第18号 「久々の内部研修で脳みそを使う」2015年6月17日発行

In 801プロジェクト通信 ネパール「バグマティ川再生 でこぼこ通信」 by master


 

目次

1.ネパール地震のその後
2.ムラのミライ流 ファシリテーション研修
3.プランとアクション・プランの違いってなに?
4.質問攻めの研修で頭をつかう
5.おわりに

1. ネパール地震のその後

2015年4月25日(土)。
ひと月半毎にやってくる通信〆切に一人奮闘していた土曜日のお昼。
マグニチュード7.8の巨大地震が、ネパールに住む私たちを襲った。
被害は甚大で、1ヶ月以上経った今8000人以上の犠牲者を出したと報道されている。
そして5月12日(火)。
本震と変わらぬほど大きな揺れを感じた地震が再びネパール人と私たちを襲った。
本震で大きな被害を受けた郊外への緊急支援を一旦終了し、一休みしてからそろそろ本業の事業に戻れそうだといっていた矢先のことである。5月12日の巨大な揺れが私たちに与えた精神的ダメージは想像以上に大きかった。先の見えない、「終わり」を知りえない余震に対する恐怖と不安、そしてゆっくり眠れないことや心配事からくる疲れ。

5月末には岐阜県・高山での総会が予定されていたこともあり、予定を少し早めた5月18日。私は日本へ帰国することになった。帰国から3週間経った今、ネパール人スタッフや友人に連絡をすると、今のところそれほど大きな地震はなく、徐々にではるが、カトマンズ市内は通常に戻りつつあるようだ。もちろん、地震が残した爪痕は深く大きい。カトマンズ盆地から離れた山間部の家々は軒並み倒壊し、訪れる雨季対策のシェルター設置に忙しい。今までの通信に登場してきたネパール人は皆元気にやっており、無理しない程度に緊急支援を行っている
地震発生から日々の生活の立て直しと緊急支援に忙しくしており、私たちの事業活動はそれほど大きな進展はみせていない。これからスタッフとその家族、そして事業関係者の安全確保を第一に、気持ちを前に向けて、活動を再開していくところである。

ネパール地震の報道を受けて、緊急支援をしてくださった沢山の方々、ソーシャル媒体で被災者を気遣うコメントやネパールの状況を拡散してくださった多くの方に支えられ、感謝の気持ちでいっぱいである。

本来は4月28日(火)に発信する予定であった本通信が上記の理由で遅れてしまった。改めて執筆を再開し、今回読者の皆様にお届けする。

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2. ムラのミライ流 ファシリテーション研修

Plan and Action Plan
2015年4月7日。
この日ムラのミライのネパール事務所2階の研修ホールに、事務所スタッフが集まっていた。いつもはムラのおっちゃん・おばちゃん、そして地元の先生方へ研修を行っているのだが、この日は和田からスタッフへの内部研修が行われた。振り返れば、スタッフ研修が行われたのは2012年の8月以来、つまり2年半ぶりだ 。(その時私はまだネパール事務所の一員ではなかった。)研修という形で和田から「対話型ファシリテーション/メタ・ファシリテーション」を学ぶことは今回初めてであったし、私のみならず、他のネパール人スタッフにとっても「ムラのミライ流ファシリテーション」を座学で学ぶのは初めて。研修は「事実質問」「プランとアクション・プラン」「モニタリング・評価」のテーマに沿って行われたのだが、今回は「プランとアクション・プラン」の研修について一部報告することにする。

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3. プランとアクション・プランの違いってなに?

「プラン」は日本語でいう「計画」である。では「アクション・プラン」とはなにか。この言葉については、でこぼこ通信第13号「建設予算の開示無くして何が住民主体プロジェクト?」 で少しご紹介した。同通信でお伝えしたアクション・プランとは、排水処理施設建設に必要な行動計画表であり、全ての細かな作業の詳細と予算が記載された一覧表のこと。結局、大半のネパール人スタッフがこのアクション・プランに興味を示さず、私やエンジニアが主となって更新作業を行うことになって終わったのだ。 ただ、この経験を経たお陰で、ネパール人スタッフにとって「アクション・プラン」は聞きなれた言葉となっていた。「聞きなれた言葉」になっただけであって、「アクション・プラン」がつまり何かということまで十分に理解したものはいなかった。

