でこぼこ通信第2号「季節は変われどゴミだらけ、のカトマンズ」

In 601プロジェクト通信 ネパール「バグマティ川再生 でこぼこ通信」 by master

 

目次

1.ゴミだらけの季節がやってまいりました
2.研修準備、始まる
3.ハギさん登場
4.ハギさんの「カトマンズ・ゴミ談義」
5.『田舎』と『都会』、カトマンズの二つの顔

 

1.ゴミだらけの季節がやってまいりました

12月、カトマンズは乾期でございやす。今年は例年より1-2か月長引いたという雨期も9月半ばには終わり、その後はほとんど毎日、いい天気でござんす。

砂利道が水たまりだらけ、ちょこっと歩くと足元がどろどろに、ってな雨期が終わりやすと、うろちょろするのは楽になるんですが、困ったこともありましてねぇ。いやぁ、川の水かさが、減ってきますでしょう。そうすると、雨期の間は流れが早くて下流に流されていっていたゴミがですねぇ、あたしらとこあたりのバグマティ川でも、水面にぷかぷか浮いたり石にひっかかったりして、要するに川がゴミだらけになるんですわ。見た目もそりゃあ汚ならしいですし、こんなお話してなんですが、ちょっと臭くってですねぇ。みなさんのご記憶にはありますでしょうか、どぶ川の匂いってやつなんですわ。お知り合いに聞いた話では、バグマティ川から1キロ以上離れたところにお住まいでおられるのに、風向きによってはやっぱり匂いがするそうで。町中、ゴミの匂いの「首都」ってのもねぇ・・・困ったものでござんす。

バグマティ川ではありませんが、街中の小川。
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ま、11月12月と、だいぶん寒くなってきましたんで、ゴミの匂いは少しマシになりましたが、バグマティ川のゴミの量は増え続けておりやすね。次の雨期が始まる5月、6月ごろまでは、こういう状態が続く、ってなわけです。

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2.研修準備、始まる

さて、いよいよ、学校の先生たちを対象とした研修の準備に入りました、プロジェクトの面々。

しかし、クマ公サダキチも、こんな風にきちんとした研修を実施した経験はありません。
そこで、またまた親分による身内訓練が始まりました。

親分「よし、いよいよ、先生たちの研修の準備を始めるぞ。まず、一番最初に必要なのはなんだ?」
クマ公「先生たちに招待状を送る」
親分「その前にやることがあるだろう」
サダキチ「どの日に何をやるかを決める」
親分「それはもっと先の話だよ」
クマ公「ホールを借りる」
親分「違う違う」
サダキチ「市の教育部とか、関係するお役所に招待状を送る」
親分「それも必要だけどな、そのためにはまず、何をしなけりゃいけないかって聞いてるんだよ」
クマ公・サダキチ「・・・・・・・・・」
親分「お前ら、招待状を送るにも、どこの誰に送ったらいいのか、わかってるのか?」
クマ公「先生たち」
サダキチ「校長先生」
親分「だーかーらー。先生たちだの校長先生だのってのは何百人もいるだろうが。俺たちは今、どの学校に何て先生がいるのか、知ってるかい?」
サダキチ「いや・・・まだ知らないっす」
クマ公「・・・調べないとな」
親分「そうだな、それを調べないとな。で、調べたら、どうするかだ。」
クマ公・サダキチ「・・・???」
親分「じゃあな、お前らが、友達に手紙を送ろうと思ったら、この封筒に何を書くんだ?」
クマ公「・・・名前・・・?」
親分「おう、名前はいるな。名前だけで配達してくれるか?」
クマ公・サダキチ「・・・・・・・・・・住所・・・?」
親分「そうだな、住所が必要だ。名前や住所。ほかにもあるだろう、知っとかなきゃいけないことが」
クマ公「電話番号とか・・・」
サダキチ「携帯電話の方がつながりやすいんじゃ・・・」
親分「そうそう、まあいろいろあるな。で、何十、何百っていう学校や先生たちの、名前や住所を集めましたと。それをどうする?」
クマ公・サダキチ「えっ・・・・・・・」

さて。読者のみなさんなら、何をしますかね?

