第22 号 ようやく本気になった(?)オバチャン・ビジネス 「アタシらの作るものを買ってくれるマーケットなんてナイ?!」 (2006 年6 月30 日発行)

In 805プロジェクト通信 インド「PCUR-LINK便り」 by master


2004 年7 月からスタートしたこのプロジェクトも、いよいよ来年の6 月末で終了。「あと1 年しかなーい!」と悲鳴を上げるオバチャンたち(&プロマネも)。5 月以降の「オバチャンからオバチャンへの技術移転」の開始後、新たに2 グループがVVK に加盟。VVK 加盟グループが4つから、6つになった6 月。VVK は目標達成グラフを作って、月ごとに新規グループをリクルート。銀行業も始めたいが、団体登録がされていないと、銀行業はできないということで、7 月10 日を目標に、現在、団体登録手続きが進行中!今も、オバチャンからオバチャンへの技術移転は着々に進んでいる。その一方で、VVKの年間予算をソムニードと折衝できない、銀行業をはじめられない、ビジネスは決まらない、ナドナド。読者の皆さまには、毎度おなじみ、“暗礁に乗り上げるVVK”だが、何度も何度も座礁ながらも、しぶとく、大海に船を漕ぎ出すオバチャンたちである。さて、今月号のタイトル「オバチャン・ビジネス」の前に、チョット前置き。
「オバチャンと予算」の巻。
前号のVVK 総会で承認された行動計画に基づいて、年間の予算の詳細を、をVVK 内部で4,5 月と話し合いを続け、ようやく6 月。詳細を詰めたオバチャンたちが、VVK 内で最終化したものをソムニード(現ムラのミライ)・スタッフと予算折衝。
プロマネ:「(VVK 作成の予算に対して)いっぱい、いっぱい質問があるんだけどさ、まず、この研修という費目の、縫製とコンピューターって一体何?」
○オバチャン1:「エーッと、縫製の研修を20 人受ける費用、@Rs.1,000X20 人=Rs.20,000 のこと?」
◆プロマネ:「そうよ、それ。縫製の研修ってそもそも何?それに20 人ってどーいうこと?」
△オバチャン2:「えーっと今、グループが4つでしょ、各グループから5 人ずつが研修を受けるってことです。それから、縫製はサリーの下につけるペティコート(スカート)や女性用パジャマ“ナイティ”の縫い方を学ぶ、ということで、その既製服を作って、売ることを、VVK のビジネスにしようと思ってんのよ。」
◆プロマネ:「フーン、アンタたち、どんなナイティを作るの?誰に売ろうとしているの?どこで研修を受けるの?20 人が縫製の研修を受けて、その20 人に給与が出せるようなビジネスをしよう、と考えた上での20 人なわけ?それから、それから・・・」
▲オバチャン3:「えーだって、研修費はPCUR-LINK 事業から出してくれるんでしょう?だったら、プロジェクト終了前に、なるべくたくさんの人が研修受けた方がいいと思ってさ、それで20 人にしたのよ。」
◆ソムニード・スタッフ一同:「・・・・」眉間に皺
◇ラマラジュ(ソムニード・スタッフ):「じゃあ、コンピューター研修10 人、@Rs.500×3 ヶ月×10 人=Rs.15,000 という根拠は?」
◎オバチャン1:「それはね、コンピューターを習いたい人、10 人に研修を受けてもらうのよ!将来、VVK でも、もっとコンピューターが必要になるじゃない?そのときに、備えて、PCUR-LINK 事業が終わる前に、費用を負担してもらえるうちに、10 人くらいは、研修受けておくといいかな、と思って・・・」
◇ラマラジュ(ソムニード・スタッフ):「今、VVK スタッフが2 名、コンピューターを習っているよね?それでは不十分だということ?」
○オバチャン2:「そうそう、そのスタッフ2 名の仕事をチェックする人がいるでしょう?その人たちに、コンピューターの知識がないとダメなのよ」
◆プロマネ:「で、誰と誰がチェックするのよ?」
