ミニトークイベント「海外駐在スタッフ座談会~私がインド・ネパールで働くワケ~」 開催報告

In 100研修・イベントの記録 by master


イベントの概要

海外ボランティアやスタディーツアーなどに参加経験がありつつも、「経験を消化しきれていない」「どう将来に活かしたらいいか分からない」と感じている人を対象に、ソムニード(現ムラのミライ)海外駐在スタッフが自身の経験を交えながら、現場での取り組みについて紹介しました。
同じNGOで海外駐在をしている3人のスタッフですが、それまでの経緯は三者三様。それぞれが体験したインド・ネパールの生活、そして3人の考える「現地で本当に必要とされている活動」、活動にあたっての試行錯誤などを2時間たっぷり語りました。

開催日時:2014年1月15日(水)19:00~21:00
場所:ソムニード関西事務所
参加者:来場11名、Ustream視聴5名
スピーカー:前川香子池崎翔子實方博章

P1170265
【会場:ボランティア経験豊富な学生さんで賑わっています】

現地事業の紹介

ソムニード@インド・ネパールでの取り組み

インド「農村部での共有資源管理とコミュニティ開発」
ネパール「環境教育を通した河川の浄化と地域コミュニティ強化
それぞれリンク先をご覧ください。

ソムニードに辿り着くまでの道のり

スピーカー3人の経歴(ボランティア・社会人・NGO等)とソムニードに辿り着くまでの経緯を紹介。

P1170259
前川香子のケース:
「初めて国際協力に興味を持ったのはいつですか?」
―高校生の時にテレビで途上国の子ども達の映像をみて、「あ、私と違うんだ。途上国にはこういう子ども達がいるんだ」と思い、そこで初めて国際協力に興味を持ちました。

「その後、大学院に進学されて調査で南インドを訪れたそうですが」
―調査のためにスラム街で活動する現地NGOを視察しました。女性サポートをしているNGOでしたが、経済的支援における細かい仕事のために、スラムの女性たちの代わりに一日中走り回っているスタッフの姿を見て、「NGOスタッフって大変だな。私はこんなの嫌だな」と感じました。

「それでもNGO/NPOにこだわって進路決定されたんですか?」
―南インドの調査中に農村と都市のスラム街との繋がりについて興味が湧き、色々考えた結果、そういう関心に従って活動するためには「会社じゃない」と思い、NPOで働き始めました。

「ソムニードはどうやって見つけられたのですか?」
―自分の関心のあるキーワード「国際協力」「インド」「都市と農村」等でネット検索して、最初にヒットしたのがソムニードでした。ホームページで見た「地域の課題は世界の課題」というフレーズにも魅かれ、「ここで働きたい」と思いました。

池崎翔子のケース:
「大学院で学生団体を立ち上げたと聞きましたが、どの様な活動をされていたんですか?」
―「適正技術」を活用した製品と途上国の人を繋ぐ活動をしているNGOの創設者に出会ったことがきっかけで、「適正技術のアイディア出しをする」学生団体を立ち上げました。活動を通して「適正技術」についてはある程度分かったけど、「途上国」には行った事がない。現場のニーズを把握するために、「とりあえず行ってみよう!」ということで、一度はJICAの協力のもと、もう一度は学生団体の仲間と一緒にバングラディシュを訪問しました。

「ソムニードとの出会いは?」
―バングラディシュでお世話になったNGOスタッフに「絶対読んだ方がいい」と薦められたのが『途上国の人々との話し方』でした。就職活動をする際に、本に載っていた「ソムニード」という団体に何となく魅かれてインド駐在職員の求人に応募しました。もともと海外と日本の両方に関わって仕事をしたいと考えていたので、「地域の課題は世界の課題」というフレーズを掲げるソムニードは私にぴったりだと感じたんです。

實方博章のケース:
「ソムニードに応募した際、他の進路は検討されていましたか?」
―外国で働けたらいいなと思い、在外公館派遣員や青年海外協力隊など、色々検討していました。