和田 「計画(a plan)とは何かね?」
と私たちスタッフに尋ねる和田。

スマン 「未来における一連の行動・・?」
ウジャール「目的ある未来の行動?」
私 「未来に関する行動・・?」
ディベンドラ「何かを得るためのアイディア?」

もろもろ参加者から声があがる。

和田 「計画とは何か?」ともう一度聞く。
和田 「計画とは何かということを、10歳の子供でも80歳のおばあちゃんでもわかるように説明できるひとは?」

参加者「・・・・・」 シーン。

和田 「私はマンゴーを食べたいです」「この文章は、計画といえるかね?」
参加者 「いいえ。」
和田 「私は今日夕方までにマンゴーを食べたいです。」「夕方・明日・5月でもいい」
和田 「私はマンゴーを食べたい」という希望に時間をいれるとどうなるだろうか。」
和田 「例えば、私は日本に行きたい」と言ったとしよう。そして、「私は10月に日本に行きたい」と、10月という「時間」の要素を入れてみる。そうするとどうだろうか?」

和田 「ただ単にマンゴーを食べたい、或は日本に行きたいといっていても、それだけでは希望は実現しない。「いつ」という時間の要素をいれて初めて「希望」が「計画」になる。」

マンゴー

和田 「それでは次に、アクション・プランはどうだろう?」
(「アクション・プラン」はDEWATS建設の時に作成しているので、なんとなくは知っているもんねーという顔のスタッフ。でも、問には答えられない。)
参加者 「・・・・・」
スマン 「時系列に並べた詳細計画の一覧表」
参加者 「・・・・」
(ん?何今のスマンの発言?ちょっと小難しいよね?という顔)

和田 「アクション・プランとは何か?」
マニーク「トゥ・ドゥ・リスト! (To do list)」
和田 「そう!それはいい表現だ。これをする、あれをする、というように、やるべきことの一覧表が、To do list。」「計画を実現するために、トゥ・ドゥ・リスト(To do list)を作る。」
和田 「アクション・プランとは、計画を実現させるために必要な行動を意味する。そしてこれら必要な行動には、「時間」の要素が入っていなければならない。さもなくば、いつまでたっても計画は進まないだろ?」

和田 「では試しに練習をやってみよう。今は4月だから、この9月にネパールから日本へ旅行すると仮定して、その旅行を実現させるためのトゥ・ドゥ・リスト(To do list)を作ってみなさい。」

ディベンドラとウジャール、プリティにスマン、そしてマニークの5人が、手始めに空港から出発する前の段階(例えばパスポートやビザの取得など)でトゥ・ドゥ・リスト(To do list)を作ってみることになった。

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4. 質問攻めの研修で頭をつかう

Participants

10分後。
彼らから出てきたトゥ・ドゥ・リスト(To do list)は以下のような感じだった。

1)日本大使館への問い合わせ (4月15日まで)
2)ビザ申請用紙を取得 (5月1日まで)
3)ビザ申請に必要な書類を揃える(5月15日まで)
写真
パスポート/パスポートの写
航空券の予約番号
日本からの必要書類
収入証明書のコピー
4)ビザ申請 (5月20日まで)
5)ビザ申請費の支払い
6)ビザ申請にかかるインタビュー日程を調べる
7)ビザ申請インタビュー (5月30日まで)
8)ビザ取得、パスポート回収 (6月15日まで)

ざっとこんな感じだ。
2014年の10月に、ディベンドラとウジャールは事業の一環で研修のために日本を訪れている。従って、日本のビザ申請にかかる手続きはなんとなく頭に入っていた。

これをみた和田のコメントは何であったか、皆さんはお気づきだろうか?