◎オバチャン3:「えっとVVK 代表でしょ、書記でしょ、会計でしょ、この3 人よ」
◆プロマネ:「じゃあその3 人がトレーニング受ければいいじゃん。将来、コンピューターがたくさん必要になるって、アンタたち、いつまでに、VVK の規模がどのくらいに、なっていて、そのためにはコンピューターが何台必要で、そのコンピューターを購入するための資金はいくらで、と考えたことあるの?」
◎オバチャン一同:「・・・・ナイ。」
ここまで予算折衝を黙って聞いていた黄門様が、ボソっと一言。
黄門様:「オバチャンたちは、“予算”が何かを分かっておらんな。またプロマネもラマラジュもオバチャンたちが、“予算”そのものが分かっておらんことを分かっておらん。」
一同:「?☆?」
☆黄門様:「おまえさんたち、予算を20 万ルピー(約52 万円)ほど計上しておるがの、万一、PCUR-LINK 事業でソムニードがその全額の予算を認めたとしょう、それはどういうことかわかるかの?」
●オバチャン5:「えーそしたら20 万ルピーをVVK にくれる、ってことでしょう!」
☆黄門様:「それ、それ。その考え方自体が違うのじゃよ。活動があってはじめて、支出が生じるじゃろう?予算は、その活動にかかる費用のだいたいの目安なだけじゃ。20 万ルピーの予算がついていて、10 万ルピー分しか活動しなかったら、10 万ルピーしかVVK には入ってこないのじゃよ。その活動に見合った実費分しか、根拠はないじゃろう?」
◎オバチャン一同:「・・・・・・・・」(なーんだ、20 万ルピーって予算に書いたら、20 万ルピーは無理でも15 万ルピーは、もらえると思っていたんだけど、どーやら「活動」がなければ、その15 万ルピーも貰えないらしいワ。予算ってそーゆーことだったのかー。)
☆黄門様:「あと、縫製の研修費じゃがな、おまえさんたち、実際、既製服(サリー用ペティコート、女性用パジャマ通称“ナイティ”)を売っている店で、情報を集めてきたことがあるのか?」
◎オバチャン一同:「一度も、店で聞いたことがないわー」
☆黄門様:「ビジネスの予算を立てる、予算の根拠を知るには、まず実際に、自分の足で店に運んで、情報を集めるのが第一じゃ。自分で汗を流して、情報収集すらしないおまえさんたちが、本当に縫製の研修を受けて、ナイティを作って、それを売るなんてビジネスをしたいのか、どうか疑問じゃな。」
●オバチャン4:「じゃあ、黄門様、アタシら、店でいろいろ聞いてきたら、それをもとにまたトレーニングしてくれる?」
※※実は、過去1 年間にわたって、何度も研修を行い、ビジネスのシミュレーション(野菜の行商、紅茶、ジュート袋、既製服、サリーなど)をしてきたオバチャンたち。サリーに関しては、実際に昨年12 月から1 月、2 月にかけて「ドーンとやってみようサリービジネス」で小売業に手を出し、その結果、未だその収支が合わず、大混乱になった経緯を持つ。もちろん、3 月サリービジネスの振り返りの研修で「なぜサリービジネスは成功しないか」を考えた。それに、最近では、5 月に既製服の生産&販売ビジネスの研修をして、ビジネス計画の段階ですでに必ず破産することが判明。既製服の生産&販売ビジネスをやりたい、と言い出したのはオバチャンたち自身だが、その破産結果にもめげずに、まだ予算に「縫製トレーニング」を盛り込んでくる。そこで、黄門様は、オバチャンたちが実際に、ペティコートを売っている店で、情報を集めてくる、という条件で、ビジネス研修の実施を決定。オバチャンたちは、6 月22 日、23 日に研修をしてほしいと希望を出していたが、21 日になって、「やっぱりまだ情報が十分集まってないので、研修を24日、25 日にしてほしい」と希望してきた。
そこで、ようやく今月のテーマ。
“ようやく本気になった(?)オバチャン・ビジネス
「アタシらの作るものを買ってくれるマーケットなんてナイ?!“の巻、はじまり、はじまり。

