第5号「甘ったれSHGなど、PCUR-LINK事業のパートナーではない!」と 水戸黄門様(ソムニード代表理事)の宣告を受けたオバチャンたち(2005年1月1日発行)

In 805プロジェクト通信 インド「PCUR-LINK便り」 by master

甘ったれSHGに400万円の生産・物流センターの計画&管理運営を任せられるか!

時は平成16年12月20日、ビシャカパトナム・シャマラパラダイス(会議場名)、お題は、SHGのメンバーを対象にした能力向上ワークショップ。午前10時、ソムニード(現ムラのミライ)の水戸黄門ファシリテーター「和田信明」は、SHGオバチャンたちを前にして。

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◇水戸黄門:「皆のもの、今日のワークショップのテーマは何だと思うか?」
◆SHGオバチャン(1):「えーっと、SHGがちゃんと活動しているかどうか確認するのがテーマ?] ◇水戸黄門:「そんなことはソムニードにもJICAにも関係ない、グループがちゃんと活動してるかどうかはおまえさんたちの責任じゃないのか?」
◆SHGオバチャン(2):「そうそうグループの責任よ。じゃあ、8月のワークショップのことやチェンナイでの視察のことをグループ内で話し合ったかどうか確認するのがテーマかしら?」
◇水戸黄門:「そんなこともわしらは知らん。グループで話そうが話すまいが、グループの勝手じゃ。なぜ7月以来、研修や視察をしたか、なぜソムニードのスタッフがSHGミーティングに出かけていったか知っておるか?」
◆SHGオバチャン(3):「SHGがちゃんと自分たちでグループ活動ができるように、じゃないの?」
◇水戸黄門:「さっきも申したが、自分たちでグループ活動ができるか、できんかは、わしらの知ったことじゃないわ。7月の事業開始式でも、8月のワークショップでも、PCUR-LINK事業のことを申したはずじゃが、覚えておるか?」
◆オバチャン一同:沈黙――「なんだっけ???もう一回、教えてください。」

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◇水戸黄門:「もう何度も説明したのじゃが、そんなに知りたいのなら、最後にもう一度、特別にPCUR-LINK事業のことを聞かせてとらす。皆のもの、よーく聞け、2度と申さぬぞ。同事業は、ビシャカパトナム郊外に生産・物流センターを建設し、生産者と消費者を直接、結びつける。約400万円に近いこの生産・物流センターの建設計画から管理・運営をSHGの手に委ねることが主な活動なのじゃ。」
◆オバチャン一同:「よんひゃくまんえん!!!!!」
※オバチャンたちは8月のワークショップでも同じ反応をしたのであった。

◇水戸黄門:「毎月のグループの会計帳簿付けも、スタッフに頼っていたり、スタッフが来なかったらミーティングも開かなかったり。毎月の貯蓄もせず、無計画に借金して、毎月500円すらきちんと返済できない。おまけにソムニード・スタッフがミーティングに行けば、未だに“貧しいから助けてくれ”と物乞いをするSHGまであるというではないか。8月のワークショップで申し伝えたPCUR-LINK事業のことも、9月、10月、11月のチェンナイ視察に行ったことも、ろくにグループのメンバーと共有しない。スタッフのまえでは“これからは自分たちでSHGの活動をする”などと申しておきながら、何もしない。いつまでも誰かが助けてくれるのを待っている、甘ったれたSHGに400万円の施設の管理を任せられると思っておるのかっ!」
◆オバチャン一同:沈黙・・・。
◇水戸黄門:「8月のワークショップも、チェンナイへのSHGの視察も、ソムニードのスタッフによるSHGミーティング訪問もすべて、どのグループに生産・物流センターの管理を任せられるか、いわばこの事業のパートナーを探しておったのじゃ。わしらは、8月から12月まで何度もワークショップやグループのミーティングで、SHGはセルフ・ヘルプ・グループだということを申してきた。また、チェンナイではそういうグループを見てきたのだろうが!今までみたいに、“貧しいSHGがおらんとNGO商売は成り立たんから、せいぜい助けを求めよう、なんかくれたらラッキー”なんて思っていたら大間違いじゃ.。そんなグループはPCUR-LINK事業には不要じゃ。そんなふうに考えているSHGメンバーがいたら、今すぐ帰ってよろしい。こちらから頼んでワークショップに参加してもらう必要はない!」
◆オバチャン一同しばらく沈黙後。。。
◆SHGオバチャン(4):「いんや、アタシ等帰らん。PCUR-LINK事業に参加したいんだもん。」
◆SHGオバチャン(5):「400万円の生産・物流センターの管理をしたいわ。どうしたら信頼のあるSHGだって認めてもらえるのよっ!?」
◇水戸黄門:「それぞれのグループで8月のワークショップやチェンナイへの視察の後、“これからはグループでやる”、と決めたことがあるじゃろう、それを実行してみなさい。8月からずっと“自分でやる”と言い続けておったが、もう5ヶ月が過ぎた。“来月は返済する、来月からはきちんと貯蓄する、自分たちで帳簿もつける”と口だけで実行しない者を、おまえさんたちは信じられるか?わしらは12月と1月にもう1度、各SHGのミーティングを見せてもらう、そこで一緒に次のリストに点数をつけようではないか。ちなみに次のリストは、8月から11月の間に、おまえさんたちSHGが自分でやると言ったことばかりじゃ。」