親分の話を聞くプロジェクトの面々。
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クマ公・サダキチ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(困惑)

ここで親分、にやりと笑い。
親分「ホントなら、お前らが思いつくまで何時間待っててもいいんだけどな、今日は答えを教えてやるよ」
クマ公・サダキチ「あっ・・・へい、お願いしやす」
親分「一覧表を作るんだよ」
クマ公・サダキチ「?????」

まあ、あたしら日本人なら、何十人という研修生候補の情報をどう管理するか、と言ったら、まずは一覧表かなってのは思いつくところなんですが、ここネパールでは、あまりそういう風にものごとを進める習慣がないようなんですね。クマ公もサダキチも、いろいろなことをよく知っている、頭のいいやつなんですが、やっぱりやったことがないことはすぐには飲みこめないわけで。

親分「おいサダキチ、お前、その一覧表の枠組みを作ってみろ。ハチ公、ちょっと見てやれや」
ハチ公「へい親分。じゃあサダキチ、表の下書きをしてみて、あたしに見せてくんな」
サダキチ「わかりやした」

翌日、サダキチがハチ公のところにその”一覧表”の下書きを持ってまいりました。

ハチ公「うーーーーん・・・・・・・・・・・・・・・・」

”一覧表“のはずが、サダキチが作った表は、一つの学校について、先生の名前、住所や電話番号、先生に関する詳しい情報などを書き込むようになっている、いわば「個々の学校の詳細表」でした。

ハチ公「うーん、サダキチ、お前さん、『一覧表』って何のために作るものか、考えたかい?」
サダキチ「だから、先生に連絡がつけられるようにするための表でさ!」
ハチ公「・・・・・・うん、そうだよね。で、あたしたちがやりたいのは、何十っていう学校の先生たちに連絡をつけるときに、見ようっていう表だよね?それが一覧表って意味だ・・・よね?」
サダキチ「はぁ・・・?」(納得してない)
ハチ公「だとしたら、どういう表を作ったら見やすいかね?どう思う?」
サダキチ「だからこの表を印刷して、めくって見ていけばいいんでさ!」
ハチ公「いや・・・えーと、つまり、・・・(どう言ったらいいんだ・・・)」

ハチ公は、なんとかして『頭から指示する』のではなしに、「一覧表」の意味をわかってもらおうと、つまりソムニード流の「うまいこと突っついて、『自分で考えて答えを見つける』体験」をしてもらおうと頭をひねったのですが・・・。何をどこから言ったらいいのか、全然思いつきません。残念、またもハチ公の「サダキチ教育」は失敗です

ハチ公、仕方なく、親分に泣きつきます。
ハチ公「親分~。サダキチに『一覧表』の意味をわかってもらうのがむつかしくて・・・考えてもらおうと思ったんすけど、どう言ったらいいのか・・・」
親分「ハハハ、おめえも相変わらず成長しねえなぁ。ま、そいつにとって全く新しいことを伝えるときには、バシッと教えてやらにゃならねえこともあるさ」

ということで、親分自ら指揮を執り、クマ公とサダキチが何日か悪戦苦闘した結果、ようやく先生たちと学校の基本情報を書き込む一覧表が完成。

さてここからが、ようやく研修準備の本格的な始まりです。
まずはお役所の出している学校一覧をもとに、学校の名前や住所、校長先生の名前など、ごくごく基本的なことを確認します。・・・しかし、これも一筋縄ではいかないんですわ。
あるはずの場所に学校がない、とか。電話をかけるとぜんぜん違う家につながってしまうとか。学校の名前自体が間違っているとか。もちろん、「あ、校長はだれそれに変わりました」なんてのは当たり前みたいなもの。

結局、クマ公とサダキチが毎日一校一校、聞いた住所を訪ね、本当に学校があるかどうか確かめ、あったら、電話番号を聞き、校長先生や環境問題を教える先生の名前を教えてもらい・・・、という羽目になりました。あたしらが仕事をする地域もそれなりに広いので、これに結構時間がかかりましたねぇ。研修の招待状なんかも並行して作りながらだったので、あれこれ合わせてかれこれ1か月ばかりかかったでしょうかね。
で、情報が集まって、招待状ができたら、再度それをすべての学校に届けにいって、何日か後に「研修、参加しますか?」という確認を取ると。いやはや、何週間も、あれやこれやでてんやわんやでした。
クマ公、サダキチ、お疲れさん!

