第3号 視察を終えた、その後のオバチャンたち 。ドーピング効果?それとも持続的効果?~SHGオバチャンたちのチェンナイ視察の効果が現れてきた!~ (2004年11月8日発行)

In 605プロジェクト通信 インド「PCUR-LINK便り」 by master

昔のオバチャン:~SHG(自助グループ)って何よ?THG(後述)でどこが悪いのよ~NGOに仕事を投げるSHG

2004年3月にソムニード(現ムラのミライ)は、SHGの活動状態を調べる4段階評価(グレーディング)を実施。その結果、定期的な月別ミーティングの開催、定期的な貯蓄とローン返済、会計記録やミーティング議事録の作成、その他の活動などが、グループ自身の手で出来るAグループが、たった6つであることが判明。

PCUR-LINK事業では、ビシャカパトナム市郊外農村部と同市内スラムにある66のSHGを対象にする予定である。しかし、そのほとんどが、NGOスタッフ(この場合、マヒラ・アクションのスタッフ)がいなければ、機能していないSHGばかりだった。具体的には、月別ミーティングを開いたり、開かなかったりするのは当たり前。たまにミーティングを開くときは、NGOスタッフがSHGメンバーの家を1軒1軒回わって「○月▲日に、どこそこで何時からミーティングですよ。来てくださいね。」と伝えていた。また、ミーティング議事録の記入、貯蓄やローン等の回収、会計記録づけ、銀行へ出かけてゆく仕事も全部NGOスタッフがやっていた。たとえ、読み書きができるSHGメンバーがいても、「NGOスタッフが記録をつけてくれるなら、やってもらっちゃえ。」と、全く自分たちで記録はつけなかった。SHGを設立するとすぐに、政府や銀行、その他NGOなどから、お金を借りられるだけ借りてしまう。その後は、一般の高利貸しよりも、取り立てが厳しくないことをいいことに、何ヶ月も「お金があるときしか払わないもんねー。」と、開き直っていた。

NGOの足元を見るオバチャンと遠ざかるセルフ・ヘルプ

そんなSHGでも、なんとか存在していたのは、献身的なNGOスタッフが手とり足取り、SHGの活動を、何でもしてあげていたからであった。ちょうど保育園の先生が、子どもにスプーンでご飯を食べさせてあげたり、オムツを替えてあげたり、靴を履かしてあげたり、といった具合に。なので、ほとんどのSHGが、セルフ・ヘルプ・グループ(SHG:自助グループ)なんかではなく、ティーチャーがヘルプするグループ(THG:Teacher Help Group)だったのだ。

SHGオバチャンたちはとても頭がいいので、「私たち(SHG)がいないとNGOスタッフだって給与が、もらえないんでしょ、だったら、せいぜい手足として使ってやらなくちゃね。」と、しっかりNGOの足元を見ていたのだった。また、「定期的な貯蓄やローンの返済、様々な記録をつけるなんて、私たちにできるわけない、学校もろくに行ってないし、家が貧しいんだから、無理よ。」と思っていたのも事実だ。
「銀行からお金がいっぱい借りられるから」、「政府の補助金がもらえるから」とか、「NGOのスタッフがSHGはとてもいいと言っていたから」、「SHGをやってれば、補助金とか家とか、ガスストーブとか、何かもらえるかもしれないから」と、非常にわかりやすい目先の利益を最優先して、SHGのメンバーになったオバチャンが大多数であった。そして、NGOスタッフが献身的に働けば、働くほど、依存状態を作って、セルフ・ヘルプから遠ざかっていた。

SHGの活動をはじめて、1年目や2年目は、州政府や市から、SHG用の補助金がもらえたり、貧困家庭を対象としたガスストーブの支給を受けたりしていたから、それなりに定期的な貯金はしていたのだった。ところが、3年目、4年目になると、そんなに銀行から借りられるわけでもなくなった。(もちろん貯金とローンの返済を定期的にやっていれば、グループの信用度が増して、ローン額は増えるのだが、そんなことはしない。)そして、政府やNGOから色々もらっていたプレゼントも、いい加減マンネリ化してきて、「NGOスタッフがSHGの仕事をしてくれるなら、続けてもいいかあ」くらいになっていたSHGであった。

