第2号 「おらが村には何がある?(その1)」(2007年10月5日発行)

In 603プロジェクト通信 インド「水・森・土・人 よもやま通信」 by master

 

目次

1. 村の中の「あるもの」探し
2. ソムニードスタッフの参加のお願い
3. 村の宝
4. ポガダバリ村の植物図鑑
5. インド・建設よもやま話

1. 村の中の「あるもの」探し

村ではトンボが飛び交う9月のある日。

まだまだ気温は35度もあるビシャカパトナム市内に、ソムニード(現ムラのミライ)のスタッフが顔を揃えた。メンバーは、主にビシャカパトナム市の事務所で勤務するスタッフと、農村部のフィールド・オフィスで勤務するスタッフ、そしてネパールの現地法人ソムニード・ネパールからスタッフが一人、遠路はるばるやって来た。

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通信第1号でポガダバリ村、マーミディジョーラ村、ゴットゥパリ村の人たちと、「これから一緒に事業をしましょう!」と気持ちを新たにしたのだが、その際にスタッフ皆が気づいたこと。

 

『村には、けっこういろんな植物があるもんだ。』

 

村の中に「無いもの」を探すのではなく、「あるもの」を探して、それを活用していくのがソムニード流。

そこで、村の資源の一つである植物に関して、世界にたった一つしかない「村の植物図鑑」を作ってみないか、ということになった。ただし、スタッフが村に行って調査してまとめて完成!なんて、そんな野暮なことはしない。もちろん、村の人たちと作るのだ。じゃぁ、村の人と作るにはどうすればいいか、村に行くときにはどうすればいいのか、ということで、冒頭にあったソムニード・スタッフ(ほぼ)全員集合で研修を受ける、ということになったのだ。

プロジェクト・マネージャー(略してプロマネ)がスタッフに問いかける。
「村に行ったらまず何するの?」
笑顔をほころばせながら答えるフィールド・スタッフのビジャヤ。

「ナマステーって挨拶して、元気してる?とかなんとか言ってちょっと会話して、それから村や山を一緒に歩いて・・」

「挨拶してから、村の中を歩く前になんかすることあるでしょ?」
考え込むフィールド・スタッフたち

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2. ソムニードスタッフの参加のお願い

事業を一緒にしましょう、と村の人たちと心新たにして、これから私たちと村の人たちは、同じ方向を目指して共に活動をしていく。しかし、スタッフが一方的に、村の人たちに対して、ああせいこうせいというのは、なんだか目隠しをさせて引っ張り回すようなものだ。だから、村に行った際には、どういう目的で何をしようとしているのかを、私たちは最低限の礼儀としてまず伝えなければならない。そうした上で、村の人たちの協力を仰ぐのだ。

ここで間違ってはいけないのは、「村の人の参加を促す」のではなく、ソムニードのスタッフが「参加させてもらう」ということ。村の人たちがスタッフの村への訪問の目的を理解してくれて、「いいよ一緒にやろうか」と言ってくれて初めて、ソムニードのスタッフは村の人たちの活動に 「参加させてもらう」ことができるのだ。

ということで、今回の村訪問の目的をスタッフ全員で確認し、村に着いたら誰が何を言って、という役割分担もして、一同ビシャカパトナムから、いざポガダバリ村へ。事前に行くことは伝えてあったので、村のリーダー含めSHG(女性自助グループ)のメンバーたち、合わせて15名ほどが待っていてくれた。

まずは、紹介役のビジャヤ。

「ナマスカーラム(州の言葉テルグ語で「ナマステ」よりも、やや丁寧な挨拶)。えーっと、今日は新しいソムニード・メンバーもいるので、まずはその人を紹介しますね。」
と、やや緊張した笑顔を見せながら、ソムニード・ネパールのスタッフや、修士論文調査に来ている大学院生・ニシダ君を紹介していく。そして、次はアショクが訪問目的を言うことに。彼の目の前には、村のリーダーが座っている。