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“PCUR-LINK事業におけるパートナーSHGとしての必須条件リスト”

(1)8月と12月のワークショップおよびチェンナイへの視察に、グループのメンバーが参加した:はい/いいえ
(2)ワークショップやチェンナイ視察の結果をグループメンバーと話し合った:はい/いいえ
(3)グループ・ミーティング以外の時に、グループのお金の出し入れをしない:はい/いいえ
(4)定期的な貯蓄、ローンの返済を実行している:はい/いいえ
(5)グループ内で活動の役割分担をしている:はい/いいえ
(6)グループメンバー自身で、帳簿やミーティング議事録をつけている:はい/いいえ
(7)毎月のグループ・ミーティングへのメンバーの出席率は90%以上である:はい/いいえ
(8)グループメンバー全員が返済スケジュールを理解している:はい/いいえ
(9)銀行の通帳は毎月データを更新している:はい/いいえ
(10)毎月、グループ内の資金を80%以上は利用している:はい/いいえ

ここで「はい」が10個あったグループのみが、2月のワークショップの対象になる。すなわち、きちんと自分たちで決めたことを実行しているグループだ。10点満点のグループが1つしかなくても、ソムニードは、一向に構わないのだ。そのグループに、生産・物流センターの計画から管理・運営までを担ってもらう。もちろん、そのために必要な様々な研修も行う。ゆくゆくは、生産・物流センターの管理・運営を担う“セルフ・ヘルプ・スーパー・オバチャン”たちに甘ったれたSHGオバチャンは、こき使われるだろう。

今まで、たまにスラムに来ては、なんかプレゼントくれて、もう2度と彼女たちのところへは来なかったNGOや政府がたくさんいた。その人たちがくれたプレゼント(開発事業)とPCUR-LINK事業が、全く違うことに気がついたオバチャンたちが数名。彼女たちの目の色が変わっていた。朝から始まったワークショップはここで、1時間の昼休み。昼食後、SHGオバチャンたちに、本物そっくりのオモチャのルピー札が配られ、次の課題が与えられた。

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12ヶ月間の内部ローン運営ゲーム

“グループのメンバーは10名。毎月の貯蓄は1人50ルピー。活動は1年間。ローンをもらえる順番を1から10番までくじで決める。最初の月には、グループの貯蓄総額500ルピー(50ルピーX10人)をローンの順番が1番の人に貸す。500ルピーを借りた人は、10ルピーの利子をつけて、翌月には必ず返済する。2ヶ月目には、500ルピーの貯蓄と500ルピーの返済金、10ルピーの利子がグループの手元にある。この合計1,010ルピーの中から、今度は500ルピーずつ2番、3番の人に貸し出す。これを繰り返すと、一体1年間で合計いくらの金額がグループ内で利用可能になるか?”オバチャンたちは、オモチャのルピー札を使って12ヶ月間の内部ローン運営ゲームをした。毎月貯蓄する、500ルピー借りる、借りたら利子をつけて翌月に返済する、を10人で12回繰り返すと・・・。
※お時間のある方は実際にいくらになるか計算してみてください。
※エクセルシート使うとすばやく計算できます。
※10人集めて、オモチャのお金、もしくは本物のお金で試すと、より楽しいです。また銀行係を決めるとお金の出し入れがスムーズにいきます。

「アタシら貧しいから、500ルピー借りて、翌月に全額返すなんて、無理だわ。」

多くのSHGオバチャンたちは毎月の30ルピー、50ルピーの貯蓄も払わず、グループから無計画に借りては、借金の返済を遅らせるばかりだった。定期的な貯蓄とローン返済を実施しているSHGは、11月と12月にスタッフが訪れた約60のグループ中、わずか10グループだった。そんなオバチャンたちが、このゲームで、グループが利用できるお金が年間でなんと39,780ルピー(約95,000円)もあるということを発見した。きちんと貯蓄、きちんと返済、を繰り返したところ、10人中8人が年間で合計4,000ルピーを、2名が3,500ルピーのローンを利用できることがわかった。加えて、780ルピーが利子としてグループの手元に残る。しかも銀行とか政府機関とかの外部からのローンなしで、グループの力だけで!!