その後のオバチャン:~ドーピング効果?それとも持続的効果?再起動SHG!~

と、そんなSHGオバチャンたちであったが、7月以降、このPCUR-LINK事業がスタート。あれやこれやと、ワークショップに参加したり、チェンナイのSHG先進事例地に行ったりして、「SHGとは何か?SHGをなぜするのか?SHGを続けると、何ができるようになるのか?」を考えさせられる場面に直面してしまった。多くのオバチャンたちが、「えー、チェンナイへ視察?タダで連れて行ってくれるみたいだから、行ってもいいかあ」くらいで参加した視察だった。もちろん、視察前には毎回、オリエンテーションをして、視察の意義を説明し、視察に興味のない人は、特に参加しなくてもよい、という旨は伝えてきた。だから、オバチャンたちだって、「何か新しいことを学びたい、自分のSHGを変えたい」と思ったからこそ、様々な研修や視察に参加したのであった。

3-1

実際に視察に参加したSHGオバチャンたちは、視察に行ったチェンナイ郊外のSHGが、全然、自分たちのSHGとは違っていた、ということを目の当たりにした。

政府の補助金とか、銀行からのローン、もちろん高利貸しからのローンがなくても、SHGの口座に、常にメンバーが借りるに十分なお金がある!
しかも、いくつかのSHGが集まって、みんなで運営する銀行まで持っている!
ローンの返済率は100パーセントに近い!
貯蓄は、最初の年は、1人1月30ルピーとか、25ルピーだったのに、SHGを始めて、わずか2年後には、月に60ルピーも貯蓄できるようになったなんて!
SHGの運営に必要な仕事は、毎月、メンバー全員が交代で役割を分担して、NGOスタッフにも、SHGリーダーにも、グループの責任を押し付けていないSHGがある!(詳細は、前号参照)
ワークショップやチェンナイ視察後、参加者は、自分のグループのメンバーに、「何を見て、何を学ぶことができたか。」を話すことが義務づけられている。

改善のための働きかけ

その後、一部のSHGに変化が現れ始めた。
あるオバチャンは、毎月の貯蓄額の増加をする、と張り切っている。グループを設立して、3年間も1日1ルピー、1ヶ月30ルピーを繰り返していたあるグループ。しかし、チェンナイの視察から戻ったオバチャンが、エネルギッシュに自分のグループのメンバーの説得にかかった。
「貯蓄を増やすのよ!高利貸しに頼ったり、いつもらえるかわからない政府の補助金なんかに頼らなくても、自分たちの貯蓄を増やすのよ!自立するのよ!今月から1月50ルピーの貯蓄にするわよ!」と。

10月末までに、ソムニードが、SHGのモニタリングをした18のグループで、次の変化が起った。
・SHGメンバー自身が会計記録をつけるようになった:17グループ
・月別ミーティングの日にちと時間をきちんと決めるようになった:13グループ
・視察やワークショップの情報を共有するためのミーティングを開いた:11グループ
・グループメンバー間で役割分担をした:11グループ
・貯蓄額が増加した:5グループ
・ローン返済パターンを一律ではなく、グループの実情に合うように変更した:1グループ

3-2

そのほか、9月の第1回チェンナイ視察に参加した3名のオバチャンが、10月の視察に参加予定の22名のオバチャンの前で視察オリエンテーションを行った。
「ちゃんとSHGによる銀行の仕組みを見てこなくちゃダメよ。」
「グループでの役割分担の方法を見てくるのよ。」
「貯蓄がどうやったら増やせるのか、ちゃんと聞いてくるのよ。」
「わかんないことがあったら、どんどん、チェンナイのSHGメンバーに質問しなさいよ。じゃないと、あんたたち、ビシャカパトナムに戻ってきて、自分のグループで説明するときに困るわよ。」
「SHGミーティングで、お茶やお菓子を出してもらっても、毎回、食べちゃダメよ。昼ごはんが食べられなくなるから。でも朝ごはんを腹6分目くらいにして、ミーティングに出かければ、お茶やお菓子を食べても、大丈夫よ。せっかくのお茶やお菓子を断っては悪いから、あんたたち、そうしなさいよ。」
「視察最終日には、お買い物の時間もあるから、少しはお金も持っていかないとダメよ。」
という具合。

