第1号 「まずお前たちの『頭の枠組み』を変えてみろ」 2012年9月25日発行

In 801プロジェクト通信 ネパール「バグマティ川再生 でこぼこ通信」 by master

 

目次

1. はじめに
2. いよいよプロジェクト、開始でごぜえます
3. 「ハチ公、クマ公、ちょっと来いや。まず、身内の訓練だ」
4. お経の読めない門前の小僧
5. 「まず、お前たちの心持ち(マインドセット)を変えるんだよ」

Himalaya view KTM

 

1. はじめに

2012年7月はじめに正式に開始となった本事業、

「環境教育と住民主体の環境保全活動を通した地域コミュニティーの強化」

(以下、バグマティ・プロジェクト)は、JICA(独立行政法人国際協力機構)との協働プロジェクトとして、ネパールの首都、カトマンズを舞台に、4年間の予定で活動します。

バグマティ・プロジェクトでは、カトマンズ東北部の新興住宅街を舞台に、どぶ川のようになってしまった『バグマティ川 』を、地域の人たちと一緒に、どうしたらよみがえらせることができるかを探っていきます 。
この地域の住民は、民族的にも社会経済的にもばらばらで、「地元としての一体感」がまだまったくありません。こうした地域で、「地元の人たちが一体となって共通の課題に立ち向かう」ためには、どうしたらよいのでしょうか。
ソムニード(現ムラのミライ)が注目しているのは「学校」です。学校には、さまざまな背景を持つ子どもたちが集まり、一緒に勉強しています。
学校の「環境教育」の時間を利用して、子どもたちが、そして先生たちが、地元の環境のことをもっと考えられるように働きかけたい。子どもたちが両親や家族、さらには広く地域の人たちと一緒に、バグマティ川と地域の環境を考え、行動を起こしていく手伝いをしたい。

それが、このプロジェクトです。

Bagmati waste

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2. いよいよプロジェクト、開始でごぜえます

バグマティ・プロジェクトは、生まれも育ちも事業地の真っただ中のクマ公 が、「俺っちがガキの頃には、水も澄んでいて泳いだりもぐったり、魚とりしたりしてたあのバグマティ川が、たかだか20年かそこらの間にどぶ川みたいになっちまって・・・俺ぁ悲しくてならねえんだ。なんとかしましょうぜ、親分!」と親分 を焚きつけたところから始まりました。
もう何年も前のことです。

「おう、クマ公、おめえにしてはいいアイディアだな。いっちょやってみるか」と親分もその気になったはいいものの、そこからが大変でございました。
ネパールでは1996年から2006年まで、10年間にわたって内戦状態が続き、本格的にプロジェクトの準備にかかるまでに、何年も待たなければなりませんでした。ようやく政情や社会も落ち着いてきた2010年から、当時まだインドにいた親分の指示を受けながら、クマ公がカトマンズで一人走り回り、地域の住民の構成や問題、ゴミや下水の処理をしているはずの地元の行政や民間業者の状況などを調査。
そうこうするうちに、だんだん、「地元の学校を活動の入り口にするか」ということになって、JICAさんに「こんなプロジェクト、どうでしょう」と相談したのが昨年(2011年)のこと。

「なるほど、うん、いいんじゃないですかねえ」というお返事をいただいて、11月には親分が本格的にカトマンズ入り。そして、無宿(はい、無職でした)でうろうろしていたハチ公 を、「おめえもいつまでもフラフラしてねえで、俺んところでまともに仕事しろや」と引っ張ってきて、今年から「ソムニード・ネパール事務所」が本格的に始動することに。