20060628
☆黄門様:「で、おまえさんたち、どんなお店で話を聞いてきたのかい?」
●オバチャン1:「プーナマーケット(ビシャカ最大の卸青果市場、市内スラムのオバチャンたちの家から徒歩5 分)のそばにあるナイティなど既製服を扱う卸問屋に行ってきたわ。」
◎オバチャン2:「アタシら、買い物せずに、聞きに行っただけだから、15 分くらいしか各店で話ができなかったわ。」
☆黄門様:「店に行った時間は?誰に話を聞いたの?ナニを聞いたの?」
○オバチャン3:「夕方の5 時くらいで、プロジェクト事務所の台所の半分ほどの狭いところに、店員が4 人くらいいたかな。お客さんもアタシらがいた15 分の間に、5,6 人来てたし。とにかく混んでいて、買わないなら早く店を出ていけって感じだったの。でも、ナニを売っているのか、どこから買っているのか、何時からお店を開けているのか、って店のオーナーに話を聞いたわ。」
☆黄門様:「で、それから?」
▲オバチャン5:「行った店は、ペティコート、ナイティ(女性用パジャマ)やサリーのブラウス生地なども置いていて、既製服と生地も両方扱っていたわ。既製服は、店とは別に、縫製工場があるみたいで、そこから買っているみたい。オーナーは、店の他に、4,5つの倉庫を持っているらしいの。でも店の裏の倉庫まは見せてもらえなかったわ。自前の縫製工場で、ペティコートやナイティを作っているけど、それ以外にも、別の生産者からも買い取りしているらしいわ。店は朝9時から夜10 時まで開いているそうよ。」
△オバチャン6:「でね、私たちが既製服(ナイティ)を作って、売る商売がしたい、って言ったら、まず私たちが作った製品を見せろ、って言うの。そして今、彼が買い取っている製品より、1 ルピーでも安ければ、買い取ってやるって言ってたわ。」
○オバチャン3:「その店のオーナーは、製品の質のことも聞いてたわね。」
▲オバチャン4:「質ってナニ?」
○オバチャン3:「布がスムーズってことかなあ?それとも長持ちするってことかなー?質ってナンだろーね?」
オバチャンたちの行った、卸問屋では、一枚70 ルピーから100 ルピーのペティコートを売っており、その値段は、このあたりでは最低の値段&質。すなわち、スラムのオバチャンたちが年に1 回か2 回、買うような製品を扱っている。
☆黄門様:「そもそも、アンタたち、なんでその卸問屋に行ったの?」
▲オバチャン4:「だってさ、大きなエアコン付き店に行っても、誰もアタシらの話しを聞いてくれんと思ったんだもん。それにその卸問屋、家から近いし。」
☆黄門様:「で、その他にナニを言われたのじゃ?」
○オバチャン7:「あー、なんかね、帰り際にアドバイスしてくれてたわね。そのオーナーの店は、もう何十年も既製服の生産と販売をしているけど、もうとにかく競争が激しくて、大変だから、VVKでこの商売に新規参入するなら、十分、気をつけるように、だって。」
☆黄門様:「それはもっともだな。それはナニもその卸問屋の一枚70 ルピーから100 ルピーのナイティの商売だけじゃないぞ。今ある商売をそのままやろうとしたら、それはどれでも激しい競争があるのじゃ。そんな今ある商売をやっても無駄じゃ。“ニッチ”を探さねばならんな。」
◎オバチャン1:「“ニッチ”ってナニ?」
☆黄門様:「隙間じゃ、隙間。どんな業種だって、まだまだ隙間があるじゃろう。誰も売っておらんものじゃ。」
○オバチャン3:「そんな隙間なんてアタシら探せないよー。そんな商売ナイよー。」
☆黄門様:「まだそんな結論を出すのは早いぞ。おまえさんたち、そもそも、どんな商売にも始める前には準備が必要なのじゃ。今から、その練習をするが、おまえさんたちは一体、どんな商売がやりたいのじゃ。製品を売ることか?既製服を生産することか?それとも生産して、売ることなのか?どれじゃ?」
△オバチャン一同:「えーっと3 番目の作って、売るやつがやりたーい!」