今までのフィールド・ワークといえば、フラっと村に来て自分の用事を済ませれば帰る、ということがお馴染みだったから、こんな来訪の目的を告げるなんてこと、どうすれば・・・
と緊張の波が彼に押し寄せる中、トツトツと目の前のリーダーに語りかけるのが精一杯。一方、リーダーの後ろの方では、

「そういえば、議事録つけなくちゃ。ノートはどこ?」

と立ち上がる娘さん、

「おや、もうなんか話しているのかえ?ちょっと詰めておくれよ」
と遅れてやって来たオバチャン、アレやコレやとガサガサして騒がしい。

「・・・と、言うわけで、今日は村に来ました。」
と言い終ってほっとした頃、後方がようやく落ち着いた。

「みんな、聞こえたー?」
アシスタント・プロマネが問いかけたと思いきや、いきなり緊張が解けたビジャヤと興に乗ったスーリーが、アショクが言ったことを再び大声でしゃべりだす。そして村の中を歩き回ってもいいか村人の許可を求め、手のあいている人には協力してほしい、と伝えた。
「ほう、面白そうだねぇ」
と10人ほどが同行してくれることになり、まずは2時間ほど二手に分かれて歩き回った。
村の人たちも、外部の人間からの

「アレが無い、コレが無い。」
という指摘にばかり慣れていたものだから、今回のように、村に在るもの、自分たちが普段使っているものを紹介するのは嬉しいと見え、ずっと喋りっぱなし。

一人のオバチャンが

「この草はね、茎がロープに使えて、葉っぱは牛の餌になって」
と話しているのに、別のオバチャンが

「この木の葉っぱはね、消化促進に良いんだから。ほら、食べてごらん」
と枝を折り、子どもたちは何かの実を手に持ってくる。

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3. 村の宝

スタッフは、自分の関心のある植物への質問を、あれこれと聞きだす(押し付ける)のではなく、オバチャンやオッチャンたちが話したい植物に、まずは耳を傾けるのが基本のスタンス。だけど、聖徳太子のように一度に大勢の話を聞けないので、順番に話してもらうのだが、村の人たちのなんと知識の多いことか。

薬や食用、道具用など多様な草花、木が田んぼの畦道から畑、村の裏手まで、色んな所に生えている。
この木の花がたくさん咲けば、稲がたくさん実る、という逸話も、否定したり無視してはいけない要素だ。

スタッフにとって、ただの雑草に見えていたもの、村の人たちにとって単なる植物だったものが、実は資源になり、それは村の宝となる。フィールド・ワーク歴約20年、ポガダバリ村にも数え切れないほど通ってきたスーリーが、鼻息荒く感動を伝えてくれた。

「オレは、今まで何度となくこの村に来ているけど、こんなにたくさんの草や木があったなんて知らなかった!オレは、とても興奮してるよ。すごい経験だ!」
(※スーリーは、ソムニードに入ってから目から鱗の連続。今まで20年近く勤めていたNGOでは、村人の話を聞くこともなく、村にある宝(資源)に目をつぶり、無いもの探しばかりして、プロジェクトという名のプレゼントを村人に押しつけていたので、今回のフィールド訪問で、村人から湧き出るような植物に対する説明、豊富な資源の発見に、感動はひとしお)

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そして次の日は、小雨の降る中、表土の下の岩の表面が時々見えかけている山を一緒に歩いてもらい、立ち止まっては木や草について教えてもらった。ちょうどこの頃、低気圧のためにぐずつく天気が続き、風邪で寝込んでいる人が多かったポガダバリ村。頭痛や熱に効く、という木の葉っぱと薬の作り方を知っているのに、風邪薬を買い、注射を打ってもらうという村の人たち。
さらに、女性が額につける赤いマークに使える植物も、村で手に入るのに、