で、すぐプロジェクト開始かと思いきや。始められるようになったのは、実はほぼ半年経ってからでございました。
・・・遊んでいたわけではありませんので。
ネパールでは、外国のNGOが年間の予算10万ドル以上の事業をするときには、ネパール政府のお許しが要ります。
このお許し、「プロジェクト・アグリーメント(PA)」と、ご大層な名前が付いていますが、どうしてどうして、簡単にはいただけません。
クマ公が大汗をかく次第となりました。窓口となっているお役所に分厚い書類を提出したが、待てど暮らせどウンともスンとも言ってこない。どういうこっちゃ、とクマ公が見に行くと、書類はお役人の机の上に乗ったまま。クマ公、お役人を役所中探し回り、捕まえて机まで連れてきて、書類を差しだし「ここにご署名をおねげえしやす」・・・というのを担当のお役人ごとに繰り返すんですねえ。
で、やっとこの人の署名さえもらえば、というお偉いさんの机まで書類がまわったところ、政府内のごたごたのために、そのお偉いさんがスト(?)を始め、2週間も3週間も役所に出勤してこない羽目に陥りました。
律儀なクマ公が日参しても、署名する人がいないのではどうしようもありません。
てなわけで、結局半年近く待たされましたが、5月の後半からようやくお役所が重い腰を上げ、6月に入ってどうにかお許しをいただくことに。
JICAさんとの契約も無事すんで、7月から正式にプロジェクト開始と相成りました。

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3. 「ハチ公、クマ公、ちょっと来いや。まず、身内の訓練だ」

プロジェクトが始まって、親分が最初に始めたのが、ハチ公とクマ公を叩き直すこと。
というのも、ハチ公もクマ公も、それなりにこのみち(「国際協力」のお仕事)で経験を積んではきたものの、ソムニードのお家芸である
「人をいつの間にかその気にさせる」技、
「あぁ、俺っちはこいつがやりたかったんだと、自分で何かをやり始める」技
(ソムニード的に申しますと、メタファシリテーション、または対話型ファシリテーションと申します)については、残念ながらまだまだ素人。
親分としては、こいつらを早いところ何とかしないと、プロジェクトの進めようがありません。
親分「よし、ハチ公、クマ公、俺たちは、まずは学校の『環境教育』の先生たちに、バグマティ川や地元の環境のことを子どもに教えようぜ、と働きかけようと思ってるよな?で、そのために先生たちを研修するとしたら、お前たちなら、まず何をやるよ?」
ハチ公・クマ公「へっ・・・」「ええと・・・あの・・・」
親分「何おろおろしてるんだ。なんでもいいから言ってみろ」
ハチ公・クマ公「えーと・・・地域環境についての・・・」
親分「おい、『地域環境』っていったい何のことだ?お前ら、『地域環境』が何かって、10歳の子供や読み書きできない80歳のばあちゃんに説明できるか?」
ハチ公・クマ公「うっ・・・」
ちなみにこの、
「10歳の子供や80歳のばあちゃんでも分かるように説明できるか」
というのは、ソムニードの基本的な考え方の一つなんですねぇ。

あたしらのおります「国際協力」業界では、やれ「参加型」だの「住民主体」だの、あるいは「貧困層」の「貧困削減」だの「インクルーシブな開発」だのと、きらきらしい言葉があふれていますが、じゃあこういう言葉を使って、あたしらはいったい何を言いたいのか、やりたいのか。改めて聞かれてみると、誰も肝心の「住民」の方々には、はっきりと答えることができません。
親分曰く。
「村の10歳の子供や、80歳の字が読めないばあちゃんが納得できる言葉で説明できなければ、それはお前自身が、きちんと分かってねえってことなんだよ」。
逆に、子供やおばあちゃんが「ああ、それそれ、そういうことね、わかるわかる」という言葉で話すことができれば、それが「業界用語」で何と言うかはどうでもよくて、地域の人たちと思いを同じくして、「じゃあこれから一緒に何をしていこうか」という相談を進めることができる、ということだってわけなんです。
親分「お前らに宿題だ。『環境』『評価』『モニタリング』『マネジメント』・・・こいつらを、子供やばあちゃんにわかる言葉で言い直せるようにしておけよ」
ハチ公・クマ公「へ、へい・・・」
親分「さ、話を戻すぞ。先生たちの研修だ。まず最初の日の、最初のお題は何にする?」
ハチ公・クマ公「ええとー・・・ゴミ処理の問題・・・」「バグマティ川の汚染・・・」
親分「いきなり『今日はバグマティ川の汚染について勉強します』っていうのか?お前ら、先生たちに“講義”でもするつもりか?ソムニードの『研修』って何か、わかってるのか?『研修』ってのは『場』なんだよ。そこにいる人が興味を持って、自分なりに考える場を作るってことなんだよ、わかってるか?みんなが自分で考え始めて、初めて『そこにいる人』が『参加者』になるんだ。『バグマティ川の汚染について勉強しましょう』って言われて、先生たちが『おっ、なんだなんだ?』って興味をひかれると思うのか?」
ハチ公・クマ公「・・・・・・・・・」
親分「しょうがねえなあ。・・・最初のトピックはな、『川』でどうだ?」
ハチ公・クマ公「はぁー」
親分「はぁーじゃねえよ(笑)。バグマティ川の話に持っていくにも、まずそもそも『川』ってなんなのか、みんなが同じレベルの理解をしなけりゃ、話が進まねえだろ?」
ハチ公・クマ公「そうか・・・なるほど・・・」
親分「で、研修始まりました、と。さあ、参加者にまず、何ていう?何を質問する?」
ハチ公・クマ公「えーーーーーーーと・・・・えーと・・・『川って何ですか?』」
親分「(笑)お前たちも懲りねえなぁ。いきなり『空中戦』してどうするんだよ?」
ハチ公・クマ公「あっ、そうか・・・」
この『空中戦』というのも、ソムニード流の「技」では大事な考え方です。