☆黄門様:「では、おまえさんたち、一体、VVK で、最高いくらのお金が扱えるのじゃ?」
△オバチャン一同:ザワザワ、としばらく相談の結果。
●オバチャン4:「アタシら5 万ルピー(約13 万円)くらいなら投資できるわ。で、ソムニードが10 万
ルピー(約26 万円)くらい資金を出してくれたら、合計で15 万ルピー(約39 万円)くらいなら、ハンドルできるわー。」
☆黄門様:「分かった。では、その15 万ルピーを資本にして、年間通したビジネス計画を立ててご覧なさい。既製服を生産して、販売する、というやつじゃ。」
◎オバチャン3:「えーっとその15 万ルピーの中に、縫製の研修とか、ミシンを買うお金とか入っているの?」
☆黄門様:「そうだな、研修費だけは、ソムニードで別に出そう。設備費はその15 万ルピーからやりくりしてみなさい。」
●オバチャン2:「えーーーーーーー、PCUR-LINK 事業で、設備費は出るって言ったじゃん。どーして、15 万ルピーの中に、ミシン代も入れなくちゃいけないのー!」
☆黄門様:「おまえさんたち、よくわかっておらんな。これは練習だ。実際に、ソムニードが設備費を出そうが出すまいが、15 万ルピーという金額がおまえさんたちの資本金ということじゃ。15 万ルピーをVVK で運用できないなら、そんなビジネスは全く成立せん。どんな会社も銀行から金を借りて、資金繰りしながら経営しておるのじゃ。条件は次の4つじゃ。」
1)初期投資の設備費も15 万ルピーに含めること。
2)10 万ルピーは銀行からの融資として、3 年間で年率12%の利子をつけて返済すること。
3)生産した製品は、月に総生産量の55%は売れる計算で売り上げを試算すること。
4)1 か月で終わるような計画は論外。
(※今年5 月の研修で、オバチャンたちがシミレーションしたジュート・バック工場や子供服の既製服工場は、ビジネス開始1 か月で、破産という計算となった)
それからオバチャンたち、1 日以上かけて、ウンウンと頭を悩まし、出してきた試算が次の通り。
・商品:ナイティ(女性用パジャマ)
・対象:14 才から60 才の女性
・販売価格:80 ルピー
・縫製研修対象:10 人(5 つのSHG から各2 名 )
・縫製研修には、1 か月間、1,000 ルピーで講師代を払う。
・生地の買い付けは、3つの都市で:交通費1,000 ルピー
・在庫管理をする人:2 人
・卸問屋に製品を買い取ってくれるよう営業する人:5 グループ(1 グループ2 名)
・1 枚のナイティにつき、支払う賃金:1 人5 ルピー
・1 か月に生産するナイティ数:4,200 枚
・1 か月に販売するナイティ数:4,200 枚
・ミシン代など初期設備費:14 万ルピー
人件費などの各種経費の計算まではできず、ひと月の総支出が不明なまま試算に力尽きたオバチャンたち。上に挙げられた項目の一つ、一つは、黄門様に具体例を挙げて(以下、参照)、粉砕され、またもや、ビジネス開始前にビジネス不成立。
▽顧客層:14 才から60 才は、ターゲットになってない。(昨年のハイダラバード視察)
▼販売価格の設定:価格が低ければ競争に勝てるが、15 万ルピーというわずかな資金では低価格設定が無理。(1 月のサリービジネスで経験済み)
▽1 月1,000 ルピーの縫製の講師:インド全域で行われているNGOおよび政府の質の低い、競争に勝てない製品をつくる収入向上事業(IGP)の縫製講師の値段。この縫製の研修を受けて、実際に商売をしている人は誰もいないことをオバチャンたちは認めている。そんな講師から研修を受けて、一体どーするつもり??
▼営業:SHGの誰も、ただ働きで営業するような人はいない。(1 月のサリービジネスで経験済み)
▽ひと月に4,200 枚のナイティが売れる、ということはまず不可能。大体100%作ったものが売れるなんてことがあり得るか!