3-3
オバチャンならではの、細かい注意が、次回の視察参加予定者に伝えられた。この注意は、オリエンテーションを重ねるごとに、細かくなってゆくのである。
ちなみに第1回目(9月)の視察オリエンテーションはソムニードのスタッフが行った。しかし、第2回目(10月)は、第1回の視察参加者が、オリエンテーションをし、第3回(11月)は、第2回の視察参加者がオリエンテーションを実施することになっている。

自分たちの仕事に使うものを自分たちの手で管理

変化はまだ続く。
今まで、マヒラ・アクションのスタッフが管理していたSHGの通帳やスタンプを、自分たちの手元で管理することに決めたSHGがいくつか出てきた。また、ホッチキスやスタンプ台、計算機といった文房具をスタッフに借りてばかりいたグループの多くが、そうした文房具を自分たちの口座から、お金を出して買うようになった。

今まで、「私らにはできないもんねえ」と開き直っていた、会計記録づけも、ソムニードやマヒラ・アクションのスタッフに、「どうやったら、自分たちで記録をつけることができるようになるのかしら。なんかトレーニングしてくれると嬉しいわ。」と言ってきた。(☆ココロなしか、オバチャンたちの口調が優しくなってきた感じ?)そこで、ソムニードでは、毎月のグループのお金の出し入れ、ローンを何につかったか、ローンの返済額の合計などが一目でわかる、シンプルな会計フォーマットを作成。11月は、このフォーマットをオバチャンたちに実際に使ってもらい、彼女たちが一番、使いやすいようにして、最終化する予定だ。

にわかに活性化してきたオバチャンたち。ワークショップ&チェンナイ視察が、ドーピングに過ぎなければ、これは、一時的効果しかないだろう。
「これが一時的効果(ドーピング効果)に終わらないよう、しっかりフォローアップをしていかなればならない。」とスタッフ・ミーティングの度に話をしている、今日この頃である。

もちろん、ワークショップやチェンナイ視察にも参加しない、参加しても、その情報を、他のメンバーに伝えない、というグループもある。そういう変化のないSHGオバチャンたちに、活性化したオバチャンたちと同様のワークショップや視察の機会はない。まずは、元気になってきたオバチャンたちを、さらに元気にし、そのオバチャン・パワーで元気のないSHGに喝を入れてもらう予定だ。SHGの変化は、これからどんどん起こるだろう。

3-4

「私も参加したい」と思って参加してもらうために

7月のPCUR-LINK事業開始から、5ヶ月が経ち、SHGのマネジメント能力の向上を目指した研修を、スタッフやSHGを対象に実施してきた。しかし、この間、ソムニード・スタッフも、研修講師も、「○○をしなければならない」とは一度もSHGのオバチャンたちに、言っていないのだ。例えば「役割分担は大切です。」とか、「貯蓄を増やしなさい。」とか、「自分で会計記録をつけなさい。」という類のことだ。大切なことは、今まで、「私には出来ない」と思っていた、SHGマネジメントに必要な活動を、SHGがオバチャンたちが出来るようになること。オバチャンたちが、「私にも出来る」ということに気付いてゆくことである。そして、SHGマネジメントに必要な技術を取得できるような研修を継続してゆくこと。何より、オバチャンたちがその研修に「私も参加したい」と思って、参加してゆくことである。
SHGマネジメント技術をオバチャンたちが身につけ、「SHGは、自分たちに必要だ」、「SHGは、自分たちのものだ」という意識あってのPCUR-LINK事業なのだ。オバチャンたちのパワーアップは続く。

注:
献身的なNGOスタッフは「ファシリテーター」となるため、「なぜこの“献身的な活動”がSHGをダメにするのか」を今後のワークショップで、徹底的に鍛えられる予定。