ソムニードでは、『空中戦』=『事実』に基づかない(いわば頭でっかちの)コミュニケーション、『地上戦』=『事実』に基づく具体的なコミュニケーション、と位置づけ、実践的かつ具体的な行動につなげていくためには、いかなるコミュニケーションにおいても『空中戦』を避け、『地上戦』をしていかなければならない、と考えておりやす 。
親分「全く、お前らも覚えが悪いな。研修の最初はな、『あなた(たち)が『川』について知っていることを、50リストアップしてください』ってのでどうだ?・・・なんで50なのか、わかるか?」
ハチ公・クマ公「えーと、50じゃなくてもいいけど、とにかくなるべくたくさんってことで・・・」
親分「まあそうだな。でもじゃあ、なんで『なるべくたくさん』じゃなくて50、って数を出したのか、わかるか?」
ハチ公・クマ「・・・・・・」
親分「あのなぁ、人間は、『なるべくたくさん』って言われたら、10か15考えて、はいできました、おしまい、って思っちゃうもんなんだよ。でも50、って言われたら、とにかく何でもいいから、一つでも多く絞り出そうとするだろ?」
ハチ公・クマ公「ふむふむ」

親分「そうするうちにな、理屈で知ってること(『空中戦』的な知識)だけじゃ足りなくなって、どうしても自分が生で経験したことが絞り出されてくるんだよ。つまりその人なりの具体性が出てくるってわけだ。さあ、じゃあ、参加者が50とか60とか、『川』について知ってることをリストアップしましたよ、と。その次は何だ?」
ハチ公・クマ公「えっ・・・あの・・・」
親分「じゃあ、今日はここまで。明日までに、お前ら自身が『川』について知ってることを50書き出しておけ。自分でやってみると、少しはこっちの意図が実感を持ってつかめるだろうからな」

・・・という具合の特訓が何回か続き、二日か三日分の研修内容をざっくりイメージするにも、ハチ公クマ公は大苦戦でしたが、そこは親分、身内の教育にも「技」(対話型ファシリテーション)を繰り出していたんですねえ。「50書き出しておけ」と言われたハチ公・クマ公は、それをすることで、自分が『川』について何を知っているか、逆に何を知らなかったのかを理解することになったからです。そうすると、「あ、このことはおいら、よくわかっていなかったな。これってどういうことなんだろう」と考えるようになります。つまり、ソムニードの「技」の勘所というのは、相手に、『自分が何をどこまでわかっていて、何をわかっていないか』『ではこれから、何を知れば、学べばいいのか』を、「教える」のではなく「自分自身で考えるように『つついていく』」ことなんです。
・・・親分に絞られて、すこーしはソムニードの「技」がどう相手に(この場合は自分に)作用するか、まさに実感したハチ公とクマ公ではありますが、しかし自分でこの「技」を駆使できるようになるには、まだまだ道のりは遠そうです。ただし、これも親分に言わせれば、
「いくら理屈を勉強したってダメなんだよ。例えばこれからやる研修でな、参加者の前に立って、『あれっ、次どうしよう、何を質問したらいいんだろう??』って、頭が真っ白になる体験をしない限り、こいつは身につかないのさ。ま、これからいくらでも真っ白になる機会はつくってやるさ(ニヤリ)」
・・・ということであります・・・

