第2号「村人のやる気を高めるアプローチとは?~インドでの循環型村づくりをセネガルへ~」(2015年4月1日発行)

In 804プロジェクト通信 セネガル by master


 

目次

1.プロジェクト概要
2.活動内容
3.活動の効果
 

プロジェクト概要

プロジェクト名称:「村の資源をフル活用し、未来に続く村を開くための人材育成事業 ~インドからセネガルへの技術移転~」
期間:2014年 10月 1日~ 2015年 3月 31日
場所:インド アーンドラ・プラデシュ州スリカクラム県
対象者:セネガル現地NGO・Intermondesスタッフ2名

セネガルにて循環型地域づくりプロジェクトを開始するにあたり、2015年1月18日から2月14日まで、現地NGO・Intermondesの主要スタッフ2名(以下「研修員」と呼ぶ)をインドでのムラのミライの先行プロジェクト地に招聘しました。研修員は一か月間の研修で、「住民主体の自然資源マネジメントによる地域づくり」をアフリカへ技術移転するために、①自然資源の循環システムの理解、②住民への働きかけ(ファシリテーション)について、先行プロジェクトの現場で実践的に学びました。

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活動内容

1週目(1月19日~1月23日)

・ポガダヴァリ村を訪問。流域管理事業に関して村人に質問。
・ゴディヤパードゥ村を訪問。事業中・事業後の具体的な活動の紹介。
・ブータラグダ村を訪問。インド事業内で村人が取り組んでいる、資源を循環利用した農業カイゼン実践地(モデル農地)の「水田」「畑地」「キッチンガーデン」を視察。
・研修センターにて、講師・和田信明から村人への研修を観察。(研修テーマ「ミミズ堆肥づくりのオリエンテーション」)

研修員は、先行事業開始当初(2007年)から流域管理事業に参加している3流域3か村を視察し、事業を通じて達成した「土壌の回復」「保水土対策による作付け可能期間の延長」「出稼ぎの減少」など、村で起きた変化と、「植物図鑑の作成」や「ため池での養殖」など、事業中・事業後の具体的な活動に関して村人から話を聞きました。モデル農地の視察では、各農家が農地利用計画を立てて有機農業を実践している農家から直接話を聞き、従来の農法よりも少ない種もみと水の量で栽培が可能なSRI(幼苗一本植え高収量稲作法)や、畑地、キッチンガーデンでの農地利用、土壌流出防止や効率的な灌漑などの保水土対策について学びました。
また、講師が村人に対して行った研修を観察することで、研修とは一方的な講義ではなく、村人自身が何を知っていて何を知らないのかに気づかせ、そこから次の学びへと自主的な行動を促すことであり、そのためのファシリテーションの実践方法と効果について理解を深めました。

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2週目(1月27日~1月31日)

・ブータラグダ村を訪問。1週目に観察したインド事業内でのオリエンテーション研修に続き、ミミズ堆肥づくりに関する、村人が近隣の村人に行う研修の視察。
・ブータラグダ村を訪問。インド事業内で進行中の、資源循環型の村の未来に向けての2020年までの総合計画づくり研修を視察。
・ビシャカパトナム市でのマイクロクレジット事業視察。

農村部では、①ムラのミライから村人に対する研修、②村人から村人への研修、という2種類の研修を視察しました。ムラのミライから村人への研修は、自活できる村を目指して、村人たちが発足させた流域管理委員会を中心とした「自然資源管理」「有機農業の普及」「内部資金の運用」を3本の柱とした総合計画づくりの終盤に当たり、研修員はこの視察を通して、インド事業が目指すゴールのイメージを掴みました。また、ファシリテーションによる研修を重ねた結果、村人たちがどのように村づくりに取り組むのか、その有り様を垣間見ることができました。村人から村人に対するミミズ堆肥作りの研修では、既に実践している農家から参加者である他の村の農家への技術普及の流れと、事業スタッフのモニタリング方法について学びました。