▼人件費、光熱費、家賃、設備費、仕入れ費用、予算計上できず:毎度おなじみ、ひと月で破産するビジネス
▽そもそも自分たち(VVK)利益の見込めないこんなビジネスにお金を拠出したくない。(致命的)オバチャンたち、研修をする度に、前回の研修や痛い目にあったサリービジネスなどをきれいに忘れて、初期化した頭で上の試算をした。 (脳のキャパが少ないので、毎回、初期化しなければならないのはプロマネも同類なので、よーくわかるオバチャンの気持ち。)何より「15 万ルピーをアタシらが運用しよう」というスタンスではなく、「ソムニードが設備費を出してほしい、研修費を出してほしい、アタシらを労賃、ナイティ1 枚5 ルピーの労働者として使ってほしい、人件費を出してほしい、10 万ルピーは無償供与にして欲しい、ナドナド」が見え隠れするビジネス計画。必ずココロのどこかで「援助してもらおう」と思っているオバチャンたち。「ビジネスなんて自分たちで出来るわけない」、「補助金あってのビジネス」、「クーリー精神(低賃金で使われる下級労働従事者のままでで構わない、もしくは仕方ないという考え方)」こうした考え方から、なかなか抜けられないのだ。
なんたって10 年、100 年いやウン千年という歳月の中、社会の最底辺で、クーリーが当たり前だったのだから、そんな気持ちが1 年、2 年で変わる方が奇跡なのだろう。彼女たちをクーリーとして存在させ続けるために、周到にアレンジされた社会があるのだ。さて、黄門様が15 万ルピーの既製服生産&販売のビジネス試算を、次のようにオバチャンに説明した。
<支出:月合計 Rs.32,000>(A)
・人件費:Rs.15,000/月 ※6 名分(2 名:縫製、2 名:デザイン・型紙、1 名:営業、1 名:事務)
・家賃:Rs.5,000/月
・借金返済:Rs.3,800/月
・通信費:Rs.500/月
・旅費:Rs.2,400/月
・水道光熱費:Rs.2,000/月
・輸送費:Rs.3,000/月
・消耗品費:Rs.300/月
<支出:初期投資 Rs.44,000>(B)
・ミシン(2 台):Rs.30,000
・裁断用テーブル等その他備品:Rs.12,000
・アイロン(1 台):Rs.2,000
<支出:生地仕入れ代:Rs.40,000/月>(C)
<手元現金(翌月仕入れ等):Rs.34,000> (D)
(A) + (B) + (C) + (D) = Rs.150,000
☆黄門様:「さて、これでおまえさんたち毎月の売り上げが、最低72,000 ルピー(A+B)なければ、翌月の商売が成立しない、ということがわかるじゃろう?」
●オバチャン1:「そーだわねー。毎月支払いが生じるのは72,000 ルピーだわね。」
☆黄門様:「それに、プラスマイナスがゼロになる商売じゃ、VVKもやっておれんだろう。よしこれに8,000 ルピーの利益を足して、毎月80,000ルピーの売り上げを達成するとしようか。40,000 ルピーの生地を仕入れて、100 枚ナイティを作るとすると、1 枚あたりのコストは、400 ルピーじゃな。」
▲オバチャン2:「エーッ、40,000 ルピーで100 枚しか作らないのー!そんな高いのー?」
☆黄門様:「まあまて、ワシの話を最後まで、聞け。それで100 枚ナイティを作ったとして、全部はまず売れん。多くて55%じゃ。そーすると、55 枚のサリーが売れる、と仮定する。そーするとこの55 枚で80,000 ルピーにしようとすると、ナイティの1 枚の値段は、1,454 ルピーじゃな。」
△オバチャン3:「そんな1,454 ルピーのナイティなんて、誰も買わん。」
☆黄門様:「おまえさんたちは、ハイダラバードでナニを習ったのじゃ。お店はどこのお店も、ターゲットを決めておったじゃろう?ひと月1,000 ルピーの収入の人をターゲットにしておる店もあれば、ひと月10 万ルピーの収入の人の店だってあったじゃないか。ナニも、100 ルピー、80 ルピーのナイティを買う人ばかりじゃないぞ。ハイダラバードでもビシャカでも、1 枚5,000 ルピー以上のナイティを買うお客さんはいるのじゃ。ただな、この1,454 ルピーのナイティを作るまでには相当に長い時間の訓練が必要で、最新のデザイン、縫製ができる人じゃないと、無理だわな。まあそいう熟練の職人が、月に2,000 ルピーほどの月給で、仕事をするとは思えんしな。」
