でこぼこ通信第26号「ゴミに向き合う第一歩」後編(エコレンジャー編)2017年3月15日発行

In 8 活動の記録・報告, 801プロジェクト通信 ネパール「バグマティ川再生 でこぼこ通信」 by master

さて、スタッフ編に引き続き、今回はエコレンジャー編。エコレジャーとして活動を始めた村のオバチャンたちにフォーカスを充てたい。

 

目次

1.エコレンジャーによる研修、はじまる
2.ウッタルバヒニ・チームの場合
3.ゴミに向き合う第一歩は

 

1.エコレンジャーによる研修、はじまる

エコレンジャー(※1)として活動することになったオバチャンたちは、研修を始める前に、居住地域に沿って4つのグループをつくった。
そして、自分たちで「何回」「どれだけの人にトレーニングをおこなうか」といったグループごとの目標を設定した。その後、研修実施にあたってのルールや、どんな内容を伝えるのかを決めていき、共通の研修マニュアルを作り上げた。

こうして始まったエコレンジャーによる研修。
家事や子どものお迎え、そのほか村の自治会や女性グループの活動など忙しい合間をぬい、ガツガツと研修を進めていった。

数ヶ月に一度はラマラジュさんにもインドから来てもらい、ミーティングを行い、活動をふりかえった。限られた時間ではあるが、研修の映像をみんなで見て振り返る時間もとった。私(※2)は、どうも自分が話している映像は恥ずかしくて見ていられないのだが、オバチャンたちはそんなこともなく、「●●さんのココが良かった!マネできる」や「もうちょっとハッキリ話した方がいいんじゃない?」はたまた「この研修は概念的なことばっかりでよくわからんわ~」などアレコレ指摘しあっていた。
また、プラスチックごみを減らそう!というスローガンのもと、普段の買い物に使えるエコバッグを作成し、研修の参加者に配布していった。


目次に戻る

 

2.ウッタルバヒニ・チームの場合

4つのチームの一つ、ウッタルバヒニ・チーム。ウッタルバヒニ(地名)に住む女性を中心とした13人のグループである。
このチームでは、自分の得意分野や経験に応じて、役割分担をしていた。

たとえば、過去に各地で裁縫の研修をして回ったことのあるBさんが、自身のネットワークを活かして参加者に呼び掛け、研修をセッティングしていった。そして、人前で話すことに比較的慣れているTさんが、先頭を切って研修講師を務めた。手作業が得意なSさんは、プラスチック包装紙を活用したクラフト(小物入れやマット)を作り、ゴミにしない一例として紹介するようになった。(※こうしたプラスチック包装紙を活用した小物づくりの研修も行われているとのこと。ネパールのお土産のひとつとして、某観光ガイドブックでも紹介されている)

その後、徐々に他のメンバーも参加者の前で話し始めるようになったし、初めて研修をおこなうメンバーがいれば、研修経験のあるメンバーがサポートに入り、休憩時間やグループワークの時間に打合せたりもしていた。

ゴミの分別方法をみせるためのサンプルゴミもどんどんアップデートされ、はじめはリサイクル表示あり/なしプラスチックゴミの2種類だったのが、紙ごみ、生ゴミなどどんどんバリエーション豊かになっていった。

最初は、率直に言ってオバチャンたちの力を信じていなかったように見えた、ディベンドラやウジャール(※3)たち。
「今日の研修は、経験談や具体的な内容が盛りだくさんで、面白かった」
「彼女たちがこんなに参加者の注意を引き付けて話せるとは思ってなかった」
と驚いていたので(彼らがこんなふうにオバチャンたちを褒めることは珍しい)、私はオバチャンの代わりに得意顔で「そうでしょー」と答えておいた。

彼女たち自身も、「はじめは人前で話すなんて、とても緊張したし、なにより参加者を集めるのに苦労した。でも、何回か実践していくうちに自分の言葉で話せるようになったわ。それに、一度研修をしてみると、“とても面白い内容だから、今回の参加者だけが聞くのはモッタイナイ!他の住民にも研修をしてほしい”って研修の声がかかるようになってきたのよ。」と語ってくれた。
目次に戻る

 

