第14号 チェンナイ視察「アクシャヤ銀行」再び! パワーアップしたVVKオバチャン、アクシャヤ銀行オバチャンと再会! (2005年11月2日発行)

In 805プロジェクト通信 インド「PCUR-LINK便り」 by master


10月17日から19日までの3日間、ビシャカパトナムから列車で16時間かけてお隣りのタミル・ ナードゥ州チェンナイの、「アクシャヤ銀行」を訪れることになったオバチャンたち。去年のちょうど今 頃、チェンナイを訪れたオバチャンたちが、ジャヤチャンドランに一喝されたシーンがつい先月のことのように思い出される。
「いつまでも自分は貧しい、貧しいと主張するならそれで結構。貧しいと言い続けて、誰かが口までご飯を運んで食べさせてくれたり、誰かがお金をくれるのを待っていればいい。SHGはあんたたちには必要ない!」(PCUR-LINK便り第2号参照)

あれから1年・・・。オバチャンたちは今回の視察にあたって、大量の質問を持ってでかけたのだった。オバチャンたちが第1日目に、アクシャヤ銀行のメンバーに「今回のアクシャヤ銀行での3日間の研修中に学びたいこと」を発表したが、その数は33項目にも及ぶ。その一例をご紹介しよう。

●アクシャヤ銀行の会則はどうやって作ったの?
○年間予算や事業計画はどうやって立てるの?
●スタッフの給与は払っているの?
○会計帳簿は誰がどのようにつけているの?
●新しいSHGの同銀行への加入プロセスは?
○貯蓄やローンの返済がきちんと出来ないパフォーマンスの悪いSHGへの対処の仕方は?
●ビジネスを始める前には、どんな市場調査をしたの?
○商品の在庫管理はどうしているの?
●アクシャヤ銀行ではどうやってSHG間の問題を解決しているの?
○ローン供与するときの手続きは?

昨年と比べると、オバチャンたちの質問の内容が非常に具体的で、その量の多さからも、VVKのオバチャンたちが1年でSHGのしくみを理解し、SHG連合体の組織運営を理解しよう、としている様子がわかっていただけるだろうか。
水戸黄門(談)「1 年間で、なんともインテリジェントな(聡明な)質問ができるようになったものじゃ。(涙)」

質問を一通りリストアップして、第1日目はとりあえず「アクシャヤ銀行がどうやって設立され、どん な会則をもっているか」という議題から始めることになった。VVKのオバチャンたち、自分たちの会則を早く最終化したい、早くビジネスを始めたい、と気が焦るばかりで、「会則には何があるか」ばかりに質問が集中し、質問に答えてくれるアクシャヤ銀行のメンバーがどれだけ苦労して、一つ一つの会則を作り出していったのか、そのプロセスを見落としがちになっていた。アクシャヤ銀行が試行 錯誤を繰り返して作り出した会則をそのまま VVKに都合よく利用してしまう、なんてそれは到底、無理な話。
オバチャンたちにとっては、半年ぶりのジャヤチャンドランとの対面で、久しぶりの一喝。

■ジャヤチャンドラン:「アンタたちサンバル(南インドで最も一般的な豆と野菜のカレー)の作り方を母ちゃんからどうやって習ったか覚えてるか?」
△VVKオバチャン1:「母ちゃんが料理をしているのを見て、覚えた。」
■ジャヤチャンドラン:「出来上がったサンバルをどれだけ食べても作り方は覚えられないだろう?」
△VVKオバチャン一同:「そりゃ、そーだ。」
■ジャヤチャンドラン:「それに、ニンジンとかオクラとか、豆とか原材料を見ているばかりでも、サンバルは作れるようにならんだろう?」
△VVKオバチャン一同:「もちろん、母ちゃんがどうやって野菜を切っているか、どれだけ豆を水にひたしておくのか、いつ塩を入れるのか、どれくらい煮込むのか、子どものときから見ておぼえた もんね。」
■ジャヤチャンドラン:「そうだろう。アンタたちが今、アクシャヤ銀行のメンバーに、会則の項目には何があるか、ばかりを聞いておるが、そんなのは出来合のサンバルを食べたい、というだけじゃ。それじゃサンバルの作り方は習えないぞ!サンバルに出来合のものがないように、組織の会則にも出来合のものはなーい!!まずはアンタたちは、アクシャヤ銀行がどうして、“リーダーが年ごと、月ごとに交替する”などの会則を作るに至ったのか、そのプロセスを聞くのじゃ。」
と、またもや一喝をうけたオバチャンたちは、ローンの返済ルール、アクシャヤ銀行の代表メンバーが毎年交替するというルール、また各SHGレベルで決まったリーダーをおかないことにしたルール、を作るに至った苦労話を一つずつ聞くことになった。そこで、アクシャヤ銀行が年ごとに、月ごとにリーダーを変え、責任分担をメンバー全員で行う仕組みに関して、議論が及んだ。