「ソムニードに応募するきっかけは何でしたか?」
―ソムニードを知る前に、インドの大学院の友人に誘われて公立小学校の子ども達に簡単な英語や数学を教えるボランティアをしました。学生が自分達だけでなく、小学校の先生・子どもの親・大学の教授なども巻き込んで活動している姿を見て、「社会やコミュニティを良くするのはその地域の当事者である」ということに気づきました。そして、「コミュニティが力を発揮するお手伝いができる様な国際協力」をしたいと思うようになったところで出会ったのがソムニードでした。

現地駐在のすすめ(生活編)

駐在員のオフィスワーク(ネパール)、フィールドワーク(インド)を現地の写真をスライドで見せながら紹介しました。
P1170275
ネパール事務所:一軒家の2階部分にプレハブを新たに建設して研修ホールにしています。
3
研修ホール内の様子:研修に重きをおいているソムニードには不可欠なスペース。
6
オフィスのある一部屋:民家なので、とてもアットホームな職場です。
7
水を確保するのが至難の業であるネパールでは、雨水や給水車からの水をタンクに貯めて使います。
5
ネパール事務所のスタッフ
9
南インドのアーンドラ・プラデシュ州の都市部にあるインド事務所の本部。2階部分を事務所として借りています。
1
インド事務所のスタッフ
11
農村部の事務所兼研修センターです。ここではお米もつくっています。
4
研修センターのスタッフ
6-
警備員さんと番犬。賢い番犬のおかげでオフィスの安全面もバッチリ。
7
フィールドに行く途中の道のり。研修センターを出発して、近いところでは車で40分、遠い所で1時間半くらいかけて、ときには更に車を降りて30分くらい歩いて村に向かいます。村での研修は朝の9時半や10時スタートなので、朝早く研修センターを出発します。
8
研修の様子。研修センターに村人達が来るよりも、スタッフが村に赴く方が多い。最近、村人の中から指導員が誕生したので、スタッフは指導員達の様子を見守る役に回っています。
9

「先ほどから『研修』という言葉がよく出てきますが、研修って何をするんですか?」
前川:研修の中では、村人をつっついていって、考えてもらう、そして自分で答えを見つけて実践していってもらう、という事をしています。
例えば、村人達がこれからの村づくりとして考えていることの一つに、農業があります。農薬をあまり使わず、水や土を守りつつ農業をして、それで食べていけるようにする。そして、そういった村を後世に伝えていくためには何をすべきか、という事をずっと考えています。その中で、農薬の代わりに有機堆肥として牛の糞を使いたいから牛を増やそうって話になった時に、スタッフは「牛って何食べるの?」「新しく買う牛が食べる餌はあるの?」という問いかけをしていきます。そうやって、家畜を殖やすために具体的に何をすべきかを「考える方法」を、ソムニードから「研修」というかたちで村人に提供しています。

「仕事以外のことでは、インドで生活していて困った事や嫌な事、また逆に楽しい事などありますか?」
實方:インドに暮らしてると色々大変なこともあるんですよね。お釣りが飴で返ってきてびっくりしたりとか・・・。でも逆に、インド人の自分を曲げないところは好きです。意志の強いところや、絶対諦めないところも。この人はこういう人ってはっきりしているから、逆にふわふわしているような人より話しやすいと感じますね。

現地駐在のすすめ(仕事編)

ソムニードのプロジェクトの取り組み方、現地で活動するにあたってのやりがい、活動する上で大事にしている事を、民間企業との違いを感じる時や自分の成長を感じる時のエピソードを通して紹介しました。

「池崎さんはソムニードで働く前に、民間企業で働いた経験があるそうですが、民間企業での経験から今の仕事に役に立った事はありますか?」
池崎:新卒として、ノルマや他の試練も沢山ある職場でがむしゃらに頑張って、それを経験したからこそ、次どんなにしんどい事がきても乗り越えられそうだという自信や精神的なタフさは得たと思っています。