学校リストの山(できあがり)
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3.ハギさん登場

11月下旬、カトマンズのソムニード事務所をふらりと訪れた一人の男。

ハギさん「よう、和田の親分、久しぶり」
親分「おう!ハギじゃあねえか。やっと来やがったなこの野郎!」
ハギさん「そう言うなよ、俺っちだって忙しいんでい」

ハギさんと親分は20年来の友人だそうで。ハギさんは、30年以上リサイクルをやってきた、いわばリサイクルの神様。こんな人がいるとすぐ脳みそを預ける癖がある親分。じゃ、ゴミの話はハギさんに見てもらおうじゃないか、というので、無理矢理日本からハギさんを引っ張ってきました。

親分「ハギ、じゃあまず、何を見たいか知りたいか、教えてくれや。俺たちが見せられるものなら、なんでも見せて回るぜ」
ハギさん「そうさな・・・。まずはその、バグマティ川ってぇ川を見てみたいな。それと、街中の様子、あと、カトマンズ市のゴミ処理場がどうなってるかも見てぇな。」
親分「おいおい、結構よくばりだな(笑)。おし、善は急げだ。早速、ハギと一緒にカトマンズとバグマティ川のゴミ事情を見学することにするか!ハチ公、ついてこい」
ハチ公「へい、親分」

というわけで、クマ公とサダキチが学校回りで走り回っているのを横目に、ハギさんと親分、ハチ公の三人は、一週間にわたってカトマンズのあちこちを見て回ることになりました。まず一行が向かったのは、事業地から少々北東に山を登った、バグマティ川の上流です。このあたりではまだ住宅もほとんどなく、自然が十分に残っておりやす。

上流を見るハギさんと親分。
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ハギさんワンショットのほうが良ければこっちを。
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ハギさん「ほぅ、けっこうきれいな川じゃあねえか。でも水量が少ねえな」
親分「ハギ、今は乾期なんだよ。雨期には倍くらいの水量になるぜ。次は雨期に来てみろって」
ハギさん「ああ、そうかえ。ふんふん・・・。ほう、この川の本当の源流はまだまだずっと上の方だな。」
ハチ公「えっ?いや、そうっすけど、ハギの旦那、なんでパッと見ただけでわかるんですかい?」
ハギさん「簡単だよ。川に転がってるこの石っころ、かなり角が取れて丸っこくなってるだろ。てことは、ずいぶん長い距離を、あっちにぶつかりこっちにぶつかりしながら流されてきたってこった。もともとは上流の、ごつごつした岩のかけらだったもんだからな、川の石ってのは」
ハチ公「ははぁー、なるほどぉ・・・」

ハチ公、またまた反省。言ってもらえれば分かるが、そういうところにぱっと目が行く、という風には、なかなかいきません。

さて、そこから下って、あたしらの縄張り(つまり仕事をする地域ですな)に入ると、バグマティ川は一気に汚くなります。

親分「ここで、さっきのところからのバグマティ川に、周りの小川が合流するんだよ」
ハギさん「ありゃぁ、たった5-6キロなのに、ずいぶん汚くなっちまったなあ。おっと、この小川を見てみろよ。こりゃあ、完全に家庭排水だな。家庭排水が何も処理されずにそのままこの川に流れ込んでるぜ」
ハチ公「えっ?・・・あのぅ、ハギの旦那、なんで小川をちらっと見ただけでそんなことがわかるんですか?」
ハギさん「この川の水の色を見てみな。こりゃあ、洗濯洗剤だの台所洗剤だのの合成洗剤がかなりの量混じってる色なんだよ。そっちのバグマティ川の色と比べてみろや」
ハチ公「はぁ、こっちの小川のほうが水が汚ねえってのはわかるんですが・・・それ以上はちょっと・・・」
親分「ま、このハギの野郎は、こういうことばっかり30年もやってるやつだからな。そのくらいわかって当然ってもんだ」
ハギ「ふむ、この小川の色を見る限り、住民はみんな合成洗剤をバカバカ使ってるようだな」