◇VVKオバチャン1:「そんな、月ごとや年ごとにリーダーが変わっていたら、リーダーの仕事が 覚えられないわ。」
■アクシャヤ銀行メンバー1:「でも、1人か 2人が毎月、毎年、帳簿もつけて、ミーティングの議長もやって、銀行にも行って、連合体のミーティングにも出席して、なんてことになったら、そのリーダ ーだけが連合体のことがわかって、会計のことがわかるだけで、他の人はその人に頼るだけだわ。」
■アクシャヤ銀行メンバー2:「アタシたち全員が、仕事を覚えられるように必ず月に1度、年に1度は様々な役割が回ってくるようにローテーションを組んでいるの。だから1人の負担は少ないし、 “アタシは忙しいからそんなの出来ない”とか“どうしてアタシばっかりSHGの仕事をしなきゃいけないのっていう話で揉めないわ。」
◇VVKオバチャン3:「アタシ、読み書きできないから、会計の仕事が回ってきても、出来な~い。」
■アクシャヤ銀行メンバー3:「あー、そういうときはね、グループ内の読み書きできる人が二人か三人で交替でそういうメンバーを助けてあげるのよ。でも最終的に会計の責任をとる人は、読み書きできない人でもやるのよ。」

VVKオバチャンたち、今まで6年間も7年間もSHGをしてきて、設立以来、リーダーは同じというグループがいっぱい。リーダーを交替させることなんか考えたこともなかった、どうもアクシャヤ銀行のメンバーの言っている意味がよくわからない様子。そこで・・・。

◇ジャヤチャンドラン:「NTラマラオをみんな覚えておるか?」
■VVKオバチャン一同:「もちろん、いやー彼の若い頃はかっこよかったねえ。」
◇ジャヤチャンドラン:「NTラマラオといえば?」
■VVKオバチャン一同(声をそろえて):「そりゃークリシュナでしょう!!」
◇ジャヤチャンドラン:「それが問題じゃ。NTラマラオはクリシュナ役ばかりをやったせいで、他の役が回ってこなかったのじゃ。」
■VVKオバチャン一同:「そーいう、もんかなあ」
◇ジャヤチャンドラン:「じゃあ、バスの車掌は、一日に3回くらい交替するが、人が変われば、仕事が変わるのか?」
□VVKオバチャン1:「いんや、誰がやっても同じように、行く先ごとに切符を売ってくれるわ」
◇ジャヤチャンドラン:「それじゃあ聞くが、ビシャカパトナムで車掌をやっていた人が、ハイダラバードに転勤になったら、車掌はできないか?」
■VVKオバチャン2:「そんなことないわ、ビシャカでもハイダラバードでも仕事は同じよ。」
◇ジャヤチャンドラン:「じゃあ聞くが、車掌の人柄によって仕事は変わるのか?」
■VVKオバチャン3:「そんなことないわ、誰がやっても同じよ。」
◇ジャヤチャンドラン:「それはなぜじゃ?」
■VVKオバチャン4:「そういう仕組みになっているからよ」
◇ジャヤチャンドラン:「その通り、仕組みだ。」
■VVKオバチャン2:「あーそうか、じゃあSHGだって、仕組みがあれば、誰が会計役になったって、誰がリーダーだっていいわけよね?」
■VVKオバチャン5:「アタシ読み書きできないけど、仕組みさえあれば、リーダーだってできるわ!!書く仕事さえ誰かに手伝ってもらえれば、アタシだって集金できるし、ミーティングの議長もできるし、ミーティング中に揉め事が起きても、仲裁できるしね。」
■VVKオバチャン6:「だいたい読み書きできたって、SHGの仕事しない人って多いわよね。“どうしてアタシだけ、アンタもSHGの仕事やってないじゃん”とか言ってね。でも、月に1度、年に1度は会計役とかリーダーとかの役割が回ってくる仕組みがあれば、いいわよねえ。仕組みは大事よねえ」

ここで、10分の休憩。

ジャヤチャンドランはこのセッションの議長もし、アクシャヤ銀行のメンバーの発言をタミル語から 英語にする通訳もしているため、ちょっとお疲れ。ちなみに、ソムニード・インディアのラマ・ラジューが英語からテルグ語にしながら研修をしている。
毎月の VVKミーティングでも全く休憩のないオバチャンたちは、ここでも休憩時間おかまいなしでVVKメンバーだけで議論を続けている。そこへ、研修に同行していた水戸黄門様の登場。