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都市部では、スラムの女性による信用金庫VVK(Visakha Vanitha Kranthi:ビシャカ・ヴァニタ・クランティ)を視察し、複数のSHG(Self Help Group;15人前後の女性だけで構成する自助グループ)が共同で信用金庫を設立させるに至った経緯や、現在の経営状況、そして今後の方針などを共有しました。また、住民主体の自然資源のマネジメントにも必要不可欠な、コミュニティ内部での貯蓄や貸付、返済といった内部資金活用システムの知識を深めました。

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3週目(2月2日~2月7日)

・インド事業内での、ブータラグダ村での農業カイゼンの成果と経験分析についての研修の視察
・インド事業内での、ブータラグダ村での総合計画づくり研修の視察
・パンドラマヌグダ村、バルダグダ村の訪問
・講師・和田によるファシリテーション基礎研修

インドでのプロジェクトでは、小規模流域を「水源域」「集水域」「裾野」の3つのゾーンに分け、まず「水源域」と「集水域」での流域管理技術を村人たちが習得し、次に「裾野」で流域管理の技術と成果を農業に応用していく、という流れで活動しています。3週目は、これまで研修員たちが訪問した、2007年のプロジェクト開始時から活動に参加している村に加え、2012年からプロジェクトに参加し、現在「水源域」と「集水域」の土壌と水の保全に取り組むパンドラマヌグダ村、バルダグダ村を訪問しました。
パンドラマヌグダ村、バルダグダ村で実践している「水源域」「集水域」の保全活動、ブータラグダ村で実践している「裾野」での活動、そして流域保全と農業を統合した総合計画づくりを視察し、研修員たちは流域管理プロジェクト全体の流れについてイメージを掴みました。また、インドとセネガルでの堆肥の種類や作り方の共通点(野菜屑も利用する、ヤギ・羊の糞を活用する等)と異なる点(ミミズを使う、牛糞を使う等)についても、インド人スタッフ達と共有しました。

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4週目(2月8日~2月12日)

・講師・和田によるファシリテーション応用研修
・コッタグダ村、マンマングダ村の訪問
・今後のセネガル事業についてのミーティング

2012年から事業に参加したコッタグダ村、マンマングダ村を訪問して、石垣(土壌流出防止)や堰堤(水流を弱めるための措置)など、流域管理に必要な構造物の役割と設置に関しての知識を深めました。また、和田の研修では、ファシリテーション技術をプロジェクトに応用していくための実践的な研修を行いました。今回訪れた村で目の当たりにしたインド農村での成果をセネガルでも実現するため、セネガルの天候や農業データを基にしたプロジェクトのシミュレーションを行いました。

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活動の効果

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1か月間の研修を通して、研修員たちはプロジェクトの全体像とその具体的な流れ、各段階で達成すべき目標と成果、プロジェクトで用いるファシリテーションの技術を包括的、かつ実践的に学び、特に①自然資源マネジメントの理論と実践方法に関する知識と②住民の行動を促すファシリテーション・スキルを習得しました。

① 自然資源マネジメントの理論と実践方法に関する知識

小規模流域管理のコンセプトを理解する
先行プロジェクトに開始当初(2007年)から参加している村への視察では、小規模流域を「水源域」「集水域」「裾野」の3つのゾーンに分けて活動したこと、またゾーンごとに「流域の資源調査」「流域を理解するための研修」「流域保全のための活動計画づくり」「計画に基づいた植林、構造物の設置」「モニタリングとメンテナンス」を村人たち自身で実施してきた経緯を聞き、自然資源マネジメントの実践方法への理解を深めることができました。