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このゲームの意味がわからなかったオバチャンが、ゲームが終わって一言。「アタシら貧しいから、500ルピー借りて、翌月に全額返すなんて、無理だわ。」
それに答える水戸黄門。「だったら、おまえさんたちが返済できるだけの金額、100ルピーでも200ルピーでも借りて、毎月、返してゆけばいいじゃろうが。毎月100ルピーが返せぬ者が、1,000ルピーのローンを10回払いで返せると思うか?」

ほとんどのSHGで、毎月の貯蓄なんて、したり、しなかったりだ。だから自分たちの貯蓄からお金を借りることは、全くあてにならない。あてになるのは、政府や銀行からのローンだが、これだって手続きが煩雑だったり、担当職員の気分次第でローンがもらえたり、もらえなかったりした。それでも、オバチャンたちは、政府や銀行から10,000ルピーとか20,000ルピーとかのローンがもらえるたびに10人のグループなら、等分して(10,000ルピーなら1人1,000ルピー)、10回払い、とローンを分配していた。もちろん、自分たちの家のお金の出入りとか、自分の返済能力とかは、全く考えたことはなかった。

このゲームで、SHGのグループとしての力を初めて知ったオバチャンたちが数名。PCUR-LINK事業のパートナーSHGとなるには、12月、1月中に10点満点を取らなければならない、ことの意味を理解したオバチャンたちが数名。この辺りで、午後5時。そろそろ一日のワークショップも終わりの時間だ。このワークショップで、「自立できない甘ったれSHGはJICAの事業のパートナーには必要なし!」と言われてしまったオバチャンたち。ようやく目覚めたオバチャンたちの各グループでの活躍は、次号乞うご期待。

スタッフの苦悩(続編):~私って(SHGに)利用されているだけだったの!~

11月以降、「これからどうやって仕事をすればいいの!」と途方にくれていたマヒラ・アクションのスタッフ。12月は、黄門様の登場で、またまたスタッフを対象としたワークショップの連続。その上、「私がいなくちゃSHGミーティングが始まらないわ」と一生懸命だった彼女たちは、黄門様からミーティング訪問禁止を言い渡された。ミーティングを訪れる度に、SHGオバチャンたちの依存状態を増長させていたスタッフは、ソムニードのスタッフと一緒のとき以外は、スラムに立ち入ることも禁止された。

「そんなにSHGオバチャンを助けたいのなら、助けてあげればいい。SHGの自立を目指すPCUR-LINK事業に、依存を生み出すような活動しかできないスタッフは不要。今すぐ、この事業を辞めて、さっさとSHGを助けに行け!」と、怖い水戸黄門様に怒られちゃったスタッフは、毎日ソムニードの事務所に出てきては、あれこれと宿題をこなしている。宿題は、SHG内部ローン運用にかかわる教材作成だったり、SHGミーティングへ訪問した際のデータをまとめる作業だったり、SHGメンバーを対象にしたワークショップの準備だったり。最初は、「私がミーティングに行かなくて、SHGは大丈夫かしら?」とか、「もしSHGが自分たちで、会計もミーティングも何でもできるようなったら、私は何をしたらいいの?」なんて心配していたスタッフ。スラムへの立ち入りを禁止されて、しばらくは、しぶしぶ事務所で、宿題をしていたスタッフも、最近は、なんだか楽しそう。相変わらず宿題は提出する度に、「やり直し」と、つき返されるが、その度に新しい知識と技術を身につけてゆくのを感じているらしい。ソムニードの事務所で6年近くSHGを「助けてあげてきた」スタッフが一言つぶやいた。「私って、SHGオバチャンたちに、“記録をつけてくれる、ミーティングを開いてくれる、政府や銀行からの様々プログラム(ローン)をもってきてくれる、便利な人”だと、利用されていたのかも・・・。」