和田 「期日(時間の要素)が抜けているものがある。」
和田 「ところで、このトゥ・ドゥ・リスト(To do list)から、アクション・プランにするにはどうしたらいいかね。」

To do List

マニーク「誰が何をするかという要素をいれる。」
和田 「そう。誰が何をするかということを誰が指示(決める)のか。ということだ。つまり言い換えると何を意味しているかね?」
参加者一同  「・・・・」
和田 「責任 (Responsibility)」
和田 「これこそがアクション・プランに必要なことだ」
和田 「その他には何が必要かな?」
ディベンドラ「誰が、何を、いつ という要素です」
和田 「ほかには?」
マニーク「予算です」
和田 「そうだ。ビザ申請に必要な写真を取る際、一人分のコピーなら特に大した額にもならない。でも例えばそれが複数人、10人であった場合はどうだね?コストも増えるだろう。」

和田 「ほかに、「どこ」という場所の要素はどうだろう?」
和田 「写真を撮るーどこで?」
「パスポートのコピーをとるーどこで?」
「旅行代理店に行く ―どこの?」
「ビザ申請に必要な日本からの書類を揃えるーどこで?どうやって?」

ここで読者の皆さんは、「トゥ・ドゥ・リスト(To do list)」と「アクション・プラン」の違いが何かおわかりだろか?「トゥ・ドゥ・リスト(To do list)」にはなくて「アクション・プラン」にはあるもの。その目的の違いを考えてみたい。「トゥ・ドゥ・リスト(To do list)」にはなぜ「誰・どこで・何を」といった要素をいれずに、「アクション・プラン」には盛り込むのかということ。

「トゥ・ドゥ・リスト(To do list)」は、自分の記憶を手助けするためにつくる。つまり、トゥ・ドゥ・リスト(To do list)は、自分以外の誰かにみせる必要はないということで極めて個人的。それに比べて、アクション・プランはチームワークである。

チームワークである以上、全てのメンバーが、誰が何をいつまでにするかということを把握していないといけない。例えばメンバーの一人が体調不良を理由に長期間休んでしまったら、その人の担当部分はどうなるだろう。何をしなければいけないかということを休んだ担当者しか知らなければ、ほかの人による穴埋めは期待できない。つまり「アクション・プラン」には「誰が何をどこでいつまでに、そしていくらかかるのか」という要素がなければいけない。

トゥ・ドゥ・リスト(To do list)は自分のためにつくるもので
アクション・プランは、活動に参加する人全員のためにつくるもの。

それが大きな違いであるということを、今日理解した参加者であった。
言われればなるほどと思うものの、考えたことがなければ自分で考えることは難しい。

この時の私はといえば、2014年の7月から8月、デシェ村の排水処理施設建設のために苦労して作ったアクション・プランのことを思い出していた。

「誰もこのアクション・プランに興味をもっていなくて、結局ディベンドラもほとんど見なかったし、ウジャールも興味はゼロ。マニークとラングナートは私にいわれてしぶしぶ助けてくれたけど、基本的には細かい作業は全部私がやる羽目になって、散々な目にあったな~」

ということだった。
この、誰も興味を示さずに、基本的に私とラングナートが黙々と作ったアクション・プラン。この苦い経験(私にとって)があったからこそ、今回の「プランとアクション・プランの研修」がより大きな効果を発揮したと感じる。何も経験がない時に、「プランとアクション・プラン」の研修をうけていたところで、多分彼らにはそれほど響かなかったのではないだろうかと思うし、今なら少なくとも、一緒に苦しみを分かち合った(というのはやや大げさだが)、マニークとラングナートにはその意義が伝わっていると思う。それで十分だ。
ディベンドラとウジャール、そのほかのスタッフへどれほど伝わったかということは、今後わかるだろう。しんどかった経験が後に活きてくる経験をした。

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5. おわりに

このあと、もう一度身近な題材をテーマに(モモ(ネパールの蒸し餃子)パーティを開く)アクション・プランづくりの練習を行った。直前に学んだ、「誰が何をいつどこでいくらかかるのか」という基本的要素がしっかり盛り込まれたアクション・プランにはなったが、行動を細分化するという過程で詰めが甘く、不完全なアクション・プランが出来上がった。
何度も「はい、やり直し~」といわれ、皆であれやこれやいいながら、ムラの人たちに「アクション・プラン、アクション・プラン」といっていた本当の意味を頭で考える訓練を行った。

次号では、デシェ村事業のフォローアップや、環境教育の先生たちの活動など、本来の事業の方を中心に通信をお届けしたいと考えている。
乞うご期待!

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注意書き

詳しくは、下記参照ください。
番外編 「ネパール地震」2015年5月14日