コミュニティでの内部資金の運用について学ぶ
都市スラムの女性による信用金庫VVK(ビシャカ・ヴァニタ・クランティ)を視察訪問し、自然資源マネジメントでも必要になる内部資金の運用について学びました。VVKの特長である、外部からの資金援助を一切に受けず会員の継続的な貯蓄と少額投資による自己資本のみで運営している点、グループ単位ではなく個人単位での融資を行っている点に関して、今後セネガルでの応用について検討することができました。セネガルでもマイクロクレジット活動は実践していますが、この視察研修でVVKから受けた貯蓄とローンのシステムやマネジメント、新規会員への研修方法等の説明を通して、改めてマイクロクレジットの知識を深めることができました。また、スラムの視察では、VVK会員の生活の場に密着することで、祭典、式典などの行事や、教育費など、ローンが実際にどう使われているかを知り、個人向け少額ローンへのアクセスが会員個人にもたらす効果について学びました。

農業カイゼンまでのプロジェクト全体のイメージを掴む
ブータラグダ村で実践中のモデル農地の見学や有機農業専門家による事業スタッフへの農業活動に関する評価研修、および村人との農業カイゼン活動の成果と経験分析の研修、さらに、自活していく村づくりのための総合計画作り研修に参加・観察することで、セネガルとは全く異なる水田の整備方法(畔の整備やため池の設置等による水の効果的な利用)や、畑地での農地の有効利用方法、有機堆肥の利用、また農業のプロセス評価のためのモニタリング手法を学ぶことができました。種や肥料を市場から購入していたこれまでの農業から、自家採取した種や牛糞や藁など村の中で入手可能な資源を有効活用する農業へシフトするために、個々の農家が行った取組みを知り、セネガルでのプロジェクトにおけるイメージを掴みました。また、村の人たち自身で活動を行っていく際に必要なアクション・プラン(行動計画作り)について、村人たちによる作業工程も観察し、その基本を学ぶことができました。

② 住民の行動を促すファシリテーション・スキル

導入編:村人の潜在的な知識に呼びかけ、気づきを促すやりとり
講師・和田による村人への研修では、「土」とはなにか?「ミミズ」とは何か?「よく肥えた土地」とはどんな土地か?という問いかけを通じ、農家である村人たちの潜在的な知識を呼び起こし、「土」「植物」「バクテリア」の特徴と相互作用の理解を促しました。村人たちがそれらを理解してから、絶えず植物が土に栄養を返し続ける「森」と、作物が土に栄養を返さない「農地」の違いを、村人に考えさせる質問を投げかけることで、村人たちに、農地での土づくりの必要性、つまり堆肥の必要性を気づかせました。この村人への研修の観察を通して、研修員たちは、相手の潜在的な知識に呼びかけること、シンプルな質問を繰り返すこと、常に答えは住民に言わせること、というファシリテーションの方法を理解しました。

基礎編:事実に基づく対話のしかた
研修員たちを対象に実施された、ファシリテーション・スキルの基礎研修では、事実に基づいた住民との対話を実現するための質問の技術と、対話の流れをつくる技術を学びました。具体的には、住民との対話では「なぜ」「どうして」と相手の意見や考えを聞くのを控え、「いつ」「どこ」「だれ」「経験の有無」といった事実を聞く質問を積み重ねた対話を行う技術や、対話をする際に相手の「セルフエスティーム(自尊心)」を高めるために、「エントリーポイント」として、身近な道具をほめることなど、住民との対話に有効な基礎理論を身に付けました。

応用編:時間軸や空間軸を意識させる
その次に実施されたファシリテーション・スキルの応用研修では、基礎研修を基に、セネガルの現場で実践、活用するための技術を身に付けました。セネガルの天候や農業のデータを用いながら、農民との対話のなかで、「投資が必要な時期(種まきの時期など)」「収入が得られる時期(収穫期)」といったセネガルの農業における時間軸と、「どういった農地で、どういった種類の作物の栽培が適しているのか」という空間軸を農民に意識させる訓練を行いました。このような「いつ」「どこで」「何を」という事実に徹した対話を通じて、農民に年間の農業での時間と場所に関しての目的意識を芽生えさえ、行動の変化を促していくことを理解しました。

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この事業は、「公益財団法人公益推進協会 夢屋基金」の助成を受けて実施しました。