第13号 地元プレッシャーを静かに無視~シッディヴィナイカ・グループその後~ (2005年10月23日発行)

In 805プロジェクト通信 インド「PCUR-LINK便り」 by master

シッディヴィナイカ・グループその後

前号で、地元のSHG連合体に加盟してしまったシッディヴィナイカ・グループであるが、その後、地元からのプレッシャーは?

散々、地元のSHG連合体に加盟しないと、保険ももらえない、舗装道路もあげない、政府からの飲料水供給事業も受けられない、ととにかくあれこれと脅かされていた同グループだが・・・。同グループのメンバーではないけれど、同地区の有力者のオバチャンや、自称“政府がバックについている”というNGOのスタッフ(そもそもそんな売り文句だけのNGOって・・・。)なども、同グループが地元のSHG連合体に登録した途端、シッディヴィナイカ・グループのミーティングに勝手に、顔を出すようになって2ヶ月。無理矢理払わされた保険料も、よくよく聞いてみれば1年限りで、領収書を一枚発行されただけで何の規約もないことがわかり、SHG連合体の会則も全然見せてもらえないことに、シッディヴィナイカ・グループのメンバーたちは、この地元のSHG連合体に、うんざり。
9月のある日、ちょうどVVKのミーティング内容をメンバーと共有していたシッディヴィナイカ・グループに、地元の有力者のオバチャンが例のごとく勝手に入り込んできて、あれこれ口を出してきたが、そこで・・・。

◆シッディヴィナイカ・グループオバチャン1:「あなた(有力者のおばちゃん)、私たちのグループのことを思って、ミーティングに来てくれるのはありがたいのだけど、ちょっと今、VVKのことを話しているから席を外してくれるといいのだけど・・・。」(とても控えめに発言)
◇同グループオバチャン2:「そうそう、それから、あの私たちから保険料とか政府のSHG連合体への会費なんかを集金していったNGOのスタッフにも言ってもらえないかしら?”アタシらの許可もなく、グループ・ミーティングに来ないでくれる?”って。あなた(有力者のおばちゃん)からあのNGOのスタッフに伝えてくれると助かるわ。」

有力者オバチャン、無言でその場を去る。
それ以降、そのおばちゃんもNGOスタッフもシッディヴィナイカ・グループのミーティングにぷっつりと顔を出さなくなったという。最近、このSHG連合体に名前をかして、なんとなく代表になってしまったというオバチャン(同グループのお隣のインディラ・グループのメンバー)が、はじめてプロジェクト事務所を訪れ、VVKのミーティングに参加したが、その議論に全くついていけなかった。
事務所備品の予算化、10月に予定しているチェンナイのSHG連合体が運営する「アクシャヤ銀行」への視察の目的を議論したり、遅刻してきたメンバーが他のメンバーに「無責任だ」と叱られたり、会計帳簿を最新の情報にアップデートしていないSHGがどうして情報をアップデートする必要があるのか、お説教されていたり、なんだかんだと議題がいっぱいのVVKのオバチャンたち。シッディヴィナイカ・グループのオバチャンたちは、VVKのミーティングで、積極的に発言し、他のグループをリードしている。

ハイダラバード市場調査~オバチャン高級店に行くの巻~

9月、夜行列車での移動2日、ハイダラバード2日、という4日間の視察にでかけたオバチャンたち。視察第1日目朝のミーティング。
◇ソムニード(現ムラのミライ)・スタッフ:「ハイダラバードはビシャカパトナムと違って、大都会ですから、迷子にな
ったり、ひったくりにあったり、といろいろ心配ですが、皆さん、十分、気をつけてくださいね。」
◆オバチャン1:「はーい!でも視察が終わったら、お寺に行ってもいい?」
□オバチャン2:「買い物にも行ってもいい?」
◇スタッフ:「ダメ、ダメ。そういう買い物とか観光とかは、自分たちVVKで貯蓄して来るようにしてください。今回は市場調査のための視察です!」
◆プロジェクト・マネージャー(プロマネ):「えーでも、ちょっとくらいはお土産買ったりしてもいいよねえ?」
◇スタッフ:「わかりました、1時間くらいならいいでしょう。」
□オバチャン一同&プロマネ:「わ~い☆」
◇スタッフ:「いいですか、皆さん、とにかく落とし物とか、盗難とかに気をつけるのですよ。では、そろそろ出かけましょう。あ、僕の靴は・・・あーっ、ない!」
ミーティング中、わずかな間、靴を脱いで、地面に座っていたスタッフやオバチャンたち。
すぐそばに置いてあったはずの靴のないことに気づいたスタッフが1名。
◆オバチャン一同:「やっぱり、ハイダラバードは物騒なところだねえ。大都市だねえ。油断がならないねえ。気をつけないといけないねえ。」