「逆に、民間企業とNGOの仕事で違いを感じる時はいつですか?」
池崎:大きく2つあります。1つ目は、民間で営業をしていた時、自分の努力が給与に反映される以外に、どう誰に貢献しているのか見え辛かったことです。ソムニードで働いていると、それがすごくよく分かる。仕事でイライラしたりしんどい事が沢山あっても、それが誰かの役に立っている、社会のためになっている、と感じられます。食べていくためだけじゃなく、それ以上の達成感や充実感も得られます。
2つ目は、ソムニードの活動の方法論を編み出した代表が前にいることで、自分も頑張ればプロフェッショナルになれるという可能性が見えることです。民間企業にもスーパー営業マンはいましたが、「何のために貢献しているのか分からない」というもやもやを抱えながら営業のプロを目指す事はできなかったでしょう。ソムニードだと、目指すものと何に貢献しているかが両方見えていて、そこが、私にとっての民間企業との大きな違いです。
P1170280
「前川さんの場合はどうでしょうか?学生時代にインドでNGOの活動現場を見た時は、『こういう仕事は嫌だな』と思ったそうですが、その活動とソムニードの違いはありますか?」
前川:大学院の時に見たNGOの活動とソムニードとで一番大きく違う事は、そのNGOは1から10まで全部スタッフがしていて、ソムニードはそうじゃないという事です。彼らの想いには共感できましたが、「えー、それ全部スタッフがやるの?嫌だな」と感じました。
ソムニードでは、同じ様な活動でも、その地域に暮らす人達が自分でやっていくためのお手伝いです。村の中で引っ張っていける若者リーダーを発掘して、彼らが力を発揮できるように伸ばしていくという役割を担っています。今では村の中から次の人を育てていける指導員が出てきていて、私達はもう彼らに任せればいい。ここからまた次の村に活動が広がっていくという波及効果を見ることができる、それがソムニードに関わっていて得る喜びです。

その様に村人がどんどんリーダーになっていくということの根底にあるのが、ソムニードの方法論なのでしょうか?」
前川:私達は、村人だろうと、スラムの人だろうと、みんなそれぞれ可能性を秘めていると信じています。読み書きや学歴に関係なく、誰でも能力を発揮できる場を与えられさえすれば、能力を発揮できるという信念のもと、それを実現するためにはどうすべきかというところで、『途上国の人々との話し方』に書いてあるような方法論を用いて活動しています。

「池崎さんは、バングラディシュで『途上国の人々との話し方』にある質問方法を試み、当時はうまく行かなかったそうですが、ソムニードに入って以降、ご自身のインタビュー術の成長を感じたり、ネパールでうまくいったりしたという事はありますか?」
池崎:私もまだ修行の身で、先が長いので、正直言うとまだありません。ただ、ソムニードに入って、「自分はまだ何もできない」という認識は深まりました。直に和田(※ソムニード代表・ネパール駐在員)のする研修を見て「どのような質問をすると真実が見えてくるか」を学んでいますが、自分ではなかなかそれができない。それは場を踏み、知識を増やして自分の引き出しを作っていくしかありません。自分ができない現状を理解し、できるように頑張っています。

「前川さんから、先輩として何かアドバイスはありますか?前川さんは成長できたと感じる瞬間はありますか?」
前川:「待つ」タイミングが分かるようになりました。「今これを村の人たちに言うべきじゃない」「今この研修はするべきじゃない」など、つまりは「これは私達が言うんじゃなくって、村の人達から言ってくるのを(待った方がいい)」ということです。
1つの例として、村人たちが、村の指導員が「なかなか研修をしてくれない」とソムニードスタッフに苦情を申し入れた事がありました。私達が指導員に「早く研修してあげて」と指示もできますが、それだと指導員は「ソムニードに言われたから研修しないとな」と考えてしまいます。そこで私達は、研修を受けたい村人達に対して「私達ではなく、研修をしてくれる指導員に直接言いなさい」と伝えました。
村人も最初は戸惑っていましたが、最終的には直接頼むことにしました。すると指導員も村人の切実さを感じるので、ソムニードから言われるよりも「これだけ求められているんだからやらないと」という意識が高まるんですね。1ヶ月後くらいには指導員にエンジンがかかって、何とか予定を調整して研修をしていました。その時は、待って良かったと思いました。