一行はこんな具合にバグマティ川を下って行き、排水溝の出口が直接バグマティ川に流れ込んでいる様子や、住民や業者がバグマティ川の川岸に、ゴミをそのまま捨ててるところをじっくり見ました。さらに、カトマンズ市のお上がやってなさるゴミ処分場、埋め立て地にも行ってみました。こうして、1週間ばかりの間、毎日カトマンズ市内と近郊を走り回り、毎日ゴミとにらめっこする毎日。親分などは、最後のほうになると・・・

親分「おい、ハギ、俺ぁもう毎日毎日ゴミを眺めるのに飽きてきたぜ」
ハギさん「何言ってやがる、このプロジェクトはゴミを見てナンボだろ、和田の親分!俺ぁまだまだ見足りねえよ。じゃあ次は、街中のゴミ業者が見てみたいな。どっか知り合いはいないかい?」
親分「へいへい、わかったよわかったよ。じゃあ俺たちの事務所の近くの業者んところへ行ってみるか」

てな具合。ゴミからゴミへ、ハギさんのイキイキしていることと言ったら。大したものでござんす。

ゴミ処分場(埋立地)のハギさんと親分
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民間ゴミ業者の仕事を眺めるハギさん
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4.ハギさんの「カトマンズ・ゴミ談義」

こうして、カトマンズのゴミ事情をじっくり観察したハギさん。いろいろ考えるところがあったようです。親分、ハチ公、そしてクマ公と車座になったところで、話し始めました。

ハギさん「うーん。こりゃあ、『敵は己の内にあり』だな」
ハチ公「へっ?何ですか、ハギの旦那?」
ハギさん「このバグマティ川の汚れな。川だけじゃなく、街中もおんなじことなんだがな。日本の川が汚染されて公害が問題になったころとは、まったく違うのさ」
ハチ公「??」
ハギさん「日本ではな。でかい工場なんかから、毒性のある廃棄物が川に流れ込んで、それが川全体、それに周りの住民に害を与えたってことだったんだよ。つまり、『敵』は外から来た工場とか会社とかだったわけだ。けどな、バグマティ川に流れ込んでる排水や、捨てられてるゴミ、こいつらは、産業廃棄物かい?」
親分「いや、家庭ゴミばかりだよな。だいたい、この辺には産業って言えるほどのでかい工場なんかは、ほとんどないからな。いくつか、家内工業みたいなカーペット工場があるくらいで」
ハギさん「そうだろ。ほとんどが日常的な家庭のゴミや排水だ。ってえことはだ。『敵』、つまりゴミや排水を出したり捨てたりしてるやつらってのは、住民自身、自分自身ってこった」
ハチ公・クマ公「へい、そうなりやすね」

ハギさん、納得顔のハチ公・クマ公をちらりと見て。

ハギさん「ハチ公、クマ公、こいつは、かえって難しいってことだぜ」
ハチ公「へっ?!」
ハギさん「『敵』が外から来たやつ、例えば工場だったら、そいつらと『戦って』、汚染をやめさせれば、川もきれいになるってこったろ。だけど、ここでは、何十万人っていう住民が、みんなして『敵』が自分なんだ、って考えて、自分でゴミを捨てないとかの行動を起こさない限り、川も街もきれいにはならないてことなんだぜ。こいつは大仕事だぜ、和田の親分」
親分「ああ・・・そうさなあ」
ハギさん「ま、逆に言えばだ、てめえらがやる気になりさえすれば、やってやれねえこともねえ、ってこった。」
ハチ公「へい・・・」
ハギさん「そうしょげんなよ、ハチ公。やればやれるって。ただ、そうとう時間はかかるな。何年とかかるだろうな」
ハチ公「へい・・・」
クマ公「俺ぁ、何年かかってもやりますぜ!俺っちの地元っすからね!」
ハギさん「そうそう、クマ公、その意気だぜ」