10月か、遅くとも11月には開始したいと考えております、学校の先生たちへの研修。
親分はともかく、いったいハチ公・クマ公はどうなるのか??参加者の前に立ったはいいが、真っ白に燃え尽きてしまうのでしょうか??

・・・次号で、きっと、少しご報告できると思います。我ながら不安ですけど・・・。

School observation

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4. お経の読めない門前の小僧

さあ、毎日ハチ公・クマ公を絞っているだけではプロジェクトが前に進みません。
8月からは、本腰を入れて、事業地内の学校を一校一校回り、信頼関係を作る下準備をするとともに、許可がもらえる学校では「環境教育」の授業を見学いたしまして、実際のところ授業(内容、教え方、生徒の関心など)がどうなっているのか、観察して回っています。こうした学校回りでは、言葉も覚束ず、地縁血縁も(当然のことながら)ない親分やハチ公はちょっと後ろに下がり、まさに地元民であるクマ公が最前線に立ちます。
しかし、そこはさすが途上国、というべきか、電話でアポをとろうとしたクマ公、
「親分、半年前に調べたときから、なんだか電話番号が全部変わっちゃったみたいで、ぜんぜんどの学校にも電話がつながらないんすよ。番号案内にかけてもさっぱり要領を得ないし。電話じゃラチがあきませんや。俺、実際に学校を訪ねて、アポとりしてきます」
とは言っても、事業地も広く、クマ公一人では一日に3-4校回るのがやっと。このペースでは、何十校とある学校回りに何か月かかることになるやら。

さらに、今までのパソコンが壊れかけていたので新しいのを買ったはいいが、基本ソフトを入れたと思ったら、なんだか壊れていて、ちゃんとしたのを入れなおしてもらうために何度もパソコンショップに行ったり来たりするとか、プリンターも買ったはいいけど、誰のパソコンからもなぜか印刷できないとか、・・・なんというか、「日本じゃこれはありえねーよなぁ」ってな問題が次々に起こり、クマ公はそっちにも時間をとられて、分身の術でも使えないことには、学校回りは遅れるばかり。
そこで、クマ公のアシスタント役として、若いサダキチ にも加わってもらうことになりました。二人で回れば、まあ2倍まで行かずとも、せめて1.5倍くらいの速さでアポとりだの学校とのコネクションづくりだのができるだろうという計算です。さてこのサダキチ、やる気は充分ですが、「プロジェクトマネージメント」だのを大学で教えてきた経験があるとかで、難しい言葉が大好き。
つまり、頭の中は『空中戦』の知識でいっぱい。
クマ公「サダキチ、ソムニードのやり方ってのは、ほかの団体とはちょっと違うんだ。最初に学校に行くだろ。そのとき、俺たちは、『これからこういう研修をしてその次これこれをする予定です』ってことは、あえて言わねえんだ」
サダキチ「はぁ・・・?まあ、兄貴のいうことなら、それでいいっすけど・・・じゃあ何て言えばいいんですかい」と、この会話を聞いていたハチ公、ちょっと親分のまねをして、サダキチに「考えてもらう」技を使ってみようと思い立ちました。