P1170258
【この日はスタッフやインターン勢揃い。チャイ作りが得意なスタッフは誰でしょう?】

Q&A:質疑応答(一部抜粋)

【質疑応答①:待つタイミング】

「前川さんの『待つタイミング』のお話しにはとても共感しました。村人が自分からやろうと思えるきっかけづくりについてより詳しくお伺いしたいです」
前川:ソムニードは基本的に、最初から相手が言ったことを尊重するというスタンスでいます。
例えば、村人から研修の要請があったので日時と参加者を決め、その日に村に赴くと、様々な理由で村人が集まっていない事があります。その時、村人はスタッフに申し訳ないからと、少ない人数で研修をしようとしたり、頭数合わせに適当な人達を集めてきたりするんです。そこでソムニードはどうするか。「あなたたちが研修の日時と参加者を決めたんですよね。今日その人達が来れないのなら私達は帰ります。」と、帰っちゃうんです。「やると言った事を自分達がやるまで、こちらは動かない」という姿勢を示せば、彼らは「自分達の発言にも責任持たないと」と気づきます。
後は、彼らに言われた日時通りに村に行くこと、つまり約束を守るということですね。それから、彼らが少しずつでも成長したら、褒めてモチベーションを上げるということもしています。 

【質疑応答②:方法論の実践、成功・失敗例】

「『途上国の人々との話し方』の中で説明されている手法を使って実際にうまくいったエピソードを教えてください。」
前川:観察と一緒に事実質問をしていくことが大事なのですが、例えば先日この様なことがありました。
村人が田んぼの上流に溜池をつくりたいと言い出しました。でもよく見ると、下流に一つ水の溜まった田んぼがある。村人は「これは雨水が溜まったものだ」と言うんですが、周りの田んぼはからからでした。そこで私が「雨が降ったのはいつ?」「いつからいつまで降った?」「田んぼの水はいつからある?」などと聞いていくと、「田んぼの水は雨が降る前からあった」という答えが出てきたので、結論として、ここの田んぼの水は雨水や溜池とは関係なく、土の中から染み出ているということが分かりました。この様な土地では大掛かりな溜池は必要ありません。結果、「今またここに新しい溜池をつくる必要はないね」という話になりました。

【質疑応答③:プロジェクトの失敗例、ソムニードの方法論に出会う前】

「インドやネパールで活動をする上で、ソムニードがよかれと思ってしたことが、文化の違いによって現地の方に受け入れられなかった事はありますか?」
前川:インドでもネパールでも、そういった意味合いの失敗例はありません。相手の文化や習慣を尊重して活動するというのが基本ですので、文化や習慣の違いが原因で活動がうまくいかなかったり、違う方向にいってしまったりという事は発生していません。『途上国の人々との話し方』にあるような手法に辿りつく前に、独自のやり方で取り組んで失敗した例は昔にありますが、ご質問にあったような失敗例というのは私の知る限りありません。

P1170263
【参加者からも質問をたくさんいただきました!】

スピーカーから一言

池崎:HP上で、プロジェクトの内容や、ソムニードスタッフの日々の葛藤や失敗談等も文章にして発信しておりますので、是非そちらも読んで頂けると嬉しいです。

實方:私も今2年半インドにいて、こんな風に人と集まる機会ってなかなかありません。だから、今回短い日本滞在中に、このようにみなさんとお会いすることができて嬉しいです。またこういう機会があれば、よろしくお願いします。それと、インドに来てください、ぜひ!

前川:今回3人でお話しさせて頂きまして、この三者三様のバックグラウンドであったりとか、国際協力に興味を持つきっかけであったりとか、ネパール・インドでの活動例の話が、皆さんのヒントや助けになれば嬉しいです。今回は最後に質問をして頂く中で、皆さんの経験をシェアして頂きましたが、ソムニードでは研修などもしておりますので、そういう場で、今度は私達から一方的に喋るのではなく、皆さんの経験も共有してもらいながら、お互いの力を伸ばしあっていけたらいいなと思います。

※最後まで読んで頂いてありがとうございます。