☆黄門様:「じゃあ話を戻すぞ、これで1 枚400 ルピーで作ったナイティを1,454 ルピーで売れば、1,000 ルピーのマージンがあるじゃろう。しかし、もしおまえさんたちが、1 枚80 ルピーで売る、ナイティを作るとなるどうじゃ?40,000 ルピーで、1,800 着のナイティを作って、そのうち55%売れたとして、約1,000 着じゃ。1 枚あたりのコストが22 ルピーじゃぞ。マージンはわずか58 ルピーじゃ。だいたい1,800 着分を40,000 ルピーで仕入れることが出来ると思うか?ひと月で、ナイティを1,000 着売るなんて、ビシャカパトナムで一番大きな店でもあり得ないことだぞ。そういう単価を下げたビジネスには、莫大な資本金が必要なのじゃ。15 万ルピーでやるビジネスではないわな。」
●オバチャン一同:・・・・・・・・・・・・・・・沈黙。
結局、今回も自分たちがやりたいといった既製服の生産&販売ビジネスが計画できずに、敗北に終わったオバチャンたち。研修が終了する午後5 時半頃には、精根尽き果てて、ヘトヘト。もうこのままアタシら、ビジネスできずに、PCUR-LINK事業が終わってしまうのか、と絶望的な時間が数分流れた・・・・・
☆黄門様:「さて、おまえさんたちで出来ることはナンじゃ?」
●オバチャン1:「もう既製服の生産&販売のビジネスができんことはよーくわかったわ。」
◎オバチャン2:「アタシら、新しいSHGを増やして、団体登録もして、銀行業をやってゆくわ。銀行業で、利益を生んでいくことなら出来るわ。」
☆黄門様:「そうそうその調子。おまえさんたちはな、クーリーじゃないのだ。VVKという会社の株主、もしくは経営者なのじゃよ。VVKの銀行業は、まず団体登録をして、どんどんおやりなさい。」
●オバチャン3:「でもビジネスもやりたいなー」
☆黄門様:「それじゃ、ワシが2つのビジネスを提案する。しかし、これは、おまえさんたちが、クーリーとして、ではなく、今、ナイティのビジネスで計算したように、15 万ルピーなり、10 万ルピーを自分たちで運用してゆく経営者として参加する気があるのなら、という話じゃよ。」
◎オバチャン一同:「分かったわ、アタシらVVKが経営するわ。」
☆黄門様:「一つは“雑穀類”の小売りじゃ。これはスリカクラム県でソムニードが長年一緒に活動している山岳民族の人たちから聞いたのじゃが、村では、ものすごい安い値段で仲買人に、買いたたかれておるのじゃ。山岳民族のオバチャンたちがタダ同然で、仲買人に売った雑穀類は、その何十倍の値段で、ビシャカパトナムで糖尿病やら高血圧やら、とにかく健康に敏感な消費者にその雑穀類は高く売れておるのじゃよ。またソムニードで、そうしたビジネスをやるための生産センターをスリカクラム県に建てようと準備しておるのじゃ。」
●オバチャン1:「えーその生産センター、アタシらが使ってもいいの?その雑穀類ってナニ?アタシら、その山岳民族の人たちに会いに行くことは出来る?」
☆黄門様:「もちろんじゃ。しかし、何度も言うが、おまえさんたちはクーリーじゃないからな。おまえさんたちが賃労働をもらう、ことだけ考えておるのなら、ソムニードは、このビジネスに、VVK以外のパートナーを探すぞ。まあ、まずはおまえさんたちが、直接、村に行って、山岳民族のオバチとャンたちと話をするのが第一歩じゃな。でも村に行く前に、ビシャカパトナムで雑穀類が、どんな風に、いくらで、どんな店で、誰に、売られておるか、調べておく必要があるな。またロータリークラブとかライオンズクラブとか、ほら、おまえさんたちも知っておるインナーウィールクラブ(女性版ロータリークラブ)の代表のマダムに話を聞く、ということも出来るぞ。」