「恥ずかしい。町で売ってるシールタイプの方が良いわ」
と言う若い娘さん。

村に伝わる伝統的な知識や風習が、こうして少しずつ無意識の内に薄れていってしまうのだろうか。

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4. ポガダバリ村の植物図鑑

さて、今回知り得た情報を元に、「植物図鑑」の見本をスタッフが作って、ポガダバリ村にフィードバックする。だけど、これは単なる図鑑ではなく、村の宝となる植物資源の図鑑(データベース)なのだ。名前や使い方をただ羅列するだけでは面白くもないし、第一、読み書きできない人の方が圧倒的に多い。

ソムニードのスタッフが図鑑を作るのではなく、村の人が主体となって一緒に作っていく。スタッフは、村の人たちが項目を埋めやすいように様式の見本を作り、これを元に村の人たちから意見を聞き、改良していく予定だ。
そしてできあがるこの図鑑を元に、植生や土壌の質、水の使い方などに関して、更なる展開を広げていくのだが、それはもう少し後の話。
まずは、「ポガダバリ村の植物図鑑」ができれば、ポガダバリ村の人たちに、マーミディジョーラ村やゴットゥパリ村に来てもらって、ポガダバリ村の人たちから図鑑作りを紹介してもらって、各村で作っていく。

ただ今スタッフは、ポガダバリ村でお披露目する最初の植物図鑑の見本を必死で作製中。

200709 Transect walk for PB

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5. インド・建設よもやま話

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知る人ぞ知る、インドの農村部建設事情。

2006年、ソムニードは女性の自立支援事業(JICA 草の根技術協力事業)で、農村部に「生産・物流センター」を建設した。その時直面した数々の現実。

設計図が読めないエンジニア、工程が不明瞭な建設作業、見積もりをはるかに超える資材調達etc。
今回、このセンターの2階部分に、トレーニングセンターを建設することになったのだが、これらの障害をできるだけ最小限に抑えようと、ソムニード・スタッフが立てた対策が、ズバリ「建設計画表」の作成。
最新の資材単価を入手し、完成模型を見ながらエンジニアと設計図を確認しあい、誰がいつ何をどれだけ調達するのか、必要書類は何か、見積もりはいくらか、ということを細かく表にまとめ、さぁお立会い。
この表があれば、例えば担当スタッフが風邪で寝込んでも、代行する人が何をしなければならないか、そのために何が必要なのか、ということが一目瞭然。しかし、建物の建設工程や必要資材にこれほど詳しいNGOスタッフも、NGO大国インドとは言うものの、そうそういないのではないかと、ふと思う。
完成予定は2008年8月。どうか順調に進みますように!

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インド地域づくり募金2

注意書き

スタッフ=しばらくの間、フィールド訪問禁止令を受けていたフィールド・スタッフたちは、オフィス運営の研修を、ラマラジューとアシスタント・プロマネから集中的に受けていた。しかし、のどかな農村タイムでの勤務に慣れている彼らにとって、時間厳守の都市型勤務体制への意識改革は至難の業。

プロジェクトマネージャー=本名、原康子。スリカクラム県のみならず、ネパールへも研修に飛ばなければならない多忙な日々。目の前のことで精一杯なスタッフ達に、最終ビジョンへの繋がりを、適時に見せてくれる。

ニシダ君=某大学院修士課程在籍。9月上旬から、特定の農作物(主に森林作物)に関して、ソムニードのスタッフと共に、ポガダバリ村、マーミディジョーラ村、ゴットゥパリ村の生産者とビシャカの消費者に対する市場調査を実施中。ご実家で、長年、犬を飼われていることもあり、調査の傍ら、生産・物流センターの番犬となる子犬のバンティ(生後3ヶ月)の世話の仕方を担当スタッフに伝授することも。

アシスタント・プロマネ=本名、前川香子。この通信の筆者。ビシャカからスリカクラム県への移動途中、舌がとろけるようなイドゥリー(南インドの食べ物で、米粉で作る蒸パン)を出す露店を発見し、頻繁な移動も苦にならず。

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