3.ゴミに向き合う第一歩は

彼女たちの研修を見ていて、印象に残った一言がある。
「ゴミを減らすこと、発生させないこと。これがゴミ問題に向き合うはじめの一歩です」
それは、エコレンジャー研修で和田さんが強調して伝えていたことの一つ、だと私は思っている。
3つのR(Reduce、Reuse、Recycle)は世間でよく言われている環境を守るためのキーワードであるが、エコレンジャー養成研修で、和田さんは、もう一つのR=Refuseを加えた。ゴミを作り出さないことでも言おうか。例えば、買い物時にエコバッグを持参し、プラスチック袋をもらわないようにする。これもRefuseだ。

私たちが買い物に行けば、手に取る商品はプラスチックで丁寧に包装されていて、レジではプラスチック袋がもらえる(最近ではバッグ持参を推奨するお店も増えてきたように思うが)。それは日本だけでなく、程度の差はあれ、ここネパールでも同じ。
2年前、訪日プログラム(※第15号「ネパール政府の本気 Vs.ネパール市民の本気」 ~まだまだ これから~ 2014年12月7日)に参加した先生たちは、「日本はキレイ!道にゴミ一つ落ちていない。どうにかネパールでも同じことができないか。」と口々に言っていたが、日本とネパールの違いなんて、実は些細なことかもしれない。日本ではゴミ処理の技術が発達していて、ゴミを収集日に出してしまえば、すぐにゴミは私たちの目には写らなくなる。でも、そんなものがないネパールでは、目に見えてゴミが溢れかえってしまっているだけなのではないだろうか。私も、ネパールに来て初めて「自分がこんなにゴミを出しているのか」と気づかされた。

さて、研修を見ていて、必ずと言っていいほど参加者から出るコメントがある。それは、
「ゴミを放置したり、プラスチックを燃やした時の悪影響についてはわかった。
せやけど、ウチには回収車も来おへんし、最近よそから引っ越してきたからゴミをしばらくの間保管しておく土地もあらへん。どないしたらいいん?」というものだ。それは上記のウッタルバヒニ・チームの研修でも同じだった。
「たとえば、このリサイクルマークがついているペットボトル。
この間、グループで集めて、業者に回収してもらったら、1キロ〇ルピーで売れたんですよ。」
「みなさん、買い物に行くときに何を持って行きますか?携帯とお財布?
もう習慣になっていますよね。(頷く参加者)
で、今日からはもう一つ、買い物バッグを加えましょうよ。
お買い物に行くとトマト、じゃがいも、ニンニク…買うたびにビニール袋にいれられますよね。でも、大き目の買い物バッグを持って行って「これに入れて」って言って入れてもらうだけ。これだけでも家にたまるプラスチックを減らすことはできますよ。私もほら、持ってきています。」

「ゴミ回収システムがないから仕方ない」「だって政府が動かないから」と言うだけでは、何も変わらない。ゴミを減らすことは、ささやかかもしれないが、一人ひとりがすぐに取り組める現実的な対応策なのだ。エコレンジャーのオバチャンたちは、自分で実践しつつ、同じようにゴミ問題に取り組む人を増やしていこうとしている。

一方で、個人で/家庭でできることには限界がある。
家庭で分別していても、回収されるときに全部ごちゃまぜに回収されたらどうなる?
エコバッグで買い物をしても、お店は相変わらず他のお客さんにプラスチックバッグを渡していたら?
エコレンジャーたちによる研修は、「一人ひとりの実践」を増やしていくための活動。次の一歩は自分たちでできないことを、誰とやっていくか?を考えていくことである。

とはいえ、今は「あっちのチームは何回やってんの?え?それやったらウチのチームが一番回数多いやん(ニヤリ)」などと競い合いながら 「一人ひとり」を増やしていくべく、エコレンジャーたちの活動は続いている。
目次に戻る

 

注意書き

※1 エコレンジャー養成研修を終えた村のオバチャン、オッチャンたち。この研修はトヨタ環境活動助成プログラムの助成よって実施している。

※2 私=筆者=ムラのミライスタッフ田中十紀恵。今年も春の訪れとともに、ホーリー祭りがやってきた。色粉や水をかけあう、とてもカラフルな祭りである。そんなホーリー祭では、子どもが水鉄砲や水風船を投げ合うのだが、水風船の残骸(プラスチック)があちこちに散乱してしまうので、どうにかならないかと考える今日この頃。

※3 ディベンドラ、ウジャール=ソムニード・ネパールのスタッフ
目次に戻る