△VVKオバチャン1:「もう今日で1日半、会則のことばかり話しているわ。このままでは明日の夕方の3日間の研修終了までにアクシャヤ銀行でやっているビジネスのことは聞けなくなっちゃう。もう少し先を急いだ方がいいんじゃない。」
◆黄門様:「おまえさんたち、何をそんなに急いでおるのじゃ。」
△VVK オバチャン2:「アタシたち、銀行の会計のことも、ビジネスのことも聞きたかったのに、このままじゃ、明日までに会則のことしか聞けないわ。ビシャカパトナムに戻ったら、そろそろ生産・物流 センターの計画を始めないと PCUR-LINK事業が終わってしまうわ。」
◆黄門さま:「そんなことはおまえさんたちが今、気にすることではな~いっ」
一同沈黙・・・(また怒られちゃったオバチャンたち)

△VVKオバチャン3:「え、でもこのままじゃせっかくチェンナイまで来たのに、会則のことだけ聞いてビシャカパトナムに戻ることになるわ。アタシたち時間が足りないわ~。」
◆黄門様:「おまえさんたち、アクシャヤ銀行で学びたいことが、今回だけで学びきれなかったら、また来ればいいだけの話じゃ。そもそも会則がどうしてできたのか、どうやってアクシャヤ銀行が設立されたのか、それは家に例えれば基礎工事の部分じゃ。おまえさんたち、基礎工事がいい加減なところに、5階建て、6階建てのビルが建てられると思うか」
△VVKオバチャン4:「そんな基礎工事がしっかりしてなくちゃ、1階建てでもすぐ倒れるような家しかできないわ。」
◆黄門様:「今、おまえさんたちが急いでも色々聞こうと思っても無駄じゃ。おまえさんたちが急いで今、ビル(生産・物流センター)を建設しても、それは土台のないところにすぐ壊れるものをつくるだけじゃ。」
△VVKオバチャン5:「アタシたちのグループ、責任分担してSHGの仕事しているし、リーダーだって誰でもやれるわ。だから早く次のビジネスの質問をアクシャヤ銀行の人たちにしたいのよ」
△VVKオバチャン6:「あんたのSHGはそうかもしれないけど、アタシのグループなんて7年間も 同じリーダーで、おまけにその人、メンバーにやれ銀行に行け、やれ帳簿をつけろ、って人に押しつけるばかりで自分は何もしないの!VVKのことだってそのリーダーは全然理解していないのよっ、どうしたらいいのっ!?」
△VVKオバチャン7:「アタシのグループだって、問題はいっぱいよ。みんなVVKのこと理解してくれているのに、いざ研修だ、視察だ、ミーティングだっていうと誰も参加しないのよっ!アタシにばっかり責任押しつけてさ。すごく困ってるのよ。」

参加した7つのグループのうち、上のオバチャン6、7のように、未だSHGの基本的な活動もできず、VVKの活動に参加しないメンバーが大勢いるグループが5つ。残り2つのグループはローン返済もグループ内の役割分担も徹底していて、しかもVVKのミーティングで話し合われた内容は月に何度もミーティングを開いて共有している、という活動の活発なグループ。

今回アクシャヤ銀行にやってきた参加したメンバーでも、各SHGの問題を克服して、VVKというSHG連合体のことを考えることが出来るメンバーと、未だ各SHGの基本的な定期的な貯蓄、計画 に基づいたローン返済ということすらできないメンバーをSHG内に抱え、困っているメンバーに分かれた。

◆黄門様:「何度も言っておるだろう。おまえさんたちが焦って、今、色々聞こうと思っても無駄じゃ。例えばな、自分の1つの身体の中で、心臓はとても丈夫だけど、肝臓が悪い、胃が悪い、という人が健康だとは言わないじゃろう。」
△VVKオバチャン8:「それはそうだ、身体のどこか一カ所でも具合が悪いと、それだけで体調がおかしなるものよ。」
◆黄門様:「そのとおりじゃ、VVKだって同じことじゃ。7つのグループのすべてが調子良くて、はじめて健康だ、といえるのじゃ。おまえさんたち、アクシャヤ銀行で学びたいことが、今回だけでは学びきれないというなら、またチェンナイに来ればいいではないか。もしチェンナイに来るのが大変なら、アクシャヤ銀行のメンバーにビシャカパトナムに来てもらって研修をしてもらえばいいじゃろう。」
△VVKオバチャン9:「えっ、そんなこと頼んでいいの?」
◆黄門様:「当然じゃ、これは誰の事業だったかの?」
△VVKオバチャン一同:「アタシたちの PCUR-LINK事業ですっ」
◆黄門様:「じゃあ、おまえさんたちでやりたい研修を提案するのじゃ。何を学びたいのか、そのためにどんな研修が必要なのか、ソムニード(現ムラのミライ)に提案するのじゃ。もうワシらは、お膳立てして研修などせんからな、おまえさんたちで考えるのじゃ!!」
△VVKオバチャン10:「じゃあ、アクシャヤ銀行の人がビシャカに来てくれるといいわ。だって今回研修に来ることができなかった人も参加できるし、アタシも家を空けなくても研修に参加できるしね」
◆黄門様:「それでは、アクシャヤ銀行の人とジャヤチャンドランに研修の講師として、ビシャカパトナムに来てもらえないか、リクエストの手紙を出すのじゃ。どんなことを学びたいのか、研修の計画を自分たちで立てるのじゃ。」
△VVKオバチャン一同:「は~い!アクシャヤ銀行の人がビシャカに来てほし~い」