ハチ公「サダキチ、ちょっといいかい?いま、クマ公が、ソムニードは『これこれの活動をします』って言わないって言っただろ?これはどうしてか、考えてみようか」
サダキチ「はぁ。えーと、クマの兄貴の説明を聞いたところでは、住民の主体性をそこなわないようにするためだと思いやす」
ハチ公「(うわ、いきなりむっちゃ空中戦来たよ・・・)うん、いや、じゃあ、その『住民の主体性』っていったい何だろうね?説明できるかい?」
サダキチ「住民が自主的に考えてイニシアティブをとることでしょ」
ハチ公「(いや、なんも具体的になってまへんがな・・・)もちょっと具体的に言ってみな?」
サダキチ「住民自身がリーダーになって考えるってことです」
ハチ公「(・・・・・話が進まない・・・)えーとぉ、じゃあ、どうしてソムニードが『これこれの活動をします』って言っちゃうとよくないんだろうねえ?」
サダキチ「ソムニードがリーダーになっちゃうからでさ」
ハチ公「(困ったな・・・)えーと、じゃあ、ソムニードがリーダーになっちゃったら、どうしてダメなのかな?ソムニードがリーダーになったとしても、結果が良ければOK、ってことにはならないのかな?」
サダキチ「ソムニードがリーダーになるのは難しいと思いやす。リーダーになるにはお金も必要だし、住民を組織するマネジメント能力も必要だし、政治的な影響も出てくるし」
ハチ公「(あれ・・なんかどんどん話がワヤになっちゃうよ・・・)えーと、例えば、資金は充分にあったと仮定しようよ。マネジメント能力も持ってる、と仮定する。それでも、ソムニードがリーダーになっちゃ、ダメだと思う?」
サダキチ「うーん。それなら、ソムニードがリーダー役をやっても、いいんじゃないんすかねー」
・・・ということで、ハチ公、あえなく沈没。
ハチ公のもくろみとしては、
「もしソムニードが最初から『これこれの活動をしましょう』といって地域の人たちにアプローチしてしまったら、地域の人たちは
『どうしてその活動が必要なのか?』
『本当に自分たちのためになる活動なのか?』といったことを考えずに、
『言われたんだからやってやるか』と、活動に協力してくれたとしても、プロジェクトが終わったら、『もうこれやってくれ、って言う人たちが来なくなったから、こんなことしなくていいや』と、その活動は尻すぼみになってしまう。そうしないためには、地域の人たち自身が『自分たちの地元のためには、自分たちでこれをやらなけりゃ』と考えて行動を起こさないといけない。
だからこそ、ソムニードは、最初から『メニュー』を提示することはしない」という話の流れに持っていきたかったんですねえ。しかし、ご覧頂きましたように、ハチ公自身が、端(はな)から『空中戦』の罠にはまってしまっています。会話のとっかかりからして、何の具体性もない、ふわふわした理屈だけの質問。これでは、サダキチも『空中戦』で返してくるのは自明というもの。
門前の小僧ハチ公、親分が「お経を読む」のを見てきたはずなのに、今のところ、身内相手の「お経」も全くなっておらず、ダメダメです。

しかし親分のいう通り、こうやって真っ白になったり失敗したりして、その失敗がなぜ失敗したのかということから学んで、次はもう少しマシなやりとりができるように、日々努力していくしかないですね。

で、ハチ公としては、失地挽回すべく、再度サダキチと話をする機会をうかがっているのですが、サダキチはクマ公とともに学校のアポとりなどに走り回っており、その後、時間がとれておりません。
でももう何回か、サダキチ相手に技をかけてみたいと思っています。

さて、次号をお送りするころまでには、門前の小僧ハチ公、少しは進歩できているでしょうか・・・?(「乞うご期待」、と言ってしまうにはちょっと腰が引けているハチ公でありました)

Wada and Devendra

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5. 「まず、お前たちの心持ち(マインドセット)を変えるんだよ」

