第2号SHG先進事例地を視察したSHGオバチャンたち (2004年10月8日発行)

In 805プロジェクト通信 インド「PCUR-LINK便り」 by master

~SHG先進事例地視察(タミル・ナードゥ州チェンナイ)~「私も貧しいのにどうしてもっと貧しい人を助けなくちゃいけないの!」

9月から11月までの毎月、計3回にわけて、SHGメンバー合計66名が、アーンドラ・プラデッシュ州のお隣、タミル・ナードゥ州にあるジャヤチャンドランが代表を務める「CFDA(Centre For Development Alternatives)」というNGOの活動地域でSHG先進事例地の視察を行った。(☆前号でお伝えしたワークショップで、ソムニード(現ムラのミライ)&マヒラ・アクションのスタッフがとっちめられたあのジャヤチャンドランです。)

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9月は第1グループとして、9月19日から23日まで、SHG設立後3年以上経っているグループメンバーばかり22名とスタッフ4名がCFDAへ視察に出かけた。ビシャカパトナムを9月19日昼1時半に出発した列車は、翌日朝5時にチェンナイに到着した。一行26名はそこからミニバス2台に分乗して、チェンナイ市内の宿舎に向かい、仮眠をとってから、CFDA事務所に向かった。チェンナイ市内から車で約1時間のところにあるCFDA事務所では、CFDAスタッフ4名とアクシャヤ銀行(AKSHAYA BANK)メンバー2名が視察チームを迎えてくれた。

アクシャヤ銀行は、CFDAが7年前に、SHGの組織化を始め、そのSHGの中から約70のSHGによって運営されている女性による小規模銀行である。このアクシャヤ銀行は、現在1,200名近いメンバーが、年間500万円近い金額の貯蓄を集め、メンバーは、高利貸しからの借金返済に充てたり、日々の食費に充てるたりするためにお金を借りている。

この銀行からお金を借りるための手続きに必要な書類を整えたり、返済計画を立てたりするのは、すべて各グループの責任で、お金を借りるためには非常に強力な連帯責任制度がとられている。そのためローンの返済率は毎月利子も含めて100%に近いという。この銀行の理念そのものが、相互扶助であり、最も貧しい女性を最優先にし、銀行に参加するすべてのメンバーが貯蓄を通じて、全メンバーの生活向上を計る、というものである。

黄金の椅子に座っていることに気づかずに、物乞いを続ける人

さて、ビシャカパトナムから出かけた22名のSHGメンバー。SHGも設立後3年を過ぎる頃から、組織的に運営されていないSHGであればあるほど、もう貯蓄も返済も、毎月のミーティングも、おざなりで全く機能していないもの、もしくはなんとなく不規則に機能しているものに分類され、この22名のSHGメンバーも例外ではない。

ちなみにPCUR-LINK事業がスタートする前にソムニード(現ムラのミライ)が関与したのは、グループの経済活動状況をモニターする調査と2004年3月の時点での各グループのグレーディング(AからDまでの4段階評価)であった。このグレーディングでは今回視察参加者の16名はCとDグレードに属しているグループのメンバーばかり。わずか6名がBグループ、という、いわゆる成績優秀SHGメンバーではない。視察1日目はオリエンテーション、2日目には貧困レベルチェックとSHG訪問、3日目にSHG訪問、とまとめのセッションが行われた。この視察メンバー、視察1日目から、CFDAのスタッフを質問攻めにした。

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⇒どうして返済率が100%に近いの?
⇒私たち、みんなスラムに住んでいて、みんな貧しいのに、どうしてさらに貧しいグループメンバーを優先にするの?
⇒どうして外部の銀行からお金を借りないで自分たちの貯蓄だけで毎年500万円近くも銀行に預金があるの?
⇒どうして1年目は1人月に30ルピーだった貯蓄が、3年目に60ルピーも貯蓄できるようになったの?
⇒メンバーの1人が連れ合いの病気のためにグループからお金を借りていたが、その連れ合いが亡くなって、稼ぎ手がなくなり、もう返済が見込めない、そんな場合はどうしたらいいの?

ここで、ある参加者とジャヤチャンドラン(CFDA代表)のやり取りを紹介しよう。

△SHGメンバー:「私たちみんな貧しいのに、どうしてさらに貧しいグループメンバーを優先にするのよ!?」
▲ジャヤチャンドラン:「では、あなたは今回視察に参加した22名のSHGメンバーは、みんな同じレベルで貧しいと思うか?」
△SHGメンバー:「違う。」
▲ジャヤチャンドラン:「あなたはさっき、みんな貧しいと言ったが、今は違うという。あなたの中に何か、貧しいか貧しくないかを図るものさしがあるのではないか?」
△SHGメンバー:しばらく無言・・・「でも私だって貧しいんだもん。」