▲オバチャン4:「じゃあアタシら、7 月にVVKの団体登録をしたら、それを始めるわ!だから、村へ行く研修をしてくれる?あと、もう一つのビジネスはナニ?」
☆黄門様:「それはな、インドの素材をつかって、手工芸品をつくる、という企画があるのじゃよ。その企画の担当者からソムニード(日本)からやってくるから、本人から話を聞くとよいだろう。」この数ヶ月、自分たちで生産・物流センターも出来ない、ビジネスも出来ない、商売のニッチを探すなんて出来ない、ナドナドと「出来ない」づくしだったオバチャンの目に希望が見え始めた。何度も何度も初期化を重ねながら、補助金や無償資金供与(タダ)といった「施し」に頼るのではなく、「少ない投資で、大きな利益」を挙げるにはどーしたらよいか」、少なくとも今まで思いもつかなかったそんなことを考え始めた。黄門様がオバチャンたちにわかってもらおうと必死でやっていることは「ビジネス」の研修なんかじゃない。「他人から低賃金で、労働者として使われ、日銭をもらえれば結構、自分は無知で、無能だと、自分を決めつける考え方、他人に依存して当然と思う気持ち」、ラマラジュとプロマネはそれを「クーリー精神」と呼んでいるのだが、このクーリー精神からの脱却なのであった。それは、オバチャンたちが「人間の尊厳」を取り戻す試み、なんだと思う。今日も、実は新規SHG勧誘のための小委員会があって、プロマネは小委員会のオバチャンたちに「2 時にプロジェクト事務所に来い」と言われていた。しかし、行かなかった。(※ビールを片手に、ワールドカップをテレビ観戦するために行かなかったのでは決してない。)
スタッフの出席がなくても、もうオバチャンたちは、十分、自分たちだけで委員会も開けるし、新しいSHG勧誘の計画も立てられる、のだ。(しかし、この加減はヒジョーに難しくて、プロマネはしょっちゅう失敗するのだが。。。)
それでも、オバチャンたちはいつまでたっても、「自分で決める」ことをしたがらない。ここでスタッフが小委員会に顔を出せば、またオバチャンたちは、「スタッフが●△しろ、と言ったから」と自分で責任をとろうとしなくなる。この小さな「責任逃れ」の繰り返しなのだ。6 月には、VVKオバチャンたち自らがSHGの資金運用法と帳簿づけのトレーニングをした2つのSHGが、新たにVVKに加盟している。7 月にVVKの団体登録をするべく、毎日のようにプロジェクト事務所で書類を作ったり、スタッフに書類を作らせているオバチャンたち。(※スタッフが書類を作っているのではなく、スタッフに書類を作らせているのだ。)粉々になったビジネス計画からも、わずかな光を見つけて、また自分たちのビジネスを計画しよう、としているオバチャンたち。今まで、ずーっと“クーリー”でいたオバチャンたちに「責任をとる、リスクを背負う」という単語はなかった。しかし、この数ヶ月で明らかになってきたのは、意識的にはクーリー状態のままでも、オバチャンのうち何人かが、無意識にでも、このPCUR-LINK事業をテコにして、自力でクーリーを抜けだそうとするオバチャンたちが存在している、ということだった。
次号へ続く。
<注意書き>
団体登録:VVKは今はまだ任意団体。日本のNPO法のように、インドでも様々な団体登録がある。SHG のオバチャンたちによる連合体「ビシャカ・ワニタ・クランティ(略称VVK)は、ようやく2006年2 月に会則が制定され、団体登録への一歩を踏み出した。インドでは、多くのSHGの連合体が、MACS「相互扶助組合組織法」というのに登録されているが、その多くがNGOが会則を作成し、SHGメンバーの誰もMACSが何かも、会則の中身も知らず、ただNGOの言うままにSHGの代表が署名して団体登録しているケースが多い。
VVK2005年3 月に設立された、スラムのSHG のオバチャンたちによる連合体「ビシャカ・ワニタ・クランティ(略称VVK)
プロマネ(プロジェクト・マネージャー)もラマラジュもソムニード・スタッフ。プロマネはこの便り
水戸黄門:ソムニード代表理事

プレゼンテーション1