そうこうしながら、事業地の学校での「環境教育」授業を見学して回っているハチ公・クマ公・サダキチですが、手分けして数校を見学すると、親分に観察結果を報告します。

ハチ公「どうもやっぱり授業内容が、身近じゃない。子供も、授業でしょうがないから聞いてるって感じですかね」
クマ公「もっと具体的なことを話したいって先生もいるんですが、それをしようにも、授業要綱には何も書いてないし、じゃあどこから始めたらいいの、って感じで、手が出ないみたいっす」
親分「ふんふん。いいんじゃねえか」
ハチ公・クマ公「へっ」
親分「だからこそ、俺たちのプロジェクトの研修で、『今までとは違ったこんなやり方もあるんだな』『地域、地元の環境についても取り上げたら面白いかもな』って思ってもらう意味があるんじゃねえか」
ハチ公「はあ・・・そうっすね。しかし親分、学校では基本、授業要綱に沿って授業してるわけで、ウチらの研修で『地域の環境』を面白い、やりたい、と思ったとしたら、それは『時間外授業』みたいな形にするしかないっすかね」
親分「バカ、ハチ公、お前はそれだからダメなんだよ」
ハチ公「へっ」
親分「先生が『地域の環境』を面白い、教えたい、と思ったとするだろ。じゃあ、それを、もともとある時間内で教えるのか、別に時間を取って教えるのか、それとも学校の外で教えるのか。それは、その先生が考えることなんだよ。そうじゃなかったら、つまり俺たちが『課外授業を作りましょう』とか言っちゃったとしたら、それは『ソムニードの』話になっちまうじゃねえか。先生たちが自分で『この時間を作って、これを教えよう』と動き出さない限り、何にも変わらねえんだよ!本当のところが変わらねえんだったら、いくら表面的に『活動結果』を作ったって、何にもならないだろ?」
ハチ公「(うっ・・・こないだ、サダキチに説教するつもりだったことだ・・・自分がその穴にはまっちゃってたよ・・・)」
親分「ハチ公、それにクマ公も、サダキチもな。まず、お前らが、『国際協力プロジェクトってこういうもの』っていう心持ち、お前らの頭の中の『枠組み』を、きれいさっぱり洗い流さない限り、このプロジェクトは動かねえよ。まず自分の頭の中を変えることからだな」
ハチ公・クマ公は言葉もなく沈黙でした。
サダキチにとって、親分のこの言葉、今の時点でどれだけ腑に落ちたかはわかりませんが、だんだんに理解していってほしいと思います。と、順風満帆どころか、いきなりハチ公もクマ公もずっこけまくりのバグマティ・プロジェクト、第一幕。
それを余裕で、ニヤニヤしながら眺めている親分・・・。
はてさて、次号が出るまでに、少しはハチ公・クマ公・サダキチの成長がみられるか?
そして、先生たちの研修はいったいどうなるのか??

筆者・ハチ公にも、いったいこの後何が起こるのかさっぱりわかりませんが、次号も赤裸々(笑)に書いていきたいと思います。

Kathmandu street

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登場人物と用語のご説明

環境教育と住民主体の環境保全活動を通した地域コミュニティーの強化本プロジェクトについて=概要説明ページもご覧ください。

バグマティ川=カトマンズがあるカトマンズ盆地<aの主要河川で、かつ、ネパール人口の八割を占めるヒンドゥ教徒にとって宗教上「聖なる川」とされています。

クマ公=「ソムニード・ネパール」のリーダー、デベンドラ・バスニャット(Devendra Basnyat)。「ソムニード・ネパール」立ち上げから苦節10年、ようやく地元で本格的にソムニードの事業が始まることになり、大喜びですが、仕事が山積みすぎてちょっと目が回りそうな今日この頃でございます。

親分=ソムニードの代表理事、和田信明。某通信では「黄門様」と呼ばれていたが、本通信ではなぜか「親分」に。インドの事業のように田舎ではなく、ネパールの「花のお江戸」カトマンズだから・・・なのかどうかは、読者のご想像にお任せ。本事業プロジェクト・マネージャー。

ハチ公=かく言うあたくし、本編の語り手、ソムニード海外事業コーディネーター、奈良原志磨子でございます。本事業ではアシスタント・プロジェクト・マネージャーということになっております。

空中戦と地上戦=詳しくは、和田信明・中田豊一著「途上国の人々との話し方」をご参照ください。

サダキチ=ウッジャル・タパ(Ujjwal Thapa)。クマ公ことデベンドラと同じく、幼いころ、まだきれいだったバグマティ川で遊んだ経験ありの地元出身者。

 

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