特に、参加メンバーはアクシャヤ銀行のモットーである「相互扶助」の意味がわからなかった。「私も貧しいのに、どうして他のもっと貧しい人をSHGが助けなくてはいけないの?」というのが大きな疑問だった。この質問に、答えるためアクシャヤ銀行のメンバーが、2日目に貧困レベルチェックをデモンストレーションした。これは、アクシャヤ銀行が新しくSHGを組織する際、またSHGの活動を評価する際(どれだけメンバーの貧困レベルが向上したか)に用いている絵入りのカードによるチェックで、現金収入以外の貧困レベルを計る。

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22名のメンバーのうち、14名が貧困レベルチェックに参加した。絵入りのカードには、家族が4名以上か以下か、一家の稼ぎ手は1名か2名か、月給か日雇いか、高校を卒業した女性が一家にいるかいないか、家の屋根はセメントか藁屋根か、といった13項目がある。点数は貧困レベル最高で13点。例えば、家族が4名以上なら1点、日雇いなら1点、としてゆく。レベルチェックをして、結果は、13点満点で貧困レベルの最高点を獲得したメンバーはゼロ。最高貧困レベルが8点で、8名近くはみな4点か3点であった。得点の発表後、この3点、4点であったメンバーがさらに、結果に納得できずに、自分は貧しい、とまた主張を始めた。
そこでジャヤチャンドランから一喝。

「いつまでも貧しい、貧しいと主張するならそれで結構。貧しいと言い続けて、誰かが口までご飯を運んで食べさせてくれたり、誰かがお金をくれるのを待っていればいい。SHGはあんたたちには必要ない!」一同、沈黙。

ここで、また一喝。「SHGを始める前、あんたたちは1円だって、自分のお金と呼べるものがなかった。しかし今は10,000円でもグループの貯蓄がある。それでも自分たちは貧しいという。お金があるなしが問題ではなく、お金をどうやって使って、増やしてゆくかを知らないだけだ。あんたたちは黄金の椅子に座っていることに気づかずに、物乞いを続ける人と同然である!」

一同、また沈黙。その後、ジャヤチャンドランは、「それがわからないから、みんなこの視察に来たのでしょう。アクシャヤ銀行のメンバーのSHGを訪れて、どんどん質問してください。」と今度は優しく伝えた。

それからSHGの訪問、アクシャヤ銀行メンバーへの質問などを通じて、視察に参加したメンバーははじめて組織的に、しかもNGOや政府、外部の銀行などに依存せずに、独自に本当の意味で自助グループとして活動しているSHGを目の当たりにした。

ビシャカパトナムに戻り、この視察の模様をグループ全メンバーに伝えるという使命を持っている今回の参加者たち。ビシャカパトナムで、いくつかの視察参加者のグループを訪れたが、彼女たちはやっぱりグループのメンバーから「どうして返済率が100%に近いの?」、「私たち、みんなスラムに住んでいて、みんな貧しいのに、どうしてさらに貧しいグループメンバーを優先にするの?」という質問攻めにあっている。彼女たちは、その一つ一つに、アクシャヤ銀行のSHGはこうだった、と答えている。そして少しでも自分たちでもできる事があれば実行しよう、とグループメンバーに呼びかけている。

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いつかはその日が

女ばかりの26名の珍道中、特にセッション終了後(大抵午後7時近い)にやれヒンドゥー寺院だ、やれ教会だ、ビーチだ、ショッピングだ、とワイワイガヤガヤという模様をすべてお伝えできないのが残念だ。彼女たちはみんな一律に貧しくはないものの、頻繁にビシャカパトナム以外の土地へ旅行し、しかも家族ぬきで1人で5日間も家を空ける、など今までに一度もなかった。隣の州への視察であっても、ほとんど外国に行くような気分だった。もっともインドでは一歩、州を出ると言葉も民族も習慣も全く異なるわけで、やっぱり州を出る、ということは外国へ行くようなものであるが。ちなみに、アクシャヤ銀行のメンバーは年に1回、みんなで貯蓄したお金でタミル・ナードゥ州寺院巡りを行っている。バスを借り切って、各地の公民館や小学校に泊まったりして、グループ旅行を楽しんでいる。

視察に参加した女性たちが、自分のグループのメンバーにあれを見てきた、こうだった、うちのグループでもこうしよう、ああしよう、と話しているのを見て、今回参加したSHGのメンバーの何人かが、たとえ1人でも貯蓄の力、グループの組織力を理解して行動に移してゆくのではないか、と楽しみになってきた。彼女たちが都市と農村のSHGの連携、産直運動の担い手になること、いつかはグループで寺院巡りの旅行に出かけたり、その寺院めぐりに私(プロジェクト・マネージャー)を誘ってくれたり、私にもグループお揃いのユニホーム・サリーを買ってくれたり、PCUR-LINKで建設された生産・物流センターの利益からソムニードのスタッフの給与を出してくれたり、する日だって来るんじゃないかと思う今日この頃である。

視察第2グループは10月、第3グループは11月で、各22名ずつのSHGメンバーと各4名のスタッフの参加を予定しているが、どんな視察になるか、また視察後のSHGメンバーの変化が今から楽しみである。