あっという間に10分が過ぎ、オバチャンたちはまたもや休憩を無視して研修を継続。

ジャヤチャンドランの提案で、アクシャヤ銀行の会則の話をひとまず切り上げ、VVKオバチャンたちが、各SHG 内の問題を発表し、そうした問題をアクシャヤ銀行がどうやって解決していったかを聞く、セッションが始まった。VVKオバチャンたちが SHGの問題「ローン返済ができない人への対処法は何か?」、「独裁者のようなリーダーをどうしたらいいか?」などを聞くと、すばやくアクシャヤ銀行のメンバーは、具体的な例をもとに「アタシらはこうだった」、「アタシらはこう解決した」と話してくれた。どんな質問にも明快に答えてくれたアクシャヤ銀行のメンバーたち。研修最終日には、VVKのオバチャンたちは 12月に、ビシャカパトナムで、ジャヤチャンドランとアクシャヤ銀行のメンバーに講師になってもらって、研修をしてもらう約束を取り付けた。

最後にVVKのオバチャンの1人が、アクシャヤ銀行のメンバーに1つ質問していいか、とジャヤチャンドランに通訳を求めた。
□VVKオバチャン1:「あのー、最後の質問なのですが、一体アクシャヤ銀行で年間に扱う金額って合計でいくらなのですか?」

◆黄門様:「おまえさんたちが想像できない金額じゃ。おまえさんたちが想像している金額の何十倍じゃろう。」
◇ジャヤチャンドラン:「VVKのメンバーが力を合わせて、各SHGの問題をVVKで解決できるようになったら、そのとき教えてあげよう。」
▼アクシャヤ銀行メンバー:「アタシたちだって、各SHGの問題がいっぱい、いっぱいあったもの。それを一つずつアクシャヤ銀行で解決していって、今のアタシたちがあるのよ。」
◇ジャヤチャンドラン:「アンタたちVVKだって、SHGを設立したとき、1人ではお金のやりくりが苦しいから20人なり15人なりが集まってSHGを設立したのだろう?今度は、1つのSHGで解決できない問題を、7つのSHGが集まったVVKで解決していくようにしてごらん。12月にその課題が出来ていたら、アクシャヤ銀行で扱う総額を同銀行のメンバーから聞くことにするといい。」

ちなみに、同銀行は、政府のスキームや他の金融機関など外部からの資金供給は一切なしで、SHG内部の貯蓄と定期的なローン返済を繰り返しただけで、2000年から2004年の5年間で、なんと取り扱い総額を6倍に増やした。新たなSHGの獲得も、CFDA(ジャヤチャンドラン代表のNGO) の力を借りずに、アクシャヤ銀行のメンバー自身が行っている。最近では近くの駅で物売りをする女性たちにSHGを結成するよう呼びかけているそうだ。新グループ獲得とその研修はアクシャヤ銀行の重要な業務の一つで、同銀行のメンバーはそうした業務が銀行の利益拡大につながることを十分認識している。

あーっという間にチェンナイでの3日間の研修を終え、ビシャカに戻ることになったオバチャンたち。今回は、ハイダラバードよりさらに長い移動時間16時間の列車の旅。果たして、VVKオバチャンたちがハイダラバード視察(前号参照)に続いて、列車内臨時 VVKミーティングを開催し、他の乗客から再び「謎の集団」と見られてしまったのか、それは、次号(10月のオバチャン その2)をお楽しみに。

注意書き

NTラマラオ=映画スターからアンドラ州の州政府首相になった。

クリシュナ=ヒンドゥー教の神様。

5階、6階建のビル=ビシャカパトナムで一番高いビルはそのくらい。

アクシャヤ銀行取扱額=この総額は、皆さんも12月の研修までお楽しみに。

プレゼンテーション1