4つのグループに分かれて、高級店、中級店、下町のバザールに出かけて行ったオバチャンたち。
朝一番に高級店を訪れたあるグループは、「買わないなら店から出ていけ」と店からつまみ出された。 またあるグループのオバチャンは下町のバザールのある店で買ったガラスの腕輪を違う店で「俺の店の腕輪を盗むな、もし別の店で買ったというなら証拠の領収書を見せろ」と言われてしまった。バザールの屋台店などに領収書などなく、泣く泣くお金を払って買った腕輪を違う店の主人に渡してしまったオバチャンもいた。
ビシャカパトナムには高級店などなく、オバチャンたちが足を運ぶような店は下町のバザールばかりり。商品開発の基礎の基礎である、顧客層の設定など全く考えたことのなかったオバチャンたちが、この視察で始めて、どの店も、特に高級店ほど、特定のお客さんをターゲットにして商売をしている、ということを理解した。

ハイダラバードから夜行列車でビシャカパトナムに戻る途中、列車内で緊急ミーティングを開いたオバチャンたち。ワイワイ、ガヤガヤと話し合いを続け、他の乗客から「ナンだナンだ」と怪しまれた。
△乗客:「アンタたち、20人もオバチャンばっかり集まって何を話しているのかね?そもそもアンタたちは何者かね?」
▲オバチャン:「アタシたちは、ビシャカパトナムにある7つのSHGの連合体“ビシャカ・ワニタ・クランティ”という団体の者です。将来、生産・物流センターを経営するため、ハイダラバードに市場調査に来ました。今は2日間の研修の振り返りをしているのですよ。」

スタッフの誰もそんなミーティングが行われることは知らず、たまたま同じ車両に乗り合わせたマヒラ・アクションのスタッフは・・・。
●マヒラ・アクション・スタッフ:「もう午後10時半だよ、もうミーティングを終えて、早く眠ろうよー」
◎オバチャン1:「まだまだ。まだ議論しなければならないことはいっぱいあるわ。」
○オバチャン2:「そうそう、高級店、中級店、下町のバザールを視察したけど、じゃあアタシたちの生産・物流センターで何をするか、まだアイデアが出てこないのよー。」
●マヒラ・アクション・スタッフ:「そんな急には無理よ。アンタたち、ハイダラバード出発して、もう4時間もミーティングしてるのよ、もういい加減疲れたんじゃないの?」
◎オバチャン3:「いやいやもう少し。もうちょっとミーティングに付き合ってよ。」
●マヒラ・アクション・スタッフ:「エーッまだ続けるの??11時に消灯なんだから、それまでには終わろうよ。」
○オバチャン4:「わかってるって。あと30分で終わりにするから。。。」

結局、消灯時間午後11 時までミーティングを続け、翌朝ビシャカパトナムに到着するや否や、プロマネのところにやってきたオバチャンが・・・。
■オバチャン1:「あさって、この視察の振り返りのための臨時VVKミーティングを開きますのでソムニードのスタッフも是非来てください。」
◇プロマネ:「定期ミーティングは明明後日だけど、それは予定どおりなの?」
■オバチャン2:「もちろんです。月に1度の定期ミーティングでは時間が足りないのです。議論しなければならないことがいっぱいですから。」
◇プロマネ:「了解。それではあさってと明明後日に会いましょう。」

そしてハイダラバード視察の振り返りのための臨時ミーティングの日・・・。
オバチャンたち一同、視察後、各店がそれぞれ顧客の年齢や好みなどを設定して商売をしているのを一応理解はできたが、さあ自分たちの商売をどうしよう、ということになっても一向にアイデアが出てこない。
◇オバチャン1:「黄門様、アタシたち、生産・物流センターで何を商品にしたらいいかまだ全然わかりませーん。何をしたらいいですか?」
◆黄門様:「おまえさんたち、自分で食べたいものが鶏カレーなのか、ナスカレーなのか、わからない、と他人に聞くのかい?」
◇オバチャン2:「いいえ、聞きません。自分で考えます。」
◆黄門様:「じゃあどんな顧客を対象に、どんな商品をつくり、どんな店にしたいのか、自分で考えなさい。今、それを考えることができないなら、どういう研修を受ければ、生産・物流センターの運営ができるか、自分たちがしてほしい研修を提案しなさい。もうワシらがあれこれとお膳立てして研修することは一切せんからの。」