ここでハギさん、まじめな顔になって和田の親分を振り返りました。

ハギさん「市のゴミ処分場も見せてもらったけどな、ありゃあ、あと2-3年使うとか言ってるが、今もうすでに限度を超えてるよ。でも、ほかに場所がないから、あそこに埋め立て続けるしかないんだろうなあ。まあ、あの処分場を見ただけでも、お上には期待しない方がいいってことがはっきりしたよ。つまり、やっぱり、住民たちがてめえらで何とかするしかないってことなんだよな」
親分「ああ。俺もそう思うぜ。で、じゃあ、どうやるかってこった」
ハギさん「そうさな。そこが問題だ。和田の親分たちが始めようとしてる、学校を手始めにってのは、いいと思うぜ。俺っちが見たところ、『ゴミがあふれちまってる』っていう今の状態を、住んでる人たちは、要するに『見えてない』んだよな。毎日毎日の、日常のことだから、当たり前すぎて、それに疑問を持たなくなっちまってるんだ。これは、大人も子供もおんなじだろうと思うぜ。だから、働きかけを子供たちから始めるってのは、面白いじゃねえかな。まず子供が何を思うか、興味があるよ」
親分「おう、そうか。よかったぜ、おめえさんと考えが合って」

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5.『田舎』と『都会』、カトマンズの二つの顔

ハギさん、ここでちょっと考え込みました。そしておもむろに。

ハギさん「俺な、もう一つ、ここで面白いなあと思ったことがあるんだけどな・・・」
親分「なんだよ、もったいぶるなよ」
ハギさん「ああ。いやな、カトマンズにはな、『田舎』と『都会』がいっしょにあるんだよな」
ハチ公「へっ?どういう意味ですか、ハギの旦那」
ハギさん「住民の多くが、この10年20年の間に田舎から来た人たちだってことだから、それも関係あるのかもしれないけどな・・・生活ぶりも、それからみんなの心の中も、なんつうか、江戸時代と21世紀が入り混じってるって感じなんだよな。『都会』だの『21世紀』だのってのは、ざっくり考えれば、人間が自給自足生活から遠く離れて、金で物を買う消費者になるってことだ。日本を考えてみろい。金を払わずに手に入るものがどれだけある?」
ハチ公「・・・ほとんどないっすよね」
ハギさん「だろ。だけどな、カトマンズの人たちは、街中の家でも庭で野菜を育てて、バグマティ川で沐浴したり洗濯したりしてるよな。まだ村の生活に近いところが残ってるんだ。それに、みんな、すごく信仰深いようだな。何日か見て回っただけでも、お寺にお参りしたり、バグマティ川でお祈りしてたり、そういう人たちをたくさん見たよ。ちょっと新鮮だったな。クマ公のおっかさんも、毎日毎朝、神様に捧げものをしてるって言ってたろ。俺たち日本人が失ってしまった、そういう心持ちっていうか、精神世界みたいなものが、ここの人たちの心にはまだ生きてるんだ」
親分「さすがだな、ハギ。たった4-5日見て回っただけで、そこまでわかったのか」
ハギさん「へっ、まぁな(笑)。」

親分「実をいうとな、俺も同じようなことを考えてたよ」
ハチ公「ええっ?親分、ひでえや。そんなこと、ちっとも言ってなかったじゃないですか」
親分「ハチ公、おめえも懲りねえな。そういうことは人から教えてもらうもんじゃねえんだ。自分で見て、自分で気づかなきゃ意味がねえのよ。俺ぁ、いつお前がそういうことに気づいて、俺に言ってくるか、待ってたんだけどなぁ。おめえ、やっぱまだまだだよな」
ハチ公「うっ・・・・」
ハギさん「まあまあ、親分。ハチ公も、そう凹むなって。和田の親分や俺っちは、それで20年30年とやってきてるんだからよ。」
親分「ハチ公、努力しろよ。俺はおめえが一人前になるよう、待ってるんだからな。まあ、またなんか気づいたことがあったら、俺に言ってみろ。な?」
ハチ公「へい・・・精進しやす・・・」

ハギさん「でな、親分。だからよ、ゴミ問題に関しても、そういう、『田舎』のままの心持ちっていうかな、個々の人たちの敬虔さ、みたいなものに訴えかけたらいいかもしれない、とも思うんだよな・・・」
親分「ハギ、そりゃあ面白いが、どうやって『敬虔さ』なんていう、形のないものに働きかけるつもりでえ?」
ハギさん「いやー、そこがなぁ、俺っちもまだ、はっきり考えがまとまってねえところなのさ。ま、来年来るときまでに考えとくわ」
親分「おう、頼むぜ。俺ももうちっと、いろいろと考えとくけどな。おう、クマ公、おめえは生まれも育ちもこの辺りだろうが。今のハギの話を聞いて、どう思うよ?」
クマ公「いやぁ・・・俺、ぜんぜん頭が整理できてなかったんすけど、すげぇ納得しやした。俺っちのおっかさんなんか、ハギの旦那も言ってやしたけど、もろに『田舎』と『都会』の両方を持ってる人間だなって感じでやすね」
親分「そうさな。そういう人たちと、俺たちはこれから、どうつきあっていくか。さ、考えることはいろいろあるぜ。ここからが本番だ。ハチ公、クマ公、気合入れろよ!」
ハチ公・クマ公「へいっ」

