わったのち、現在は、大阪府豊中市にあるNPO法人ZUTTOの職員として、「若者居場所工房ぐーてん」や「くらし応援室」などを担当し、日本の貧困やニート・ひきこもりの問題に取り組んでいます。

支援をする側の都合を押し付けず、当事者が納得するスピードで

途上国では、なにもかもがゆっくりで、プロジェクトはなかなか進みません。その国には、今まで行ってきたやり方、経験、人間関係、世界観があり、日本のスピードを求めても、現地の人たちは自分たちのペースで活動します。
例えば、私が国際協力の仕事として最後に関わったのがアフリカのある国で、日本側と現地政府側と両方が資金を投入するという合意書があったのですが、現地側からはお金も人もなかなか出てこない。ただ単にお金を出して「さあ、やれー!」という姿勢で臨んでも人は動かないと実感しました。
ムラのミライの活動地では、現地の人たちは納得してから、自分たちのスピードで活動を進めています。また、「かわいそうな途上国の人々に何かをあげる」という姿勢ではなく、住人が自分たちの意思で周りの社会や環境を変えていこうとすることを応援する、そういうエンパワーメントのかたちが見られます。
当事者が自分たちの問題にじっくり取り組む手助けをしているという点、そのための確立した理念と方法論を持っているという点が、ムラのミライの魅力だと思っています。

日本の社会問題に適用することの難しさ

今、ニート・ひきこもりやシングルマザーの支援をしていますが、精神的にしんどい人々は、過去の事を自分の主観的解釈によって再構成された記憶として覚えていることが多く、事実質問をしても「事実」が浮かび上がりにくいと感じています。たとえ心療内科で「鬱だから仕事を休みなさい」と診断されても受け入れられず、「自分はサボっているだけだ、自分のがんばりが足りないんだ」と言うなど、認知の歪みが見られます。そこで事実質問をしていっても、その歪んだ世界にずぶずぶと入っていく…。かといって、「自分はサボってるだけで…」と言う人に、「そんなことないよ!」と伝えても全然響きません。
まずは、聞いて共感することに徹しています。「そういう環境で生きてきたらこう思うだろうな」と、相手の立場になって共感することで信頼関係を築いている段階です。次の段階としては、「もうちょっとこういう風に考えてみたら」という風にもっていけたらいいなと思っています。

河合将生

国際交流・協力分野の中間支援組織の職員を経て、NPO/NGOの組織基盤強化コンサルタントとして「office musubime」を起業。組織の立ち上げ支援や、組織診断・評価、マネジメント支援、ファンドレイジング支援など、組織運営上の課題解決のための研修・コンサルティングを、各団体に寄り添い、伴走する形で行っています。

「ミッション・ビジョンを共有する」とはどういうこと?

コンサルタントとして、組織が抱える課題を解決するお手伝いをする際に、最初にするのが組織診断です。健康診断のように問診票に記入したり、それに基づく診断項目に沿って対面で質問していきながら、課題を明確にしていきます。
例えば「ミッション・ビジョンの共有」の項目は、NPO/NGOの存在意義や目的、方向性を指し示すもので“共有されているべきもの”として、当然のように「共有されている」と答える団体も少なくありません。しかし、「具体的にあなたの団体のミッション・ビジョンについて教えてください」「いつ、誰が決めたものですか?」「どこに書いてありますか?」と聞いていくと、実はよくわからない、創設者や代表が決めたもので(自分とは関係がない)、ということもしばしばあります。「共有に課題がある」と答える団体も、何が課題かがわからないまま何となく課題だと答えることがよくあります。一方、共有のために事務所にミッション・ビジョンを掲示するという団体もあります。そうしたところは、日常、目にすることで共有を意識してはいるのですが、「あれはいつ誰が書いて貼ったのですか?」と聞いていくと、実はだいぶ昔のもので「考えてみると今の活動とあっていない、ミッションやビジョンを見直す時期なのかも…」との気づきにつながることもあります。
「理想的な組織運営のためには、基盤強化のためにはこうあるべき」との思い込みに捉われ、自団体の状況に即して課題を明確にしていくことが本当に難しいと痛感するとともに、事実質問の仕方、問いの立て方次第で当事者の気づきにもつながると感じています。

解決策を提示するのではなく、相手が気づく瞬間を待つ

私が現在関わっている仕事の中で、助成金を出している団体からの依頼でコンサルタントとして派遣され、助成金を受けている団体の相談に乗ったり、一緒に基盤強化に取り組むものもあります。当事者である団体が基盤強化の必要性を感じているのが前提ではありますが、「助成金を出してくれるドナーに言われたから」「困っていることを解決してくれる人が来てくれる」と受け取る団体もなかにはあります。
例えば、助成後の資金調達を考える必要があるとしても、助成金の継続依頼や外部からの支援をどう増やすかなど、自分たちの団体に合うかどうか分からない資金調達の一般論に終始してしまいがちです。NPO/NGOへの支援においても、支援側が解決策をすぐに提示するのではなく、相手との関係構築から始まり、ひとつずつ事実質問を重ね、相手が自分で課題を整理していく中で、そのうち、相手がはたと気が付く瞬間を待つ。すると、本当に必要な金額はいくらなのかといった話が出始め、予算の見直し、活動や組織体制の見直しと整備にも話が及ぶようになり、そこで初めてその団体が取り組むべき基盤強化の切り口が見えてくると思います。

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