オバチャン一同、またもや黄門様の一喝に、目をまん丸にして沈黙。
どうしよう、こうしようと議論はまだまだ続くのであった。

日本NGO界の貴公子オバチャンと遭遇 ~壽賀一仁さんのビシャカパトナム訪問記~

JICA東京がコミュニティ開発研修教材作成をシャプラニール(日本のNGO)に委託し、このオバチャン自立支援事業(PCUR-LINK事業)も教材の一つに取り上げられることになった。そこで、この9月、シャプラニールから依頼を受けたNGO界の貴公子、壽賀一仁さんがビシャカパトナムでスタッフやオバチャンたちに取材を行った。スタッフやオバチャンたちの事業実施に当たっての苦労話を受け止め、穏やかにインタビューを進める壽賀さんは、オバチャンたちの大歓迎を受けた。

それでは、まずはスタッフ編。
○壽賀さん:「PCUR-LINK事業開始当時のことを話していただけますか?」
●マヒラ・アクション代表:「よくぞ聞いてくれたわ。ソムニードが最初に、“事業実施はやる気のあるSHGとしかやらない、事業パートナーになるSHGを選抜する”って言ったときには、正直そんなソムニードが許せなかったわ。だって、アタシたちはもう7年間もスラムの貧しい女性たちを1人でも多く助けてあげようと活動してきたのに、なぜ選抜なんてするのか全然理解できなかったわ。」
○壽賀さん:「長年スラムの女性たちと活動されてきたのですから、そのお気持ちはよく分かります。それで、事業開始から1 年ちょっとが過ぎた今はいかがですか?」
●マヒラ・アクション代表:「ところがね、今は違うのよ。選抜されたSHGのメンバーたちが自分のグループの帳簿付けとか、SHG連合体の運営とか学んでいったでしょ。そのうち彼女たちが選抜から外れたグループをトレーニングするって言い出したのよ。そしてだんだん、私もソムニードがやっていることは正しかったって思えるようになったの。ただ貧しい女性を助けてあげたいっていう“気持ち”だけじゃなくて、“技術”が必要だってことが分かってきたの。」

後日、インタビューを撮影したビデオを見ながら。。。
◇プロマネ:「壽賀さんのインタビューどうでした?」
●マヒラ・アクション代表:「壽賀さんにはあれこれ愚痴を言ってしまったわ。だってソムニードのやり方が許せないって思っていた当時の話とかね。やっぱりそういうのって誰かに聞いて欲しいじゃない。今まで誰にも言えなかったけど、壽賀さんにインタビューしてもらってスッキリしたわー。」
◇プロマネ:「うーん、よかったですね。」(やや複雑な気持ち)

次に、あるSHGミーティングで壽賀さんのインタビューを受けたオバチャン編。
○壽賀さん:「先日VVKのミーティングを拝見させていただきましたが、皆さんとても活発に発言されており、感動いたしました。ところで、このPCUR-LINK事業を通じて、皆さんが具体的に習得した技術とは何ですか?」
●オバチャン1:「うーん、この事業開始前はマヒラ・アクションのスタッフに、グループの会計帳簿をつけてもらっていたり、ミーティングを開くときには、議長をしてもらったり、銀行にお金を預けに行ってもらったり、とにかく何でもSHGの仕事をやってもらっていたわねー。」
◎オバチャン2:「そうねえ、アタシら別にSHGのこと何にもやってなかったもんねー。お金に困ったらスタッフに“銀行とか政府からローンをもらってきてー”と頼むだけだったわねえ。」
◇オバチャン3:「でも今は、研修をたくさん受けて、金銭出納簿も各仕訳帳も自分たちで付けられるし、ミーティングなんてスタッフいなくても月に何度も開いているし、自分のグループのことは自分で全部できるようになったわー。」
◆オバチャン4:「去年の10月にチェンナイの“アクシャヤ銀行”に視察に行って、グループメンバー全員がSHGの仕事を分担してるのを見たときから、アタシたちのグループも、貯蓄を集める人、ミーティングを招集する人、銀行に行く人って、役割分担するようになったわー。」
○壽賀さん:「それは大きな変化ですね。その他にありますか?」
■オバチャン5:「昔は、こんなにグループのメンバーが発言するってことなかったわ。1人のリーダーとスタッフに全部責任を押しつけて、ミーティングなんてリーダーとスタッフしか話していなかったしね。でも、今はみんなSHGの仕事を理解して、分担してやっているし、研修に参加した人が色んな情報を共有してくれるから、ミーティングがとても楽しくなったわ。」
ワイワイと壽賀さんのインタビューは続く。

インタビューをうけた多くのSHGのオバチャンたちが口を揃えて「アタシたちのPCUR-LINK事業なんだから」と、壽賀さんにあれこれと伝えている姿に、またもや目頭を熱くしたソムニード・スタッフであった。事業終了前もしくは終了時に、また壽賀さんがインタビューしてくれるのを心待ちにしているオバチャンたちであった。現在、こうしたインタビューやVVKミーティング、各SHGミーティングなどを撮影したビデオをもとに研修教材を作成中。

オバチャン自立支援研修教材に乞うご期待!

プレゼンテーション1