と、こんな具合で、ハギさん分析のおかげで、だいぶん頭の中のぐしゃぐしゃも交通整理できてきたハチ公とクマ公でござんす。

ハギさんがカトマンズにいたのは10日間ほどでしたが、いやぁ、嵐のようでしたねぇ。
ハギさんは日本でも八面六臂の忙しい人なんですが、また何か月か後にはカトマンズに来てくださるそうでございやす。その時までに、ハギさんに報告できることを作っておきたいな、と気持ちを新たにしたプロジェクトの面々でした。

『車座』の親分、ハギさん、ハチとクマ。
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親分「で、クマ公。研修準備のほうはどうだ?」
クマ公「へい、ほとんどできてきやした。今、サダキチが、最後にもう一回学校を回って、『来たい』ってぇ先生たちの名前を確認しておりやす」
親分「おう、そうか。サダキチもがんばるじゃねえか。よし、じゃ、次はいよいよ研修だぜ!」

クマ公・サダキチの頑張りのおかげで、ぼちぼち研修準備も整いました。次号では、第一回の研修の様子をお伝えしたいと思います。乞うご期待!

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注意書き

9月半ばには終わり:しかし、降雨量は不足気味で、水力発電の比重の大きいこの国では、今年の真冬は最大、1日19-20時間の停電になるというお話でござんす。1日20時間って・・・電気来てるっていうんですかね?

クマ公:「ソムニード・ネパール」のリーダー、デベンドラ・バスニャット(Devendra Basnyat)。持ち前の面倒見の良さで、一族郎党はもとより、近所の人々にも何かと頼られ頼まれ、カトマンズ中を走り回る毎日でございます。

サダキチ:プロジェクトの新顔、ウッジャル・タパ(Ujjwal Thapa)。クマ公の弟分。何かやるたびにハチ公に文句をつけられるが、どうしてなのかがよくわからず、困惑気味でありやす。

親分:ソムニード代表理事、本事業プロジェクト・マネージャーの和田信明。長く暮らしたインドからカトマンズにやってきて、はや1年が経ちました。

携帯電話:途上国の多くがそうですが、ネパールでも、携帯電話の普及には目覚ましいものがあります。有線電話を持っていない多くの家でも、家族の誰かが携帯電話はもっているのが普通です。逆に言うと、有線電話の普及率は低く、事業地域の学校でも、有線電話のないところもかなりあります。

ハチ公:この「通信」の語り手、あたくし奈良原志磨子でございます。本事業ではアシスタント・プロジェクト・マネージャーという肩書をいただいておりやす。

またもハチ公の「サダキチ教育」は失敗:ハチ公がサダキチに「考えてもらおう」として失敗した経験談は、この「通信」第1号でもお伝えした通り。

ふらりと訪れた:ちょっと嘘です(笑)。本当はちゃんと計画を立てて来ていただいています。

ハギさん:萩原喜之。30年以上にわたり、名古屋など中部地域を中心に、リサイクル、環境改善などにかかわる市民活動を引っ張ってきた、日本の環境問題にかかわる市民活動の世界における名物男。(特活)「地域の未来・志援センター」理事長、(特活)「中部リサイクル運動市民の会」創設者・理事、(特活)「エコデザイン市民フォーラム」代表理事。

ゴミ処分場、埋め立て地:カトマンズ市のゴミは、焼却処分場がない(建設する資金も土地も技術もない)ため、すべて近郊の山中の埋め立て地(最終処分場)に埋め立てられています。しかし、この処分場も早晩許容量をこえてしまうと予測されています。次の処分場建設のめどは立っていません。

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